「IT業界全般」カテゴリーアーカイブ

「ビッグデータ」が時代を変える?!

今年になってから「ビッグデータ」がIT業界の重要キーワードとなってきた。「ビッグデータ」とは、リアルタイム性・非構造化・ベタバイト(100万ギガ、1000テラ)の規模を持つものと言われ、データを分散処理するオープンソース「HADOOP」が出てから急激に注目され始めている。

随分以前から、「情報爆発」と言う言葉もあり、いまさらという感じで捉えていたが、最近とみに雑誌、セミナーで取り上げられることから、先週25日にあった日経ビジネスイノベーションフォーラムで「ビッグデータから創る新しい価値と企業戦略」をテーマとするセミナーがあった(日経ホール)ため参加してきた。数100人の聴講者がいる中で、早稲田大学根来教授の基調講演に続き、協賛企業の日本IBM、日本oracle、富士通、NEC(なぜ日立がない?)と日経コンピュータ木村編集長の講演があった。

既にGOOGLEやFACEBOOKなどネット企業においては、エクサバイトのデータを処理しながらWeb検索サービスや、各種クラウドサービスを実現しているが、ネット企業以外でもビッグデータをビジネスに活用し始めていると言う。例えば、コンビニに設置のカメラ映像で顧客の動線を分析し、何も買わずに出て行った客が、なぜ買わなかったかを分析し、棚の配置や品揃えに活かす。以前はPOSデータで、買ってくれた人の分析が主体だったが、買わなかった人の分析をどうするかは、大きな経営課題でもあるとの認識はあったが手がつかなかった。手術の動画像の活用、自動車の経路予想(欧州ではガソリン車が走れない環境ゾーン設置予定があるとか。その際環境ゾーンに入るなら、その前にバッテリーを使いきらないようにするために、事前に経路を予測してエネルギー配分を行う)など、これまでに手がつかなかった応用分野は多い。データ源は、カメラだけでなく、自動車、自動販売機やロボット(NECのpaperoが講演で登場)、将来的には人間の体に埋め込んだ端末なども出てくるかもしれない。直近5年間でデータ量は9倍になったと根来教授は言う。

木村編集長は「ビッグデータがビジネスに変革をもたらすのは間違いないが、課題は高度な統計・分析できるデータサイエンティストの育成」という。米国でも、この様な人材が10数万人不足しているとか。と同時に、日本IBM下野副社長が言われるように「顧客により近づく」「業務部門により近づく」ITベンダーの姿勢も求められる。これまでの常識を顧客と共に打ち破り、ビジネス改革を行うために!

  • 【参考1】日経コンピュータ9月15日号特集「ビッグデータ革命」
  • 【参考2】予告:2012.2.28~29 Big Data EXPO Spring 2012(国際フォーラム)

国内IT投資は減る一方?

15日わが社の隣のハイアットリージェンシー東京で、情報労連主催、JISA.JUAS、CSAJ共催の情報サービスフォーラムがあった。テーマは「情報サービス産業はどこへ向かうのか」。経済産業省(後援)の田辺課長補佐の講演の後、パネルディスカッションがあった。パネリストはJISA副会長(ITホールディング社長)の岡本氏、JUAS顧問の細川氏ほか労働政策専門家、NTT労組の方々で、趣旨は「JISAの言うパラダイムシフトの中で、今後の労働施策の在り方」が主題のようであった。

JUASはユーザー企業を抱え、ユーザー側のデータを豊富に持っておられ、その一部を細川氏が披露されたが、データに基づく日本IT業界の危機があらわされていたので、簡単に紹介する。

