深刻な医師不足や財政難から存続が危ぶまれる医療機関がある一方、高度医療の確立や患者本位の医療の実践で絶大な支持を得る病院もある。千葉県鴨川市にある亀田メディカルセンターは、房総半島の南東部と言うローカルな立地条件にありながら、全国の病院ランキングで常にトップクラスの評価を得てきた。患者の心をつかみ、職員の働く意欲を高める亀田メディカルアセンターの亀田隆明理事長に聞く。(「PHP Business Review 松下幸之助塾2013.1・2」の「まず‘YES’から始めよう~患者・職員双方に約束する“最高水準”の医療~」の記事より)
医師、看護師含めた職員の数3700名、1日の外来患者数3000人。都心から2時間と言うローカルな場所で、これだけの規模を維持できるのはなぜだろう。まず、亀田メディカルセンターの企業理念を挙げておく。
使命
- 我々は全ての人々の幸福に貢献するために愛の心を持って
- 常に最高水準の医療を提供し続けることを使命とする
価値観
- その最も尊ぶところ:患者様のために全てを優先して貢献すること
- その最も尊ぶ財産:職員全員とその間をつなぐ信頼と尊敬
- その最も尊ぶ精神:固定概念にとらわれないチャレンジ精神
Do & THINK
固定概念に捉われないチャレンジ精神を発揮するために、「考えるよりも先に実行せよ!」ということ。東日本大震災時、この精神が活かされたと言う。3.11当日夜には災害派遣チーム第一陣が現地入りした。院内の停電対応が終わった14日には被災地の福島県いわき市の常盤病院の透析患者の受け入れを開始。その後、同グループの介護老人保健施設の入所者・職員など200名を施設ごと受け入れに奔走し、近くの「かんぽの宿鴨川」の協力を得て21日に受け入れ完了。他にも、世界に先駆けて、患者さんの利便を図るため、1995年に電子カルテを導入。
Always say ‘YES’
「患者様のために全てを優先して貢献する事」を最も尊ぶ価値観だ。だから、患者様から何か要望された時には、まず‘YES’と答えることをモットーにしている。どんな要求にも応えろと言う事ではなく、ほんとに出来ないのかどうか、まずは考えてみようということ。全室個室の病棟では患者様が指定される方にICカードを渡しいつでも面会可能としたり、院内に「カスタマーリレーション部」を設置し、コンシェルジュという専門スタッフを配置して、患者様だけではなく病院を訪れるすべてのお客様の問い合わせ(医療以外でも)に応えることにしているとの事。私も当ブログで「まずは’YES‘で答える,」効用をテーマにしたいくつかの記事を書いている(http://jasipa.jp/blog-entry/7640)。
亀田なら最新の医療設備が充実していてそれらを存分に使える、最先端の高度医療技術を身に付けることが出来る、自分のやりたいことにチャレンジできる、そういう魅力的な環境があるから、優秀な人材が集まる。天皇陛下の心臓手術執刀医天野先生も後期研修医時代亀田病院で過ごされている。社員、お客様からの信頼が世間の信頼を生み、いい人が集まるいい循環を生む。ローカルな土地に立地しながら、この循環を生み出し、最高の評価を得ている亀田メディカルセンターに、一般企業も学ぶべき点は多いと思う。