小田原に80年続く人気私塾がある!(はじめ塾)

「致知2014.2」に「実感を伴った生活から人は育つ」という「はじめ塾」塾長和田正宏氏のインタビュー記事がある。昭和12年に和田氏の祖父が、自宅を開放して立ち上げたのが始まりで、今でも寄宿生活を通じてのユニークな教育が評判を呼び、入塾希望者が引きも切らないという。和田氏は、大学卒業後教員職についたが、子供たち一人一人違っているのに、無理やりあらゆることを平等に扱わねばならない(出来る子、出来ない子にも同じ宿題を与えるなど)ことで、子供の為の教育と言うより、親を含め周囲の目を気にしなければならない状況に疑問を持ち教師を辞められた。そして、「モンテッソーリ教育」に取り組んでいるミュンヘン大学の教授の教えを請うためにドイツに渡った。「モンテッソーリ教育」とは、20世紀初頭にイタリアのマリア・モンテッソーリによって考案された教育法で、子供の自主性、独立心、知的好奇心などを育み、社会に貢献する人物を目標とする教育法で、以降欧米を中心に世界に広まった。ドラッカーや、amazon.com、google、wikipediaなどの創始者もこの教育を受けた成功者だそうだ。今でも、アメリカでは私立をはじめ数百の公立学校でもプログラムが導入され、3000ヶ所のモンテッソーリ・子供の家があるといわれる。日本でも1960年頃紹介されたが、お受験対策などの英才教育と誤解され、真の教育が普及しなかったと言われている(「モンテソーリ教育」に関してはウィキペディアより引用)。和田氏は、ドイツで直接学ぶ中で、子供たち一人一人としっかり向き合い、育っていく場に関わっていきたいと考え、「はじめ塾」を継ぐことを決意されたとのことだ。

主人公意識

和田氏は、「普段の生活の中にこそ、すべての教育的要素が含まれていて、それを子供たちの教育に活かしていく。勉強だけを教えているわけではない」と言う。自分達の食事も自分たちで作り、また稲刈りなどの農作業なども自分たちで行う。毎日曜日の夜には、塾生全員の話し合いの場もある。いろんな場のそれぞれの仕事での責任者(リーダー)も自分達で決める。というか、自分がやるべきだと思う子が進んでリーダーをやる。それが「主人公意識」で、必ずしもリーダーで有る必要もなく自分の役割を全うすることも含まれる。このように育てられた塾生は、飲食店のアルバイトに行くと、大体1~2か月でみんなフロアの責任者に指名されるそうだ。折角育った塾生も、家庭に帰ると元通りになってしまわないように、親にも成長してもらうプログラムもあるそうだ。

実感を持った生活

普段の生活の中で机上の教育だけではなく、実感を伴う経験をしつつ「感じる」ことを重視する教育を推進する。例えばクワガタを実際にとりに言ったり、農作業も種蒔きから刈取りまでやる。畑で土に触れれば冷たいし、種をまいたら芽が出る。一所懸命育ててなった実なら嫌いなものでも好きになる。前項で書いた「感動のつくり方」(http://jasipa.jp/blog-entry/9318)で「些細なことにでも感動できる人間」を育てる重要性を説いたが、まさに「実感を持った生活」を教育指針とする和田氏の考え方にも通じるものがあると思う。

「不求」「一心」自分の足元に全てを尽くす

はじめ塾では、「いまここ」「いまがはじめ」「一所懸命」と言った言葉で子供たちに教えているが、今この瞬間に百%力を尽くしていく。特別なことをしていくのが大切なのではなく、そうした嘘偽りのない誠実な生き方こそが人生の道を開いていく。「不求」、他者や外に求めるのではなく、「一心」自分の足元にすべてを尽くしていく、祖父の残した言葉を忘れることなく、子供たちの未来を切り開くために努めていきたいと和田氏は言う。(「いまここ」に類することを言われている方々を当ブログでも紹介している。http://jasipa.jp/blog-entry/8353

100万人の心を揺さぶる「感動のつくり方」(その5)

「演技力であなたをバージョンアップ」の章では、「あなたが大切にしている価値観に沿ってあなたがなりたい自分を演じ切ること」や「自分自慢力を磨け」と平野氏は言う。とかく、「どうせ自分なんか」とか、「自分には無理」、「自分には才能がない」と自分を低く見積もりがち。そこで、「人生で楽しいと感じた瞬間は?」、「あなたはなぜ生まれたと思いますか?」、「ワクワクすることは何ですか?」と自分に問いかけることによって自分の価値観を知ることの重要性を説く。そして自分の価値観をベースにした自分表現力を磨く。その際、表情にも気を使う事。どんなにうまく口で言っても、暗い表情では話の信憑性も疑われる。そして、今までは「日本人は自分をアピールするのは苦手」と言われていたのが、オリンピック招致最終プレゼンや、本田、イチローなどに見るように、見事に日本や、日本人、自分を世界に向けて発信できる人達が増えてきた。「自分自慢力」は、相手に共感を与えることで、アピールになる。あなたの心を動かした体験談を分かりやすく伝える。自分の心が動かないストーリーでは、他人の心は動かせない。

