引っ越しで本の整理をしていたら、過去に読んだ懐かしい本が目についた。その中の一冊に船井総合研究所の創業者船井幸雄氏の「百匹目の猿―「思い」が世界を変える(サンマーク出版1996)」があった。百匹目の猿現象とは・・・。
今から50年ほど前に宮崎県幸島(こうじま)の猿に実際に起こった現象。幸島に生息する猿の群れのうちの一匹が、ある日、エサのイモを川の水で洗って食べることを始めました。すると、ほかの多くの猿たちも、それを真似して同じ行動をとるようになりましたが、その数がしだいに増えて一定量にまで達したとき、不思議なことが起こりました。その現象を知る由もない、遠く離れたほかの土地や島の猿たちもまた、つぎつぎに、イモを水洗いして食べる行動をとりはじめたのです。
つまり最初の一匹が始めた、一つの賢い行動が集団の中に広がって、群れ全体の新しい知恵や行動形態として定着したとき、その行動は、時間や空間を超えてあちこちに飛び火し、仲間の中に同時多発的に伝わり、広がっていったのです。「あることを真実だと思う人の数が一定数に達すると、それは万人にとって真実になる」ということで、イギリスの科学者ルパート・シェルドレイク氏など多くの科学者が仮説を立て、ほぼ証明した理論と言われています。(この事象を発見したのは、京都大学霊長類研究所の故今西錦司氏)
今でも船井氏は今後のビジョンとして、約10年前から提唱されている「『百匹目の猿現象)』を起こす活動をすすめられています。これは、「『いい世の中をつくりたい』という思いを共有する仲間が集まれば、社会や世界をもっと良い方向へ変えていくことができる」との思いから端を発したものです。つまり、この世の中には時空を超えて共鳴をもたらす力がある。それはまるで電波のように遠く離れたところにも広がっていくのではないか」という仮説です。この理論を人間に応用し、「いい世の中にしたい」と思う人の数がある一定数を超えたら、その思いは一気に世界中に広がるのではないか、そして一人一人が百匹の猿の一員になればすばらしい社会になるとの思いからです。今、心ない人間の行動による森林の減少や砂漠化の進行、食糧やエネルギー不足、そしてそれらを加速させる、大量消費を是とし、競争を良しとする資本主義の行きづまり・・・など、現在の地球環境は急速に悪化の一途をたどっている。そして船井氏は、いまがちょうど人類にとって、未来を良いものにするか、悪いものにするかの分岐点すなわち、“正念場”のように思えてならないとの危機感から「ニンゲンクラブ」をはじめとして、メディアや講演会を通じて皆に呼びかける活動をされています。
「1人の力は弱いものでも、正しいと思うことを勇気を持って行動につなげていけば、いつかは大きな力になる。世間は正しいことには自然と同調してくれる。」社会においても、会社においても、地域コミュニティにおいても、家庭においても、前向きに生きていきたい。