相撲用語が日常生活に浸透!

スポーツ用語で、日常生活に浸透しているのは、相撲用語だ。1月25日の朝日新聞17面に連載中の「相撲余話(8)」を読んであらためて相撲用語が日常的に使われていることにきづかされた。下記にその言葉の一部を列挙する。

序の口:物事が始まったばかり

人のふんどしで相撲を取る:他人に便乗して事をなす

同じ土俵に立つ:環境や条件を揃えて競う

一人相撲:相手がいないのに自分だけ力んでいる

肩透かし”“勇み足”“うっちゃり”番狂わせ“”番付(長者番付など)“”金星“など挙げればきりがないほどある。

なぜ、スポーツの種類はあまたある中で、相撲だけがその用語を日常の世界に浸透させ得たのか?(ヒットする、ホームランなどはプロ野球ことば?)

記事では、スポーツの歴史を言っている。プロ野球は昨年100周年を迎え、サッカーJリーグは創設30年。それに対して相撲は初めて江戸・富岡八幡宮で勧進相撲が催されたのが1684年(貞享元年)で、336年の歴史を有するそうだ。

小さい時(昭和30年前後)を振り返ると、裕福な家にテレビが入り、相撲を見せてもらうのが楽しみだった記憶が蘇る(村医者で、玄関に見物用の椅子を配置してくれた)。当ブログでも紹介した、著名な書家黒田賢一君は栃錦、私は千代乃山のファンで、必死で応援したのも懐かしい思い出だ。プロ野球も小さい頃から阪神ファンで甲子園にも行ったが、相撲程子供たちの話題にもならず、熱中した記憶もない。やはり、国技として江戸時代から親しまれているのが、日常言葉として自然に普及していったのだろう。

今日(1月28日)の朝日新聞の天声人語でも紹介されているが、駿河湾の深海で新種の魚が発見された由。その名前が“ヨコヅナイワシ”。体調1.4㍍、体重25kgの魚でイワシとはグループの違う”セキトリイワシ科”に属するらしいが、その堂々たる姿に加え、主に魚を食べ、植物連鎖の頂点にいるがゆえに関取の中でも横綱とされたそうだ。

ちなみに、当記事で知ったのは、金星(平幕力士が横綱に勝つ)を挙げた力士の給料は引退まで1個につき年24万円加算されるそうだ。最も多いのが安芸ノ島で、16回だそうで、年間384万円の加算があったそうだ。

高度成長期の昭和40年代前半に「巨人・大鵬・卵焼き」と言う言葉がはやったが、最近は相撲人気も昔ほどではないような気もする(特に若い人たちに)。日本で唯一ともいえる国技である相撲はスポーツの中でも特別で、今後とも末永く人気を博してほしい。

ダ・ヴィンチは生み出せるか?!

あけましておめでとうございます。

コロナウィルスが拡大する局面での厳しい新年となりました。コロナ禍で世界的にいろんな問題が顕在化しています。その中で年末年始に今後の人材育成に関して、大学の教育改革の宣伝が目立った。

まず、大晦日の日経新聞2面に渡ってレオナルド・ダ・ヴィンチの顔で演出した広告に目が留まった。立命館大学の広告だ。以下に広告の文言を紹介する。

2024年.かってない挑戦をはじめようと思う。それは、超多才能人材を輩出することだ。2024年、映像学部と情報理工学部が、経営学部・政策科学部・総合心理学部・グローバル教養学部と同じキャンパスへ移転する。これは単なるキャンパス移転ではない。全く違うジャンルの膨大な知をまぜ、共鳴させ「高度な武器を複数持つ塵埃」を育てうみだす、未来への取り組み。

かって、ペスト大流行後の世界に現れ、美術、数学、解剖学、建築、音楽、天文など多くの分野で活躍した天才レオナルド・ダ・ヴィンチのように、コロナ後の世界を立て直し、社会をつくりあげていく超多才能人材は、常識にとらわれないわたしたちの挑戦から、うまれるはずだ。

不可能は、いつか誰かが可能にする。ならば、その「誰か」になれ。常識と言う名の天井を壊せ。挑戦を、もっと自由に。

2024年、映像学部と情報理工学部が大阪いばらきキャンパスへ。膨大な血が融合する。超多才能人材育成キャンパス始動。立命館大学

さらに元旦の新聞にも2面に渡って渋沢栄一のアンドロイドを配した目を引く広告があった。社会人の先端教育機構の「事業構想大学院大学」と「社会情報大学院大学」だ。

私がお札の顔になるまでに、ニッポンは立ち直れますか?あと3年先、2024年からこの方が1万円紙幣のシンボルになります。大変化のときであった明治維新に、渋沢栄一は己の才覚と頭脳一つで500以上の事業を興し、時代のかじ取りを担いました。いま、だれもが「何かをいい方向に動かしていかなければ」と道を探す時代に、この傑物のようなアタマの持ち主をひとりでも多く育てたい。それが、先端教育機構「事業構想大学院大学」「社会情報大学院大学」の目指すところです。ここは、知恵をチカラに変え、世の中をダイナミックに動かしていきたい社会人のための学びの場。あなただからうむだせるアイデアが、会社に、ひいてはこの国に活気をとりもどす「きっかけ」になっていくはずです。

今日3日の新聞にも、4面に渡って24大学の学長のメッセージが掲載されている。

冒頭の立命館大学は創立100周年記念として、2000年に日本で初の国際大学として立命館アジアア太平洋大学(APU)を設立した。最近、「還暦からの底力」の本を紹介したが、その著者出口治明氏がAPUの現学長だ(https://jasipa.jp/okinaka/archives/9384)。

