クライアントを幸せにせよ!(Jay Abraham)

高等教育を受けず、数多くの経験から生み出した「卓越の戦略」で有名なジェイ・エイブラハム氏が「PHP Business Review 松下幸之助塾2014年1・2月号」に紹介されている。記事の題名は「クライアントを幸せにせよ!-実践からあみだされた私の「卓越の戦略」-」だ。定職には就けず、仕方なく成果報酬(起業家の信頼を得て販売を担当、その実績の何%をもらう)と言う形でいろんな企業の仕事に関わることになったそうだ。それが逆にいろんな企業家との出会いや、多様なビジネスの実践や経験を得ることになり、今の自分がいると言う。いろんな企業とは、IBMやシティバンク、マイクロソフトと言った世界的大企業から、街のクリーニング店、歯科医、税理士などの中小零細企業を言う。

多様な企業の中で、どんな仕事をされたのか?2~3事例を挙げる。クレジットカードのアメリカン・エクスプレスでは、富裕層(当時は一括払いのみで富裕層だけのカードだった)の未回収金の回収において、市場の心理学を学びながら、常に相手に敬意を払いつつ上手く支払いをしてもらう顧客心理の機微を学んだ。ラジオ局の広告の営業を担当した時は、如何に売れない時間帯を売るか、顧客とWin-Winになるようなパッケージを考え成功させた。ある化学製品製造販売会社の起業家からは、リピート客の生涯価値について学び、以降の仕事にも大いに役立てることが出来たそうだ。

こんな多様な経験を通じて、普通の人が考えない柔軟な思考を学び、広い視野から自分達が必要とするものを絞り込んでいくことを学んだ。一つの業界にずっといると、その業界の常識、企業の常識のカベに捉われがちだが、そこを脱皮しなければ、イノベーションは起こせない。エイブラハム氏のコンサルティングは「卓越の戦略」と呼ばれている。その本質は

1.クライアントの数を増やすこと
2.クライアントあたりの取引の数(平均販売額)を増やすこと
3.クライアントの購買の頻度を増やすこと

とシンプルなものと言う。しかし、その意味するところは深く、自分自身が深く市場にコミットし、市場から長期にわたって最も信頼できるアドバイザーだと認識してもらう事が「卓越性」だとエイブラハム氏は言う。それはクライアントに対して「最高の結果」を出すことであり、アドバイザーとして結果に対して絶対の自信を持っていなければならない。その「卓越性」を支える要素は「共感」と「リーダーシップ」だと言う。「共感」とは、クライアントの事を尊重して真摯に理解し、クライアントの人生がどうすれば最高のものになるか予見してあげること。「リーダーシップ」とは、クライアントを最高の結果に実際に導いていくこと。「クライアントのために」との考え方が徹底している。

エイブラハム氏は、「お客様はカスタマーではなくクライアントである」と言う。カスタマーとは単に商品やサービスを購入する人を意味する。クライアントというのはクリエンテスというラテン語を語源とする言葉で、他の人の保護下にある人という意味を持つ。お客様がクライアントであるということは、お客様が自分の保護下にあるという意味になる。そしてお客様が自分の保護下にあるということはすなわち、お客様は守らなくてはいけない存在だということに他ならない。

今、日本のIT業界の将来に対する危機が云々されている。このままでは崩壊すると言う人も多い。その中で、お客さまからどうやれば信頼を得られるかをもっと真剣に考え、行動に移していき、お客さまから「パートナー」と呼ばれる存在にならなければ、先はないと思う。「お客様のため」「お客さま第一」を考える上で、エイブラハム氏の考え方、姿勢はヒントになるのではなかろうか。

「高校球児が日曜日の雪かき」の感動(城東高校)!