現在の価値レベル(EBITDA)に焼き直した収益率でみても日本の全産業の収益率は欧米、新興国(アジア圏含む)に比してもかなり低い。それが原因かどうかわからないが、企業の売上高に占めるIT投資額比率を見ても諸外国に比しかなり低い(日本1.0%、北米4.2%、欧州3.0%、アジアパシフィック2.8%、ラテンアメリカ2.5%)。そして、日本ではその比率は、20002年から6年間で50%も低下した(JUAS IT動向調査より)。これはハードウェア費用の低下や、仮想化、クラウドの活用などの影響もあるが、さらに今後3年間で30%は減るとの観測もある。

一方日本企業の海外生産比率、売上高比率は毎年UPし、双方ともに30%を超えている。海外進出の実態を見ると、素材産業では6割の企業が、機械器具製造では4社に3社が、また大企業では7割の企業が海外進出済みとのデータも紹介された。

我が国のIT経営度レベルでは、米国のみならず韓国にも劣っているとのデータも紹介された。ユーザー企業のITベンダーへの期待レベル調査では、システム構築や安定稼働に対しては期待に応えられているとするも、ビジネスプロセスやビジネスモデルの変革に関しては課題が多いとされている。

現在の不況から脱することが出来ても、IT投資額は元には戻らないとも言われています。JISAの言うパラダイムシフト、「受託開発型からサービス提供型へ」、「労働集約型から知識集約型へ」、「多重下請構造から水平分業型へ」、「顧客従属型からパートナー型へ」「ドメスティック産業からグローバル産業化へ」は必然の方向とも言える。

IT業界に働く人、みんなで真剣に考えねばならない喫緊の課題と言えよう。

ダメな”システム屋”にだまされるな!

これも1昨年、社内ブログに掲載したものですが、JISAが主導する「IT業界の構造改革」に通じる話と思われるためUPすることにしました。

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こんな題名の本が日経BP社から出版されていることを知り、日本のエンドユーザー向けとの書評もあり、慌てて購入しました。著者は元野村コンピュータ(現NRI)出身の方で、現在はコンサルティング会社を起業されており、これまでも日本のIT産業のために活躍されていた方です。今回の本も、JISAで20年前に「2000年のIT産業ビジョン」を提案したが、その後全く進歩がないとの事で、このままでは日本のIT業界は中国・インドなどに押され、ますます衰退の一途を辿り、従業員の給与も下がる一方との警鐘の意味で執筆されています。特に他業界に比し単価の高い金融系は、システム化投資はピーク(統合・インターネット化・規制緩和)を過ぎ、金融系以外で儲かる構造に変えていかなければ給与は下がらざるを得ない(NRIが金融系以外に手を出し始めている理由)との主張もされています。

基本的な主張は、「お客様視点のシステム提案・構築能力」です。ITバブル時代のIT人材不足で人さえいればいくらでも利益が上げられる時代の経験が忘れられず、いまだに作業請負・派遣に甘んじ、リスクをとらない体質を指摘し、リスクをとってもお客様の発展のための提案力を磨き、その方向での人材育成が必須との提言です。

お客さまに対する「ダメなシステム屋を見抜くポイントと対処法」が書かれています。お客様の問題点も聞かずに提案してくる、システム・物品を押し付けてくる、お客さまに接する態度がなっていないベンダーなどはダメ、そして提案するなら選択肢を与えてくれるベンダーかどうか、ベンダーに「何故私どもとお付き合いしたいのか?」「この案件は何があなたの挑戦・リスクですか?」と聞けば、その答え方でベンダーの良し悪し、お客様へのスタンスが分かると示唆しています。

この本は、当時あちこちで宣伝され、本屋でも平置きされていました。今でもITproに「ダメなシステム屋」シリーズ第二弾が掲載されています。心あるユーザーが読まれている可能性もあると思います。海外ベンダーに勝る強み、それは日本のお客様を思う心であり、お客様の発展を願う行動です。この強みを活かすために何をせねばならないか?真剣に考える時です!

追記:標記タイトルのIT Pro連載記事URLを紹介しておきます。http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/bn/mokuji.jsp?OFFSET=0&MAXCNT=20&TOP_ID=324984&ST=management