転居届サービスレベルの悲喜こもごも

退職後は自宅を中心とした生活圏内で過ごすことが多くなった。会社生活と違って、市民生活レベルで、いろんなサービスに接することになる。「すごい!」と感心させられたり、これはおかしいと思ったり。今回は、転居に伴う転居届に関するサービスに関して。

「Kuroneko members」に登録すると、「○○様からのお荷物を△月△日にお届けします。日時のご指定がありましたら連絡ください」とのメールが事前に来る。住所変更の届けをすれば、郵便と同様、旧住所でも新住所へ届けてくれる。ここまで進んでいるとは知らなかったが、このシステムは核家族化が進んだ今、双方にメリットがある非常に意義のあるシステムと思う。他の宅配便業者も住所変更方法を捜したが、あまり当てにできないとの情報もあり、あきらめた。宅配便は、ヤマトがサ-ビス面で先んじている感がする。

住所変更届に関して同じ業界でも、これほど多様だとは知らなかった。以前に比べればインターネットで出来るようになって便利になっていると思うが、銀行なども届出方法はまちまちだ。インターネットだけで出来る銀行と、届出用紙を送ってもらって届出なければならない銀行がある。株に関する住所変更届に関しても、どういう仕組みかわからないが、証券会社に届けても、株主通知などで確実に変更されているものと、そうでないものがある。株主優待が旧住所に送られたりする(転居届後1~2か月後でも)。

区(東京)に住所変更届をしているのに、税務署や年金機構にも同じように届をしなければならないというのも腑に落ちない。故郷に固定資産などがある場合、地元の市役所、税務署にも届けなければならない。

旅行会社などから来る広告雑誌、通販ダイレクトメールなども問題だ。ある旅行会社で、インターネットで住所変更したのに、旧住所に配送される。旅行会社に電話すると、配送会社のせいにする。愕然とする。

3ヵ月たって何とか住所変更に関しては、落ち着いたのかなと思う。私の場合、前の住所に息子夫婦がいるから、誤配送が分かる。そうでない人は、恐らく分からずじまいで問題にも出来ないのではないかと思う。公共システムだけではなく、一般企業システムでも、それぞれのシステムがバラバラで、いろんな意味での統合化を志向しないと、問題は闇に葬られ、大きな無駄を放置することになる。IT業界の仕事はまだまだ多い!

870年続く姫路の鍛冶屋「明珍」

PHP Business Review 松下幸之助塾(2012年7・8月号)に、「老舗に学ぶ永続繁盛の秘訣(大阪商業大学大学院特別教授前川洋一郎氏)」という記事がある。今回6回目であるが、その中に私の故郷姫路の「明珍」が紹介されている。もともと姫路藩お抱えの甲冑師で、足利尊氏、伊達正宗、豊臣秀吉など有名武将の甲冑の多くは明珍作と言われているらしい。創業は1141年とも言われ、そこから数えると870年、口伝によれば1000年以上続く老舗とも言われている。なぜこんなに長い間続けてこられたのか?

この間、大きな危機が4回あったと言う。一回目は明治維新。突然武士がいなくなり、甲冑が不要となった。ここで鉄の鍛錬技術を活かして火箸屋に転向し、「天下の明珍火箸」を生み出した。2回目は太平洋戦争。金属類回収命令が出て、鍛冶屋から鉄がなくなってしまった。この危機には、借家、土地を売って凌ぐ。3回目は家庭の燃料革命。石油やガスに変わり、火鉢と火箸は不要となってしまった。この時は火箸を4本集めて風鈴を創ることにした。冬の商品から夏の商品への転換だった。21世紀に入り、エアコン完備の密閉住宅の普及で、今度は風鈴の需要に限界が見えてきた。そのため、今は新たにチタンを使ったが楽器やスティック、花器などの商品レンジを拡大している。チタンの楽器、お鈴、明珍火箸を使った楽器、明潤琴を演奏するコンサートやイベントが、この1年好評とか。最もいまでも明珍火箸を使った風鈴は人気商品でもある(ちょっと高価だが、音の良さは一度聞くと忘れられない!)。年間3個しか作らないそうであるが、セイコーと共同で機械式複雑腕時計を創り、厚さ0.2mmの鉄の輪を組み込み、火箸風鈴と同じ音色で時を知らせる。ちなみのこの時計の価格は3465万円。

