対人関係のカギは“共感力”!

過去にも“共感力”に関しては、何度か当ブログで紹介した。例えば、「選ばれる営業、捨てられる営業」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/299) とのタイトルで、その中の一文。

共感力:お客様の「よりよくありたい」との課題を共有し、相手の課題を自分のものとして感じ取ることが出来るようになることが、誰にも負けない熱意を生み出し、顧客を感動させる原動力となる。注文を逸しても、商品の問題にせず、お客様のニーズをしっかり理解できなかったことを反省し、次に活かすことも重要。

NHKのクローズアップ現代で取り上げられた話題にも触れた(http://okinaka.jasipa.jp/archives/450)。

かく言う私も、いろんなメディアに接し、何か共感できるものがあれば、皆さんのお役に立てればとの思いで当ブログにUPさせて頂いている。この1月に発刊された「プロカウンセラーの共感の技術」(杉原保史著、創元社)と言う本には、共感力について

コミュニケーションを良くし、対人関係をより良いものにするカギは”共感“にある

と言い、そして、

現代人は共感することが苦手で、共感を恐れている

とも。下手に共感するとへんに責任を負うことになり「生きづらさ」をもたらすからだろうと推測している。人と関わりを持たないで平和な生活を営むことが出来ると感じている。現代人は孤独であり、コミュニティが崩壊していると言われる所以だろう。しかし、それがほんとに幸せにつながっているのだろうか?人は本来集団生活の中で社会性が養われ、お互いに助け合いながら生きていくことで幸せを謳歌出来る動物だ。集団生活を形づくり、対人関係を円滑にするためには“共感力”が必須ではなかろうか。

お客さまとの信頼関係においても、“共感力”が重要だ。杉原氏の本では、共感力を磨くためのヒントやコツが書かれている。例えば

考えるな、感じろ

道を歩いている時、食事をしている時、誰かと話している時、何かを感じることなく、物思いに耽っている(何か別の事を考えている)ことはないだろうか?相手の思いを受け取るように聞く。自分の意見は脇に置いて。要は、相手から「この人なら話を聞いてくれる」「この人ならもう一度会いたい」「この人と話すと何かいいことがあるかも」「この人なら信用できる」と思ってもらうことに他ならない。

当ブログでは、“感動”についても何度か紹介させて頂いた。例えば「お客さまに“満足を超えた感動”をお届けする事」、そのために、感性と人間力双方を兼ね備えた「自律型感動人間」の育成を提唱し、その育成を推進しているスーパーホテル(http://okinaka.jasipa.jp/archives/1489)や、高校球児に「感じること」の重要性を教え春夏制覇を果たした沖縄興南高校(http://okinaka.jasipa.jp/archives/13)など。“共感力”と“感動力”は切っても切れない関係とも言える。

キャリアの8割は偶然がもたらす!

4月6日日経夕刊9面の記事だ。多くの社会人は「自分は何をやりたいのか」「何が出来るのか」をしっかり検討し、実現に向けてプランを立て実行すべきだと信じている。だが、ビジネス界で成功した人を調べたところ、計画通りのキャリアを歩むケースは少数。8割は想定外の出来事がキャリアアップや成長の足掛かりになっていた。その結果を踏まえて、スタンフォード大学のクランボルツ教授は

キャリアの8割は偶然がもたらす

と言い、偶然のチャンスを待つだけの消極姿勢ではなく、想定外の出来事を糧とし、成長できるように行動の心得を提唱する。

  • ・新しいものに関心を持つ
  • ・めげずに努力する
  • ・臨機応変に考え方を変える
  • ・「出来る」と信じる
  • ・リスクを恐れない

事例として、オリックスリビングの森川社長と東京日動火災保険執行役員の吉田正子氏を取り上げている。共に想定外の経歴(自分の希望あるいは想定している仕事とは違う)を歩みながらも、その時々の仕事にまじめに挑戦していった結果、思っても見なかった現在のポジションにいる。

この季節、新入社員を迎え、人事異動も多い。配属された職場が希望に沿わないことも多いだろう。そんな場合でも、後ろ向きに考えず、与えられた仕事を、上記「行動の心得」にもあるように、精一杯やることによって、新たなキャリアアップに繋がっていく。未来を憂えず、過去を悔いず、今に集中する「いま、ここ」の考え方を全うすることが自らの幸せにもつながっていく(http://jasipa.jp/blog-entry/7593、http://jasipa.jp/blog-entry/7878など)。

かくいう私も、全く元の会社と資本関係もない企業に呼んでいただき、図らずも社長、会長を経験させて頂いた。こんなすばらしい人生が送れるとは、全く予期せぬことだったが、20数年前お付き合いが始まった該社との出会いがこんなチャンスに繋がった。ほんとに人生は分からないものだ。思い返せば、私の人生も「いま、ここ」、与えられた仕事を誠心誠意実行してきた、そのお蔭と思っている。

人を成長させるためには弱みより強みに注目せよ!

これまで何回かにわたって、部下を育てるには「弱みより強みを育てること」が重要だと言ってきた。そして、人の長所を見抜く達人“吉田松陰”(http://okinaka.jasipa.jp/archives/2547、http://okinaka.jasipa.jp/archives/2531)、「弱みより強みを磨こう」と言うコマツの坂根氏(http://okinaka.jasipa.jp/archives/1917)、「組織として結果を出せないマネジャーの多くは、部下の弱みに目を奪われて、彼らの創造性を引き出せないでいます。」と言うドラッカー(http://okinaka.jasipa.jp/archives/2515)などを紹介してきた。

「致知2015.4」にも複数の方が、同じことを言っている。まず、「鉄のパイオニア」と謳われ、先進的な取り組みで日本の高度経済成長を牽引した立役者の一人川崎製鉄(現JFEスチール)の初代社長・西山弥太郎に関する作家黒木亮氏の記事。多くの人の反対を押し切って千葉に一貫製鉄所を作った西山氏だが、社員や工員からも慕われ、誰もが一緒に仕事が出来た事を誇りに思う社長でもあったと言う。その西山氏の最期の言葉、

あなたがいつか人を使う立場になるだろう。いろんな人がいるが、その人のいい所だけをみて使ってゆきなさい。

7mしか泳げなかった子が1000m以上泳げるように、マット運動が出来なかった子が体操で九州4位になったなど、福岡県春日市立春日東中学校体育教師下野六太先生の指導を受けた生徒たちが、次々と苦手な体育を克服し、大きな成長を果たしている。その下野先生の考え方、

生徒たちは、本来“宝”です。もう本当に“宝”に見えます。我々教育者は、いかにして生徒たちの中に眠っている“宝”を引っ張り出すことが出来るか。

最近の子どもたちは自尊感情が薄い。そのため、子供たちに「自分にも価値があるんだ」と言うことを実感させる。そのためには、如何に達成感を味わわせるか?そのための指導法を常に考え抜く。水泳では自分の過去の経験に基づいて「リラックス」「毎回息継ぎ」「バタ足ではなくパタ足」の三つを徹底的に指導すると思わぬ成果が出た。これを「ビフォーアフタービデオ」にとって子供たちに見せる。ますます、やる気を出して見る見る距離は伸びていく。

本田宗一郎氏も松下幸之助氏も、社員は”宝“と考え慕われた。そして人は育った。下野先生の「生徒たちは宝」との発想での行動が、学校、会社などに普及すれば素晴らしい世の中になるのではなかろうか。人の弱みを責めるだけでは人は育たない。