「経営改革4」カテゴリーアーカイブ

人を幸せにする経営=コンシャスカンパニーとは?

http://okinaka.jasipa.jp/archives/1152(人間らしい「組織づくり」を模索する米国ビジネス)でも紹介した「世界でいちばん大切にしたい会社(コンシャスカンパニー)」(ジョン・マッキー/ラジェンドラ・シソーディア共著、翔泳社、2014.4.17)を読んだ。本の帯には、~世界の超優良企業がすでに始めている「人を幸せにする経営」~とある。著者のジョン・マッキーは1978年創業の米国自然食品スーパーのホールフーズマーケットの創業者兼共同CEO。今ではイギリス、カナダにも店舗をひろげ全世界に300店舗近く展開している優良企業だ。

最初に掲載のエピソードが著者の伝えたい事を表現している。創業3年目ホールフーズに社名を変えて間もない頃店舗が現地(テキサス州オースティン)で、70年ぶりの大洪水に見舞われた時の事である。店は水浸しになり、何もかも破壊され自社の経営資源だけでは回復不可能な状態で、著者はじめ社員はガックリと肩を落としていた。すると翌日予想外の事が起きた。何十人もの客や近所の住人達がバケツやモップを持って店に駆けつけ店の掃除を始めたのだ。その後数週間は続いた。なぜ、こんな事が?ある客は「ホールフーズは私にとって本当に重要なのだ。ホールフーズが無くなったらオースティンに住みたいと思わないかも。それほどこの店は私にとって大きな存在だ」と。手を差し伸べたのは客だけではなく、社員は無給で働き、サプライヤーはツケで商品を供給し、投資家や銀行は資金的支援を申し出た。その結果、店は奇跡的な速さで再開を果たす。

筆者の主張する「コンシャスカンパニー(意識の高い企業)」とは

  • 主要ステークホルダー全員と同じ立場に立ち、全員の利益のために奉仕するという高い志に駆り立てられ
  • 自社の目的、関わる人々、そして地球に奉仕するために存在する意識の高いリーダーを頂き
  • そこで働くことが大きな喜びや達成感の源となるような活発で思いやりのある文化も根ざしている会社

を言う。企業に対する一般国民の信頼度が低いのは「ビジネスの究極の目的は、常に投資家にとっての利益を最大化すること」を唯一の重要目標として、反社会的な行動をも正当化しようとする行動を取るからとも言う。極悪企業(と筆者は言う)エンロンしかり。政府などに依存する縁故資本主義を批判する。しかし、成功した企業家は利益の最大化を目指してビジネスを始めたわけではなく、社会から求められている何かを成し遂げようと言う意欲に支えられている。営利企業の目的は私たちの生活を向上させ、ステークホルダーにとっての価値を創りだすこと、という本来の意味の復活を期待する。

「こんな経営は理想だが、現実的か?」私も含めて理想論ではないかと疑問をぶつけたく思うが、自社だけではなく、タタグループサウスウェスト航空など世界の優良成長企業の事例を挙げつつ、コンシャスカンパニーは結果として利益も上がっていることを説く。さらに付録に、コンシャスカンパニー(「愛に満ちた企業」に掲載された企業)とコリンズの「ビジョナリーカンパニー2」に掲載の企業と15年のスパンで利益、株価などの指標の推移で比較すると、圧倒的にコンシャスカンパニーが群を抜くことを証明している。

最後に明治大学野田稔教授が解説文を書いている。日本企業は過度のリスク回避志向と過剰管理で挑戦意欲の減退につながり、社会的貢献を謳う企業理念も「お題目」となっている。今こそ「志も高く、利益も高く」と、企業の存在目的を志高く実行するコンシャスカンパニーを推奨している。「鎌倉投信」は独自の選択基準(感動サービスや、地域・社員を大切に、など14項目)で銘柄を選び投資し、それなりの運用成績を挙げているそうだ。ホームページを見ると選択された企業が掲載されている。日本にもこのような「志の高い」企業が増えることを期待したい。

JASIPAの強みはお客様の問題解決力?!

2012年の元旦に私の初夢として下記のような事をブログに記した(http://okinaka.jasipa.jp/archives/152)。

サービス業の原点に戻って、“お客様のため”を徹底します。この‘お客様’とは最終ユーザーを言います。そのためには、会員企業は下記を実行します。

  • プライムで請けたお客様をトコトン大事にします。(信頼関係を築きます)
  • 日頃の対話の中から、お客様の課題・期待を聞き出します。自社で解決できる問題だけでなく、JASIPA会員企業全体で解決できる問題も含めて。
  • JASIPA会員全体の知恵で、提案をします。
  • 各社は自社の強みを打ち出し、それを徹底的に磨きます。
  • お客さまは、JASIPA株式会社の総合力での対応に満足します。
  • 総合力として不足の技術を持つベンダーを誘い込みながら、より大きなアライアンス集団としてJASIPAを発展させていきます。

 

上記の参考になるかどうか、士業の方々が寄り集まり、お客様の問題をワンストップで解決する集まり「法務・会計プラザ」(札幌)を主宰する弁護士太田勝久氏が、「致知2014.9」の致知随想に寄稿している。発足から21年経った今、連携の輪は広がり公認会計士、中小企業診断士、社会保険労務士など様々なプロ(専門資格者)23名、スタッフを含め総勢80名の集まる部隊になっており、お客さまから高い評価を得ているそうだ。

太田氏曰く、「士業に携わる人間も、かってのように情報を独占し、それを笠に着てお客様の相談に応じるような仕事のやりかたは通用しない。入手した情報からいかに優れた解決策を導き出せるか。そこに我々プロの存在意義がある。」と。分野の異なる専門家の英知を結集してより高いレベルでお客さまの要求に応えたいとの思いで「法務・会計プラザ」を発足させた。その目的達成のために、各人の専門性を磨くと同時に、問題解決力の根本とも言える“人間力”を磨くことにも力を入れたと言う。なぜ“人間力”か?