今は52代明珍宗理(むねみち)氏が家を守っている。世の中の流れを汲みとり、お客のニーズをくみ取って、商品開発、新工法開発を進める。そしてみすから市場開拓していく。職人のハングリー精神と商人のチャレンジ精神を代々引き継いでいく。それも千数百度の鉄を約1キロの槌で打つ鍛錬技術をベースにした展開である。宗理氏は「職人の奥義、心得」を次のように言う。

  • 職人としての反骨精神。職人だからやれないことはない。
  • 質素真面目が大切。
  • 日々の工夫改善こそ大事
  • お世話になった人への恩義に感謝
  • あせらず、じっくりと毎日こつこつと
  • 本業専心

870年続いた老舗の52代が言う言葉には重みがある。

JASIPA定期交流会最高の盛り上がり(19日)!

昨日JASIPA恒例(3ヵ月に1回開催)の定期交流会が三田であった。今回の基調講演は、IT業界では著名で、本も出版されている株式会社システムインテグレータの梅田社長の「会社の雰囲気を良くし、人を育てるための具体策あれこれ」だった。定期交流会はJASIPAの活動の一端をご理解いただくために、非会員の方にも参加いただいているが、今回は全体80名強の参加者の内、役半数が非会員だったそうだ。今回は、会場がほぼ満席となるほど盛況であった。

梅田氏の講演内容の詳細は会員向けのJASIPAメルマガに譲り、私の感じ入った所を私見も交えながら紹介する。梅田氏は、東芝→住商情報(31歳)→起業(37歳)の変遷を経て、40歳で理想の会社を目指し、54歳の現在はIT業界のために役立つことを目標とされて活動されている。住商情報時代に日本独自のERP 「Pro Active」の開発に携わられ、その経験をもとに日本初のWeb-ERP「GRANDIT」を開発。開発支援ツール「SI Object Browser」や総合プロジェクト管理システム「OBPM」の開発にも取り組まれ、「ソフトウェア産業の近代化」をライフワークとした事業を展開されている。さらに「日本のIT産業の国際競争力強化」をもう一つのライフワークとして、2006年にMIJSを立ち上げられた。

今回のご講演時間が1時間ということで、梅田氏は時間に追われながら、「会社を運営する上で気をつけていること」と「社員育成への取り組み」を重点的に話された。「社長の役割は、良い社風(土台、ミーム)を築くこと」との信念で、社長が先頭に立って風土づくりに当たられている様子が実感できるお話であった。理念(社是、経営方針、行動指針)を明確化し、それを言い続けるとともに、中期計画から個人目標に至るまで会社の方向性とベクトルがあったものにする。「正直に行こう」を有言実行(究極の場面で本性がでる)し、常に現状打破の精神を涵養するために「ベンチャー精神を忘れるな!」と言い続け、現代の人材育成は「コーチング」であることを徹底(社長自らコーチング研修受講)しつつ、社員も経営者も成長している実感を大切にされている。社長ブログ(公開)も2002年から続けておられる。

社員育成では、社員講師の月初勉強会を公開し外部からの参加もOKとしているとか、本の出版の奨励、改善提案活動制度などなど多くの施策が実施されている。中でも興味があったのは、「行動指針(社員はみな平等、よく聴く、人格尊重・・・・)の180度アンケート」制度があり、年1回部下が上司を評価し、その結果を公表し、行動指針の徹底を図っている(例えば、取締役は他の階層に比して「良く聴く」の評価が思わしくない)。毎月実施の「SIマインドアワード」は、社員から日頃の行動が目立っていい人の推薦を受け表彰する制度とか。評価内容は社内イントラネットで公開されている。

失敗を恐れず、「いいと思ったら実行する」、これぞベンチャー精神なのか、絶え間なくいろんな事に挑戦されている梅田氏の話に、出席者の皆さんは大いに刺激を頂いたものと思う。JASIPAのようなITベンダーを元気にするための支援は惜しまないとの、心強いお言葉も頂いた。本日のお話を、今後のJASIPA活動の活性化にも生かしていきたい。