最後に、「感動の鏡を磨く方法」。人を感動させるためには、自分の中にある「感動の鏡」を磨けという教えだ。全く同じ体験をしても、「すごく楽しめる人」「普通に楽しめる人」「全く楽しめない人」がいる。この違いを平野氏は「満喫力(平野氏の造語)」と言う能力の違いだと言う。子供のころを思い出せば、ほんの些細なことに楽しさの要素を見つけ出し、飽きるまで遊び、そして全力で泣き、笑い、走り、寝ていた自分がいた。それがなぜ、大人になったら出来なくなったのだろう。それは昨日の事を悔やみ、明日の事を心配することに多くに時間を使っているから。子供は多くの時間を「今」に生きている。

昨日は、すでに過ぎ去った歴史
明日は、まだ分からない神秘
今日こそが、贈り物(アナ・エレノア・ルーズベルト)

今日そのものの価値に集中する、今ある当たり前の日常を存分に楽しむ姿勢が、「満喫力」を磨いていく。

当ブログでも、「感動できる人間」「些細なことにでも感動できる人間」を育てることによって成功した事例も多く紹介している(例えばhttp://jasipa.jp/blog-entry/7342)。平野氏の著作本「感動3.0」も紹介した(http://jasipa.jp/blog-entry/6163)。平野氏は「顧客に満足を与える」から「顧客に感動を与える」ビジネスへの転換を提言する。期待通りの実感を提供するのが「顧客満足型ビジネス」、期待以上の実感を提供するのが「顧客感動型ビジネス」。各企業が実施している「顧客満足度調査」の「大変満足、満足、まあまあ満足、不満」の選択肢を、「期待以上、期待通り、期待以下」に変えその理由を書いてもらうことで、意外な顧客の期待レベルや貴重な情報が次々と収集できている企業が続出していると言う。

たしかに「現状に満足」している状態から、「今以上に感動」する状態へ、視点を変えるだけで生き方も変わってくる。「顧客満足」から「顧客感動」へ視点を変えるだけで、また新たなものが見えてくるのではないだろうか。顧客へのサービス競争が激化する時代、今一度考えて見たい課題と思われる。

かっぽう着の「リケジョ(理系女性研究者)」快挙!

昨夜からビッグニュースとして取り上げられている「万能細胞[STAP細胞と命名]」の作製成功。何と研究を主導したのは30歳の新星「小保方晴子」さん。複数種類の遺伝子を組み込んで作るIPS細胞よりも簡単に作れる「万能細胞」。iPS細胞の山中教授も日本人研究者によって発信されたことを誇りに思うとのコメントを出している。現時点ではマウスでの成功で、人間の細胞から作るには多くの課題があると言う。しかし、驚くのは、昨年春、世界的に権威ある英科学誌ネイチャーに投稿した際は、「過去何百年の生物細胞学の歴史を愚弄していると酷評され、掲載を却下された」。だが、「STAP細胞は必ず人の役に立つ技術だ」との信念を貫いて膨大なデータを集め、その成果が30日付けのネイチャーに掲載される。

生物学の事は分からないが、生物学の常識を覆す偉業と言う。生命科学の歴史を塗るかえるものとも言われる。ネイチャー誌の最初の投稿時の却下理由こそが、その独創性を物語る。こんな偉業を、博士号を取ってわずか3年と言う、30歳の若き女性研究者が成し遂げたそのプロセスに感動する。小保方さん自身「誰も信じてくれなかったことが何より大変だった」、「やめてやると思った日も、泣き明かした夜も数知れないですが、今日1日だけ頑張ろうと思ってやっていたら、5年が過ぎていた」と言う。早稲田大学理工学部にAO入試(人物重視)の1期生として2002年に入学、面接で「再生医療の分野に化学からアプローチしたい」とアピール。卒業後2008年にハーバード大学医学部に留学。当時STAP細胞の研究をやっていたチャールズ・バカンティ教授の指導下で共同研究に従事した。そのバカンティ教授が「最も努力する研究者で、いつも研究室にこもって最良の研究方法を考え出し細心の注意を払う人でした。ハルコがいなかったら、この研究は達成できませんでした」と今回の成果を喜ぶ。理研の笹井副センター長曰く「化学系の出身で、生物学の先入観がなく、データを信じて独自の考えを持っていた。真実に近づく力と、やり抜く力を持っていた」と。特殊なマウスを作るために世界有数の技術を持つ山梨大学若山教授とも直談判、ホテルに泊まりこみながら成果を出したと言う。

負けず嫌いで、とことんやり抜くのが信条と言うが、世界的に権威あるネイチャー誌からバカにされるほど世間の理解が得られない中で、自分の信念で動き、周囲を巻き込む力とは何だったのだろうか?実績のない研究者から共同研究の依頼を受けてもなかなか受けてもらえないのが学者の世界と言われる。ハーバード大学や山梨大学、そして理研を巻き込んで、偉業を成し遂げた小保方さんは、ともかくデータを集め、データに真実を語らせながら相手の共感を得るための努力や、自ら目標に向かってひたむきに努力する姿に加えて、人間力が周囲を引き付けたのだろう。

久々の明るいニュースに日本が沸き立っている。これからの研究のさらなる進展を期待したい。

冲中一郎