問題「先送り」で日本の破局は不可避?

「最後は金目でしょ」と言った石原環境大臣の発言が批判を浴びた。放射性廃棄物の処分場問題での発言だ。「最終処分場は30年後に県外に移設する」との条件でとりあえず大熊町、双葉町を処分場にすることで政府は進めている。住民説明会で住民は「30年後の県外移設をどうやって約束できるのか?」と詰め寄っているが、納得性のある説明は出来る筈がない。問題先送りの典型だ。

財政再建で、増税や歳出カットをいまやるべきか?地球温暖化防止のために温暖化ガスの排出を今、抑制すべきか?なども同じ問題だが、「世代を超えた超長期の問題」で、「現在か将来か、どちらの世代がやるべきか」が争点の核心だと言うのは、日経21面「大機小機」のコラム氏(風都氏)だ。先月5月16日に「世代間協調の不可能性」と題したコラムが印象に残った。「社会保障と税の一体改革」もなかなか手がつかず、次世代に禍根を残すことになりそうだが、今先送りした問題は、次世代でも先送りすることになり、結局は破たん不可避となる可能性が大きいと警告を発する。その論理は「課題に取り組む世代に何らかの利益、インセンティブが無ければ先送りする」という、経済学者サミュエルソンが1958年に出した「世代重複モデル」の論文で論じた根拠だ。つまり、世代を超えるコミットメントが必要とされるプロジェクトは、利己的合理的な人間からなる社会では実行できないのだ。これをコラム氏は「世代間協調の不可能性」命題と呼んでいる。

しかし、これでは我々を含む現在あるいは、これまでの世代のわがままが故に、いずれ日本沈没、世界沈没を待つしかないことになってしまう。温室効果ガス削減目標も各国の思惑で決まらない。昨年11月のCOP19では日本は原発停止の関係もあり25%目標を8%に修正して提示し各国から総批判を受けた。「デフレ脱却」の為との大義で公共事業などに大判ふるまいをする。ほんとに経済成長一辺倒がはたしていいのだろうか?国を統治する国会議員、官僚などはすべて「利己的合理的な人間」と思いたくはないが、将来を考えた積極的な意見が表に出てこない現実をどう考えればいいのだろうか?議員定数削減にしても全く前に進まない。真剣に次世代を含めて行く末を真剣に考え、行動を起こすことを期待したいと思うが、東京都議会のヤジに見るような、人間性をも疑いたくなる議員集団の事実を目のあたりにしてしまうとほんとに地球の将来、日本の将来が心配になってくる。どうすればいいのか、名案は浮かばないが、我々は声を上げること、そして「真の議員」を見分けて選ぶことしかないのだろうか。

昨日(1日)集団的自衛権容認を閣議決定した。「1強他弱」の政治構造の中で、国の安全保障体制を大きく変革する大事なテーマも、政権はパフォーマンスだけで、受けの良さそうな内容だけを説明し、リスクを含めた全体像を丁寧に国民に説明する事も無く、与党内部で決めてしまおうとしている。まさに「先送り」というより「害送り」にならぬよう祈るばかりだ。民主党政権のひどさが今の1強多弱の状態を招いてしまったと思うが、この怖さを深く心に刻み、今後の行動につなげていくしかない。孫、曾孫と続く将来において、現在の人達に対する恨み節ではなく、感謝の気持ちを持ってもらえるような施策が今こそ、求められているのではないだろうか?次の選挙までにはよく考えたい。

「Orchestration」(ともに響きあう)

この言葉心に響きませんか?ギリシア・ローマ考古学者で、全国美術館会議会長、国立西洋美術館館長などを歴任し、平成25年から文化庁長官に就任された青柳正規氏の座右の銘だ(「致知2014.7」‘私の座右の銘’の記事への投稿文より)。

27歳のころボンベイの発掘調査を任され、発掘計画から、人員確保、資金集め、現場の指揮などあらゆる業務を自らの判断で行うことになった。その時、自分は寝食を忘れて働いているのに他のメンバーは契約時間しか働かなかったり、自分の専門知識以外で難渋し思うように調査が進まない時期が続くことになった。その時「仕事と言うのは自分一人の力だけでできるものではない」と心の底から思い至った。そこで、気付いたのが、上からの命令や自分の意見を押し付けるのではなく、今携わっている仕事の意義や醍醐味、何を解明すればどういう成果が得られるかなどを根気よくメンバーに伝え、全員が同じ目標を共有して自発的に仕事に打ち込める環境つくりの重要性だった。このような試行錯誤の中からOrchestrationと言う言葉を意識し始め、「メンバー全員が‘やらされている’のではなく、’自分でやろう‘と思って努力しない限りクオリティの高い仕事は出来ない」と言うことの実感を得たと言う。発掘調査では、何が出てくるか分からないため、人骨が出てくれば文化人類学者、家屋を発見すれば建築士に、稙物が出てくれば植物学者にと多様な専門家が力を合わせて初めて大きな成果につながる。

システムプロジェクトも全く同じだ。プロジェクトメンバーが顧客企業がどんな企業かも知らずせっせとプラグラムを書いていると言うこともあった。役割分担は当然あるが、個々のメンバーが、常にそのプロジェクトの意義や全体感を把握しながら、お互いに連携しながら進めていかなければ成功しない。プロジェクト発足時に作るプロジェクト計画書を充実させ、プロジェクトメンバー(パートナーも含めて)に徹底する。プロジェクトを通して個々のメンバーが何を目標として成長するかも記述することが必要だ。

プロジェクトのスローガンなどにも、場合によっては企業理念にも「Orchestration」は使える。お客さまとの間にも使え、お客さまに何か新鮮な心地よい響きを与え、感じてもらえ、それだけでもプロジェクトあるいは企業間の一体感向上に効果があるように思えるがいかが?

“一流”は人の心に灯をつける

以前、J&Jなど外資系の複数企業の経営者を経験された新将命氏の話として、人は下記5類型に分類されるとの話をした(%は存在比率)http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/entry/6333。

  • 「自燃型(5~10%)」
  • 「可燃型(80%)」自分では燃えないが誰かがマッチを擦ってくれれば燃えるタイプ
  • 「不燃型」
  • 「消化型(1~2%)」せっかくついた火を消しまわる人
  • 「点火型(5%)」

「致知2014.6」に連載されている「20代をどう生きるか」の43回目に京都市長門田大作氏が登場している。高校卒業後、京都市養育委員会に就職し、一貫して教育改革に取り組んでこられ、幾多の困難と直面する中、関係者(地域の人達)との徹底した対話を通して学校統合など困難な課題を達成してこられた。現在京都市長2期目を迎えるが、その門田市長の言葉。

平凡な教師は言って聞かせる。

よい教師は説明する。

優秀な教師は率先垂範する。しかし、

最高の教師は人の心に火をつける

稲盛和夫猛語録より。

「不燃性」の人は会社に要らない。

勝手に燃えてくれる「自燃性」であってほしい。

少なくとも私が近づくと燃える「可燃性」でなければならない。

すなわち稲盛和夫氏は、「自燃型」「可燃型」であると同時に「点火型」である。JAL再生でJALの文化・風土を変えたもっとも重要な要因は「点火型」だろう。リーダーの重要な資格要件かもしれない。

冲中一郎