こんな表題の本の広告が新聞に載っていた。何とも標題が意味深で早速買って読んだ(日本経済新聞社発行、2013.6.10)。1昨年、ご主人の病気(ガン)が理由で、突然社長を退任したことでも驚いたが、マッキンゼーでコンサルタントとして順調に出世階段を上っていた南場氏が、突然1999年(36歳)に起業し、2012年には2000億円の売り上げをあげる大会社に成長したその経営の実態のすさまじさにも驚いた。まえがきにも「読者が一緒に“DNA号”に乗ってジェットコースターのような展開をともに体験できるよう、事実をそのまま伝えることを重視した」と書かれているが、まさにジェットコースター経営の実態がよくわかる。
ニアショアに出していたシステム開発が、報告では順調と聞いていたがふたを開けると何もできていなかったとか、たびたび大きな危機に直面するなど南場氏が「わが社の歴史はひどい!世間さまにここまでアホをさらけ出していいのだろうかと思うほど、ひどい」危機がたびたび登場する。しかし、その失敗をバネに、より強い体質にしていく。先の例では、「システム開発を他人に任せているのではだめ」と超優秀なプログラマーを捜しだし社員にする。
「優秀な人を集めて、任せる」ことで人を育成していく。創業時から一貫して、どんな人手不足のときでも、人材の質には絶対に妥協せず、すごい!と思える人、尊敬できる人を徹底的に南場氏自身が口説き落とす(現社長の守安氏もオラクル出身だ)。そんな人と一緒にいると自身の気持ちも高揚し、怠惰な自分も最高に頑張れると言う。マッキンゼーの同僚2人を口説き落として立ち上げたが、直ぐ仲間を増やしたくて、二人に要求したのは「自分より優秀な人」。いつ正社員になったか分からないが、現取締役の川崎氏はDeNAに出入りしている時にモバオクや、後に大ヒットのモバゲーなどを作った天才アルバイトだったとか。優秀な人間にとてつもなく大きな勝負が出来るという選択肢を与える。
南場氏はビジネス書も読まない(結果論だから)。MBA資格はとったが、必要ない。コンサル経験は邪魔になるのでunlearning(学習消去)していると言う。が、日頃は優秀な部下に任せつつ、いざとなったら社長としての意思決定をする。その際「正しい選択肢を選ぶ」ことは当然だが、それと同等以上に「選んだ選択肢を正しくする」ことが重要との考え方だ。そのために、リーダーに最も求められるのは「胆力」だと言う。南場氏は、写真で見る雰囲気からも、社員とは喧々諤々の議論もしながら、叱咤する時は思いっきり叱咤し、褒めるときは褒める人ではないかと思う。裏のない、正直な方だから、部下も思いっきり社長とぶつかる。しかし、信頼関係が凄いのだと思う。そうしながらDeNA社員としてのオーナーシップ精神を養い、自ら成長する。離職率も低いが、出戻りも多いとある。
この本は、一気に読めた。私にはこんなことは出来っこないが、ベンチャー成長企業のすさまじさと、その成功要因を垣間見ることが出来た。やはり南場氏は普通の人ではない。