日経の夕刊に「プロムナード」というコラム記事が筆者を変えながら続いている。その中で目に留まったのが「出世の極意」のテーマで書かれた高橋秀実氏のコラムだ(8月8日)。目が止まったのは、テーマではなく、下記の文章。
誤解を恐れずに言わせていただくと、出世する人は、おおむね仕事が「できない」人である。もちろん無能と言うわけではない。「できない」と素直に表明できる人。恥をさらさせる人で、全身から何やら「できない」と言うオーラが漂っているのだ。考えて見れば、自分が「できない」からこそ人にお願いするわけで、彼らは自ずと腰が低く、感謝を忘れないのである。
すなわち、身を挺して「できない」をさらすことで周囲の「できる」を引き出すのである。逆に「できる」人はできるから命令をするばかりで、周囲の「できない」を浮き立たせてしまう。
昔の大量生産時代は「作れば売れる」時代でトップダウン経営が最も効率的と言われていた。しかし、最近は経営環境の変化や、とりわけ技術の変化の激しさゆえ、迅速な変化への対応が求められることから、ボトムアップ経による迅速な対応が求められている。要は社員一人一人が経営者意識を持つ「全員経営」が経営の要諦と。松下電器は松下幸之助氏の「全員経営」の発想で大きくなったと言われている(http://okinaka.jasipa.jp/archives/245)。ワンマン経営は、トップの技量以上の成長は望めないとも言われる。
高橋秀実氏のコラムは、言い方が直接的で、シニカルなところがあるが、よく考えて見れば「言い得て妙」的なところもある。高橋氏はノンフィクション作家らしいが、かの東大進学率の高さで有名な開成高校野球部を題材にした「弱くても勝てます」と言う本を出されている。開成高校は、ベスト16まで行ったことも有るそうだが、必勝セオリーの前提は「10点取られる」。だから15点を「ドサクサ」で一気に奪うこと。試合中、猛烈な守備練習が反映されるような打球は各選手にひとつあるかないか。「そのために少ない練習時間(週3時間しかない)を割くわけにはいかない」。難しいゴロは「例外」と気にせず、理屈で導いた基本動作の届く範囲だけ処理する。甲子園は毛頭ダメだが、東京大会で注目を浴びることは出来る。いろんな視点を学ぶには、面白い人だ。