人生で一番大切な言葉は“ありがとう”!

感謝と“ありがとう”の精神で、成功をおさめた人たちの話が、人間学を学ぶ月刊誌「致知」によく掲載される。11月号では、小さい時からの夢を次々と実現し、横浜のブリキおもちゃ博物館をはじめ6つの博物館を経営し、年間約150回の講演、累計71冊の著書を出版されている北原照久氏の「人生を変える魔法の言葉」と題した記事がある。兄3人と比較される子供時代、全く勉強に手がつかず体育以外はオール1。中学ではある事件で退学処分を受ける。そんな時、母親から受けた言葉

お前の人生はこれで終わったわけではない。これから先の人生の方がずっと長い。だからめげることはない。人生はやり直しは出来ないが、出直しはいつでもできる。

この言葉に励まされて高校進学。高校でも成績はどん尻。ある時、たまたま60点をとった時の先生の言葉。

「北原、すごいな!お前は出来ないんじゃなくて、やらなかっただけだ。やればできるぞ

本心から褒めてくれたこの言葉で心に火がつき、卒業時には学年トップで謝辞を読むまでに。このような人生を振り返って、北原氏は「すべては出逢いである」と言い切る。人との出会い、モノとの出会い、そして言葉との出会いが自分のすべての夢の実現に導いてくれたと。

北原氏が心がけてきたことの一つは、

絶対に人の悪口を言わない

自分が口にした言葉を最初に聞くのは自分だ。だから、不平不満や愚痴、悪口、怨み、妬みを発している人は、それを相手にぶつけているつもりでも、実は自分自身にダメージを与えていると言う。北原氏は、これまでの46年間で集めたおもちゃなどのコレクションの数は4トントラック100台以上にも上るそうだ。これはいろんな方の協力があったお蔭と言う。もう一つは、「感謝」と「ありがとう」。この言葉を口ずさんでいると人生は好転していくと、心からの実感を込めて言われる。

12月号では、人と話すことの苦手な”売れない営業マン“阿川龍翔氏が「人生で一番大切な言葉。それは”ありがとう“」のタイトル記事で投稿されている。イタリア車の営業で、毎日もがき苦しむ中で、あることに気付き、車を買っていただいた方やご縁があった方に毎月1回「ありがとう」の気持ちを伝えるハガキを書きはじめた。当初はほとんど反応がなかったが、雑誌や新聞などで感動した言葉や物語なども書き添えるように工夫し、ひたすら「ありがとう、ありがとう」と1年、2年、3年と地道に続けていくうちに思わぬ反応が返ってくるようになったと言う。「会社の朝礼でハガキの言葉を紹介したい」「息子の学校の道徳授業で、ハガキの物語を紹介したい」などの要望や、”信頼できる営業マンがいる“と知人を紹介してくれ、その方が訪ねてくれるようなことも増えてきた。こんなにも共感して頂けることの嬉しさが昂じて、商品を売りつけると言う自分の都合を人に押し付ける行為を反省し、思い切って車を売り付けることをやめることにした。が気が付けばイタリア車のトップ営業マンになっていたそうだ。阿川氏は、今はコンサルタント会社「ハートウォーマー」を設立し、講演会や営業に関するセミナーなどで走り回る忙しい日々を送っておられる。阿川氏は言う。

常に自分のコップを“ありがとう”の感謝の思いで見たし、その気持ちを人に話していくことが、巡り巡って自分の幸せとなって返ってくる。それこそ自分の仕事や人生だけではなく多くの人々を幸せに導いていく道理なのだと思う

 お二人の“わが人生の幸せ”事例は、我々の「生き方」に関して多くのヒントを物語っているのではないだろうか?

小さな会社では迅速意思決定のためワンマンがいい?

前々回の当ブログで松下幸之助氏の「人の話を聞く姿はすさまじかった(http://okinaka.jasipa.jp/archives/1929)を紹介した。その松下氏の「松下幸之助の経営問答」(PHP文庫)の中での1978年の記事「ワンマンと決断」が「PHP Business Review松下幸之助塾2014年11・12月号」に紹介されている。

「経営問答」の問いは

現代のような競争時代、他社に先駆けてビジネスチャンスを得るには、迅速な意思決定がますます求められています。そのためには、経営者はある意味でワンマンにならないといけないと思うのですが、その際に心がけなければならないことは何だとお考えでしょうか。

前々回のブログで「幸之助氏は、人の話を聞くときは、何時間でも、どんな若造の話でも、1時間でも2時間でも、ひざの上に手を当てて頷いて聞いてくれた。」と書いたが、まさに上記問いに対する答えは、その話を聞く姿を彷彿とさせるものだ。問いに対する答えは

いろいろありますが、やっぱり衆知を集めると言うことですね。ワンマンでもいろいろあります。しかし、かたちはワンマンであっても、その人がいつも国民なら国民、社員なら社員の心、考えを絶えず吸収していればいいわけです。私も小さい会社ながら(当時)、社長をやってきましたが、決して自分の気ままにやりませんでした。創業者だし、一見ワンマンのようだけれど、常に社員の衆知を集めて、やってきたわけです。たとえ今日入った人(新人)の言葉でも耳に入るようにしていますから、みんなの心を持っている。私の場合はワンマンにしてワンマンにあらず、というようなことで、これまでやってきたわけです。