元旦の新聞に野口悠紀雄一橋大学名誉教授の、展望2021「日本、先進国から脱落も リモート化に壁」との提案記事があった。「コロナ禍の中で日本の問題が浮き彫りになってきた。その問題点を適切に捉えて次の時代に生かすチャンスとすべき」と訴える。問題の一つは、“世界がリードするリモート化”への壁だ。アメリカでは、20年前からインド人の人材をリモートワークで活用しており、それがアメリカ高成長の実現につながっていると言う。英語と言う言語の問題と、「オフィスにいることに価値を置く働きかたの問題」を指摘し、これが出来ないと生産性は低いままで世界から孤立する可能性があると懸念を示している。

前稿で「技術立国日本は再生可能か(https://jasipa.jp/okinaka/archives/9453)」を論じたが、今の日本の様々な現状がコロナ禍を契機に露呈した。この現状を打破するために大学は動き始めている。企業も将来を見据えどんな人材を育成すべきか真剣で大胆な施策が必要な時期に来ている。

“技術立国日本”の再生は可能か?!

新型コロナのワクチン接種が、米国、ロシア、中国など数か国ではじまった。ファイザーは日本にも承認申請を提出し、承認手続きは始まったばかりだが接種時期は来年前半と海外より大幅に遅れている。

11月20日夜9時からのNHKスペシャル「パンデミック激動の世界」では、日本のコロナ治療薬の研究状況などから“科学の土台が揺らいでいる”との問題提起をしている。新型コロナ関連でみても、主要な39の専門雑誌への投稿論文数を見るとアメリカ、イギリス、中国が上位を占める中、日本は残念ながら16位だ。接種が始まったファイザーやモデルナと同じ遺伝子ワクチンの研究を行っている大阪大学では、やっと500人の臨床試験を始めた段階だ。それに比して、米国では国立衛生研究所(通称NIH)が司令塔となり、2000億円を各開発団体に配分し、研究状況の報告を義務付けながら、可能性のある団体にはさらに予算をつけ、早期開発を促進する体制をとっている。15万人という多数の臨床試験に関しても全国ネットワークを駆使しながらNIHが音頭をとって研究団体を支援している。それに対して大阪大学での開発では100億円の予算はあるが、自らの責任で開発にあたり臨床試験でも1万人が必要と言われる中、自ら調達をしなければならないと言う。日本でも2015年に日本医療研究開発機構(AMED)が作られたが、“1日も早く成果を出す事”を主眼に、実用化間近い再生医療やがん治療薬などを中心とした支援に留まっているそうだ。

以前日本は、治療薬の開発・研究では世界をリードしていたと言う。エイズ治療薬や認知症治療薬の開発や、ノーベル賞を受賞された大村先生や本庶先生などの研究成果を見ても日本の存在感は大きかった。

番組では、新型コロナに効く治療薬開発に取り組む鹿児島大学の現状を紹介している。チームは教授、准教授と非正規の研究者の3人だけだ。しかも非正規の方は期限付きで来年3月末契約が切れる。40歳未満の非正規の研究者(期限付き)が研究者全体の64%(2007年は44%)を占めると言う。基礎研究を含めて研究を自由にできる環境がますます苦しい状況になってきている。先般(12月13日)亡くなられた元東大学長の有馬朗人氏は、1998年文部科学大臣に就任し、大学の研究の活性化(自由に競い合い、研究力を高める)を狙い、大学の独立法人化に尽力され2004年実現させた。当時の論文数は世界でアメリカについで2位と言う世界でもトップクラスの技術力評価がされていたが、将来を見据え、研究資金の見直しを推進された。運営資金交付金制度に加え、自由な研究ができるよう競争的資金制度を作り、研究資金面の充実を図ったが、2006年に有馬氏の意に反して、主に研究者の人件費であった運営資金交付金を毎年1%削減することになり、年を追って若手研究者の雇用を困難にし研究者の減少傾向を助長しているのだ。2015年政府は国立研究法人日本医療研究開発機構を作ったが、”いち早く成果を出す(産業しんこうのため)“ことを掲げ、実用化間近い再生医療やがん治療などの研究が優先的に支援を受けることになったが、基礎研究には資金が届いていない。この10月に政府が研究インフラの整備や若手研究者の育成に資するために、大学の研究支援のファンド(10兆円規模)を来年創設することを発表した。米国では、大学設立当時から寄付などで集めた資金を運用する基金があり、今ではハーバード大が4.5兆円、エール大が3.3兆円の規模で運用していると言う(東京大学で約149億円、慶応でも686億円)。

有馬氏も設立に注力した2011年設立の沖縄恩納村にある沖縄科学技術大学院大学(OIST)が注目されている。博士相当の人が世界60か国から集まる5年生の大学で、科学雑誌nature発表の論文評価順位で9位(東大が40位)に入った。沖縄振興予算を使って、期限に縛られない研究を推進するためにプロボストの役割が特徴的だ。プロボストのメアリーコリンズ博士が東北大学から来た研究者との対話で7年間の研究予算を与える事例が出ていた。基本は財団も含めて日米協力機構のようだ。OISTの事例は、資金を含め、運営面、システム面でも日本の技術力強化の参考になることが多いように思われる。

APU学長の出口治明氏が「勉強しない日本の大学生」と言い、メディアが「将来日本から科学技術関係のノーベル賞は出ない」とも言われる日本。企業と大学の関係、留学生の問題など課題は山積しているように思える。アメリカや中国も参考にしながら、抜本的な対策をうつ時期に来ている。日本の「技術立国」再生は待ったなしだ。

冲中一郎