2月8日(土)東京は積雪27cmという45年ぶりの大雪に見舞われた。千葉では33cmの積雪だった。翌日の朝は冷え込んだため、雪が残る道路は非常に危険な状態で、交通機関も大幅に乱れた。成田空港は、東京からの交通路(JR,京成電車、高速道路)がすべて遮断され、9日夜は6200人が空港に宿泊を余儀なくされたとか。

9日私は、いつも通り朝一番にスポーツジムに行った。まだ明治通り沿いの道路は雪かきが出来ていない所も多く、恐々と注意しながら歩いて行った。あちこちで雪かきしている方にお会いしたが、その際「ご苦労様」と声をかけると「お気をつけて」と声が返ってくる。店の前は、店の方がやっておられるが、一般道をやっている方々はボランティアなのだろう。いつもは、ごみ拾いや駐輪禁止の場所での監視などをご高齢の方々がやっているのにお目にかかるが、結構若い方々も雪かきに精をだされている。

ジムからの帰りは、亀戸の緑道公園を利用した。ここも部分的には雪が取り除かれているが、ほとんどは残っており、横を通る車道を歩く人も多い。その中で、高校生が日曜日なのに、一生懸命通り道の雪かきをしてくれていた。緑道公園に接している都立城東高校の学生さんだ。野球部のユニフォーム姿が多かったが、女高生のすがたもあった。「ご苦労さん。野球頑張ってね」と声を懸けると、元気よく「ありがとうございます」との声が返ってきた。当日は東京都知事選挙もあったが、緑道公園を歩いて投票に行く人も多く(私もそうだった)、助けられたことと思う。このような光景はあちこちでみられたのだと思う。

声をかけて感謝の気持ちを伝えるしか出来なかった自分にいら立ちを覚えたが、「人が困っていると思えば、直ぐ行動に移す」方々が数多くおられることに安堵をしつつ、自分ももっと世間に恩返しをせねばとあらためて強く思わせてくれた。特に城東高校の皆さんの行動に感動しつつ、若い人たちの人材育成にかける熱き指導者にも思いを馳せることが出来た。ベランダから、朝早くからの練習や、試合などを見ることが出来るが、過去に一度甲子園に出た事のある城東高校に、今まで以上に応援したい気持ちが高まってきた。頑張れ!城東。

夫婦円満の秘訣!吉野弘の祝婚歌(参院予算委員会での質疑に登場)

6日の日経の記事より。「「正しいことを言うときは少しひかえめにするほうがいい」。民主党の羽田雄一郎参院幹事長は5日の参院予算委員会で、1月に亡くなった詩人、吉野弘さんの「祝婚歌」の一節を安倍晋三首相に紹介した。心に余裕を持って政権運営にあたってほしい、との願いを込めた。首相や外相を歴任した父、孜氏が大切にする詩だ。外交交渉では相手方に「日本の心だ。おおらかにやろう」と呼びかけ、結婚式を挙げる知人には書き写した色紙を贈ってきた。首相は自分自身ももらった一人だと明かし、「常にその態度で妻に接している。わが党も謙虚でなければならない」と話した。だが、国会論戦でおおらかさは至難の業だ。直後の質疑で首相は野党席から飛んだヤジに腹を立て、「吉野さんの詩を後ろの方に渡してほしい」とまくし立てた。羽田氏は「ヤジは議会の華。あまり反応しないで」とたしなめた。」

早速インターネットで調べてみた。結構有名な詩で、結婚式などでも多く使われているそうだ。吉野弘氏は著作権問題関係なく、自由に使って欲しいとの意思を示されているとかで、全文記載する。

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい

家内とも時々険悪なムードになることがあるが、その時は私のほうが上から目線の言い方になっている。そんな場合、「ところで自分もそうだけど、こんな人間になるように努力できればなぁー」のような具合になぜ言えないのかなと後悔する。「立派になりたい」「正しくありたい」と思うのはいいが、「己が立派だ、完璧だ」と相手に感じさせるような発言は、反撃を生みやすいという吉野氏には同感だ。「目線を合わせながら謙虚に話す」ことが、人間関係(特にパートナーとの)を築くための基本だと言うことを肝に銘ずべきと思う。

祝婚歌を何度も読み返しながら、謙虚さ、相手を思いやる心を忘れず、一番身近なパートナーとの幸せな生活を送られんことを切に願っている。

冲中一郎