「問題を解決するためには、まず状況を冷静に分析しなければならない。そのためには三つの視点が必要と言われる。大局を俯瞰する鳥の目、周囲を回遊しながら状況を把握する魚の目、そして小局を見る虫の目の3つだ。ところが、人間は、自分の思い込みや我執などで目が曇り、物事を素直にありのままに見ることがなかなかできない。そこで人間学を通じて心を耕し、見識を磨き、人間としての器を大きくする必要があるのだ。」と太田氏は言う。さらに続けて「士業に携わる人間は、常時数十件の案件を同時に抱えている。しかしお客さまにとっては自分の一件に人生が懸っている。自分は座禅や古典の勉強を通じて人間力を養うことにより、自分の心をクリアな状態にし、限られた時間の中で一件一件の案件を全力で取り組めるように努めてきた」とも。

最後に「高い次元での問題解決力を養うためにも、組織を担うひとり一人が人間学にもとづいて自分を向上させ主体的に行動し、燃える集団にならなければならない」と言う。冒頭の初夢を実現するために相通ずるヒントがこの事例にはたくさん盛り込まれているように思う。「お客さま第一」「お客様のための問題解決」と言う言葉をJASIPA会員企業のアライアンスで完遂するには、各社の強みにさらに磨きをかけるとともに、お客様の問題を素直に捉えることが出来る人間力を個々に備える努力をし、成果につなげていくことが必要になる。中小ITベンダーの強みを柔軟に組み合わせながら、お客様の問題解決に資する、これがJASIPAの最大の強みになる。是非とも実現したい。

スーパーホテルの進める「自立感動型人材の育成」とは

ブログで何度も取り上げている、スーパーホテルの山本梁介社長の推進する「自律型感動人間」の育成に関して、山本社長自身が語られている記事が「PHP Business Review松下幸之助塾2014年7・8月号」にあった。「自律型感動人間がお客さまを引き寄せる」とのタイトルだ。そのリード文、

「安全・清潔・ぐっすり眠れる」をモットーに、一泊朝食付き5120円からという低価格にもかかわらず質の高い宿泊サービスで人気を博するスーパーホテル。平均稼働率が90%以上、リピート率に至っては、ホテル業界では非常に高い70%、平日ではなんと90%を超えると言う。「お客様第一主義」の方針のもと、顧客に対し、満足にとどまらず感動までもあたえるべく、従業員が自ら考え、感謝の気持ちを持って行動できる「自律型感動人間」の育成を提唱している。

今や国内ホテル数は100を超え、海外にも展開中のスーパーホテル。めざすは「お客さまに“満足を超えた感動”をお届けする事」。そのために、感性と人間力双方を兼ね備えた「自律型感動人間」の育成を提唱し、その育成を推進している。船場の繊維商社から始まり、不動産賃貸業、シングルマンションからホテル経営と、多難な道を歩んできた山本社長。その過程で経営のコツを実体験の中から学び、サラリーマンが出張費の中から出張先で一杯飲める金額「5000円程度でゆっくり休めるホテル」と言うことで誕生したのがスーパーホテルだそうだ。ITを駆使して、チェックインを自動化してチェックアウトを無くす。そのために部屋の電話や冷蔵庫など部屋の有料サービスをなくす。部屋のキーも暗証番号制のオートロックを取り入れなくした。経営理念に「安全・清潔・ぐっすり眠れる」ことを謳い、この点に不備があれば宿泊料金を返金することにしているが、かっては年100万円近く返金していたが、今は数万円程度だとか。お客さまからのクレームを「ラッキーコール」と呼び、枕が原因でぐっすり眠れないとのクレームで、枕を選べるシステムを採用。暑い日には「お帰りなさいませ」の言葉と同時に冷たいタオルを出す。

「自律型感動人間」とは、「自分で考え、行動でき」、「相手の立場に立って考え、感謝できる人」を言う。「人に対する感謝の気持ちが強い人ほど、お客様を喜ばせることに積極的で、感動を与える人でもある」と山本社長は言う。この理念を書いた「Faith」を皆が持ち歩き、毎朝唱和し、一人一人の取り組みを紹介し、経営陣がコメントすることを繰り返す。週に一度の上司と部下の対話の中で「自分に自信を持たせる」ことも「自律型感動人間」のためには必要だと言う。環境に優しいロハスにも力を入れ、「スーパーホテルlohas東京八重洲中央口」をオープン、女性に人気でお客様の半数が女性だそうだ(全体でも30%が女性)。

理念に基づく人材育成」、そして「自律型感動人材の育成」、容易いことではないとは思うが、会社の成長と社員の幸せのためにも考えるべきテーマではないだろうか。