さらに、無理やり話を強要しても真の情報は入ってこない。衆知を集めると言う心持ちを持ちながら、自然体でやることの必要性を説く。その心を持っていると、天の声と言うか、地の声というか、そういうものを心の耳で聞くことが出来ると言う。だから、自分の独断は独断にあらず、全員の思いも一緒だと、こういう考えを持っている。だから、経営者はみんなの声を聞いて、初めて一流になれると私は考えていると。

社員にも松下幸之助のファンが多かったというが、社員との信頼関係があってこその衆知経営、全員経営が成立する。政治も企業も、トップの国民、社員の声を聞く姿勢が、そして国民、社員に対する思いやりの心がお互いに通じ合って、国や企業の活性化がある。松下幸之助氏の考え方を学び、成功した多くの経営者が今でも松下幸之助氏を信奉するのも頷ける。

ほんとに経済成長至上主義でいいのだろうか?

バズーカ砲と言われる金融緩和で、株高・円安が続いている。一方で、生活実感として「生活が楽になった」人は少数派である。あまねく地方まで、経済成長実感を普及させるために「地方創生」を政府は最重要テーマとして進めている。2050年には世界人口は現在70億人が90億人を超えるとの予想も出ている。日本でも少子化問題が経済成長のネックとなるとして1億人を是が非でもキープするための施策が議論になっている。一方で、地球温暖化、食糧危機で、将来的な地球の崩壊を警告する報告書が出されている。

アメリカでは、1981年レーガン大統領のレーガノミクス政策により、豊かな中流層が中核になっていた社会が、その後30年間で富裕層との格差拡大で消滅し、医療や福祉の後退を招くことになった(2005年の調査で上位1%の富裕層が国の総所得の17%以上を受け取っていたとのデータがある)。日本でも小泉政権時代の構造改革、規制緩和策で格差が拡大、そして今、安倍政権のアベノミクスでさらなる格差拡大が問題視されている。まさに株高、円安は大企業、富裕層にとっては恵まれた環境になっているが、中小企業や、大半の国民はその恩恵にあずかれていない実態がある。アベノミクスによる第一の矢「金融緩和」のみに頼らざるを得ないことの限界でもあるが、本来の「需要喚起→企業成長→賃金上昇→需要増」という好循環を生むための「第3の矢」が中々でてこないため、国民の大半の生活が楽になるどころか苦しくなっている。

以前紹介した「里山資本主義」の中で、藻谷浩介氏は『日本の食料自給率は39%、食料さえも諸外国に依存し、お金が無ければ生きていけない。戦争はエネルギー問題が発火点になることが多い(第二次世界大戦もそうだった)が、これからは食料問題も引き金になる恐れが出てくる。“経済成長”のみを追っかけることの怖さ、不安定さを考えれば、安全保障の前にやるべきことがあるのではとの提案が「里山資本主義」だと言える。安全保障環境が厳しくなるにつれ「食料も資源も自給できない国の繁栄など、しょせんは砂上の楼閣ではないか」との不安がますます募るhttp://okinaka.jasipa.jp/archives/560』と言う。

経済学者で、小渕、細川、小泉政権で経済諮問会議などを通じて施策の片棒を担いだことを反省し「資本主義はなぜ自壊したか」(2008.11集英社)を著した中谷巌氏。その中で、現下の格差社会をもたらしたことなどを「懺悔」している。『一時日本を風靡した「改革なくして成長なし」は、一部成果もあったが、この20年間における貧困率の急激な上昇は日本社会に大きなひずみをもたらした救急難民や異常犯罪の増加もその「負の効果」に入るかもしれない「改革」は必要だが、その改革は人間を幸せにできなければ意味がない』と言っている。さらに『利潤追求を至上命題とするグローバル資本主義においては、子孫のために自然環境を守り、資源を節約しようといった話は所詮副次的なテーマにすぎない。グローバル資本主義は地球環境問題について責任を負わないばかりか、むしろ、環境破壊を加速する側に加担しているのだ』とも言っている。

福島第一原発の事故の総括もせず、原発の輸出に血道を上げる、財界の意見に押されて地球温暖化ガス削減目標の策定にしり込みする、世界で最もひどい国の財政状況を、将来世代のために改善せねばとの強い意思が見られない、などなど、すべて経済成長を最優先する考え方に基づくものだ。IPCCの報告にもあるように、「地球温暖化を抑制する施策は地球崩壊を防ぐためにまったなしの状況」だ。「足るを知る」豊かで幸せな社会もあるのではないだろうか?消費をあおって地球資源の枯渇を招くことがいいのだろうか?

消費税増税問題が引き金の「衆院総選挙」が急浮上してきた。「なぜいま」とも思うが、なかなかいい選択肢がない中、投票先に思案してしまうが、「1強多弱」の世界を何とかして、国民の声が反映されるような政治にしないと将来が心配になるのではとも考えてしまう。

冲中一郎