「日本の課題」カテゴリーアーカイブ

「教育の根本は愛にあり」(致知より)

「致知2024年1月号」の記事のタイトルだ。”花まる学習会”を全国で展開する高濱正伸氏と、女子卓球界を代表する平野美宇さんの母平野真理子氏の対談記事だ。

平野氏は筑波大学時代の卓球部主将経験を経て、20年前に山梨で卓球スクールを開設し、今では約80名の老若男女(障碍者含む)を、長女美宇さん(東京オリンピック体操団体で銀メダル獲得)はじめ3姉妹を育てながら指導されている。3女亜子さんは発達障害を持ちながらも、全日本卓球大会に出場する力を持たれているという。次女世和さんは、東京の大学で栄養学を学び、東京に赴任されているご主人と、美宇さんの食事の世話をされている。山梨と離れていても、週に1回オンラインで顔を合わせての対話を心がけ、家族がお互いに話を交わす楽しい家庭風景が想像できる。卓球スクールには障碍者もいるが、障碍者支援学校の教師経験を活かして、正常者と共に、卓球で強くなることだけが目的ではなく、人間関係など人間力の育成に関しても指導されているそうだ。楽しい家族あっての厳しい中にも愛情のある卓球スクールともいえる。

一方、高濱氏も、「飯を食える大人を育てる」という理念のもと、全国に360校以上の「花まる学習会」を作り、子供たちを育てることに生きがいをもってあたられており、成果を出されている。高濱氏は「偏差値教育に疑問を持ち、言われたことをやる人間ではなく、自ら考え、未知の分野や自身の弱い部分に立ち向かっていくための意欲や思考力、人間関係を築く力を育むこと」と考え「メシが食える大人」を育てることを目的に花まる学習会を立ち上げられた。昨年には、荒くれ物の若者の提言で、フリースクール(吉祥寺?)を立ち上げ、運営は任せているとのこと。この学校には、数年引きこもりの子や、ADHD,アスペルガーの子供たち24人が初年度集まり、今年は65人に増えたが、全員毎日登校しているという。不登校だったのに、いまや天才だらけと思えるほど、かの有名な灘中を受験したり、全国模試1位を取ったり、レスリングで日本一になったりで高濱氏自身一番驚いているという。高濱氏の息子さんも、脳性麻痺で重度の重複障害があるという。その子が、フリースクールに通う人たちともなじみ、先生役もされているという。

なぜお二人の生徒が立派に育っているのか?

先生の愛情こもった言葉、態度を生徒たちは敏感に感じ取ることができる。ADHDの子がともかく動き回り、屋根裏までいってしまうことも。ある日どこかに行こうとしたその子を捕まえて膝に乗せ「先生、お前のことが大好きで離したくない。お前がだいすきだよ!!」って繰り返した途端、その後ずっと椅子に座って授業を受けたそうだ。子供たちは、ほんとに大事にされている、愛されていると実感した瞬間から何とか自制して頑張ろうとする。大事なのは、「子供の存在を喜んであげる」こと。

お二人の結論は、「家庭が人間関係を構築するうえでの基盤となり、それが子供の幸せの原点になる。家庭が楽しくて円満だと、友達にも優しくなると思う。夫婦仲ってほんとうに重要。」とのこと。

2022年度の文科省の調査では、小中学生の不登校者が30万人弱(前年比22%増)、高校生が6万人強(前年比19%増)と急激に増えつつある。上記お二人の対談は、この問題に対する提言として、非常に参考になると思われる。

”人助け文化”日本は危機的状態!?

8月19日毎日新聞朝刊“余録”を読んで「日本の助け合い文化レベルの低さ」に驚いた。インターネット記事を原文のまま下記に紹介する。

「人助け指数」と呼ばれる国際調査がある。「見知らぬ人や、助けを必要としている人を助けたか」「寄付をしたか」「ボランティア活動をしたか」という問いに対する各国の人々の答えを英国の慈善団体CAFが集計した▲最新2021年調査の首位はインドネシア。「ゴトン・ロヨン」と呼ばれる共同体内での相互扶助システムが健在で、コロナ禍ではそれが発揮されたと報告書は分析する。日本は119カ国・地域中118位だった▲日本のムラ社会にも相互扶助の仕組みはあった。おきてに背けば葬式と火事の時以外は助けない「村八分」となった。経済発展とともに都市化が進み、そうした制裁の風習も廃れたが、人助けの文化まで失われたのか▲とりわけ冷淡とか、けちだとかいうわけではないだろう。国内で災害が起きれば多くのボランティアが駆けつけ、寄付金や応援物資が集まる。ただ、遠く離れた見知らぬ国の危機には疎い、と言われれば耳が痛い▲きょうは世界人道デーバグダッドで国連事務所が爆撃され、人道支援の職員ら22人が死亡した03年の事件をきっかけに創設された。人道危機に直面する人、それを支援する人の双方に思いを寄せる日だ。国連の特集サイトには「助けるべき人口は20年前の10倍になった」とある▲戦下の国はもちろん、政変や気候変動も人道危機につながる。その国の政府に頼れないからこそ、世界中の見知らぬ人の支援が欠かせない。苦境に思いをはせ、行動に移す最初の日にしたい。

記事にあるように、今回の台風6号、7号などの被害地に“ボランティアが駆け付け、寄付金や応援物資が集まる”のを見て、日本はやはり世界に誇れる共助国だと思っていた。が、裏バイトで高齢者をだます事件など、毎日嘆かわしい事件が相次いでいる。電車内の優先席の利用に関する問題もたびたび見聞きする。世界で最低の評価とは信じられない面もあるが、素直にこの問題をとらえ、世界に誇れる国になるためにみんなが考え行動に移す時だとも言える。日本を世界に誇れる国とするために。私自身も今後の行動を真剣に考えたい。

君子は義に喩り、小人は利に喩る(論語)

標題は、「論語」において、孔子は成人男子を君子と小人に区分し、二者を対比することで人の生きる道を説いたものだ。君子、即ち真に立派で賢明な人物は、事に当たって「義」を第一に考え、行動するが、つまらない人物、愚者は真っ先に私利私欲に走り、行動すると。

8月24日に90歳の天寿を全うされた稲盛和夫氏は、いろんな場面で「動機善なりや、私心なかりしか」と自分に言い聞かせ、施策などを点検された。JAL再生に、無給で日本のために、社員のために、高齢にもかかわらず尽力されたことが、まさに利ではなく義に喩られた稲盛氏の人生そのものだ。

「致知2022.7号」でJFEホールディングス名誉顧問数土文夫氏が、国の品格や健全性は、義に喩る国民の多寡によって決まるとの「巻頭の言葉」を寄せられている。1900年米国で「武士道」を刊行した新渡戸稲造は、「義」は武士にとって最も厳しい教えであり、裏取引や不正ほど忌み嫌われるものはないと、さらに「義」は正義の道理であり、国、社会に対する成人の責任義務であると言っている。数土氏は、この記事の中で、「我が国では、コロナ禍の中で休業補償費を詐取して処せられる高級官僚、法務大臣の地位にありながら、自ら選挙違反行為をして実刑に処せられる者、安全第一を社是としながら、公的検査で不正を働く自動車メーカーおよびその経営者等々、利に喩る嘆かわしい成人が後を絶たない」ことを嘆くと共に、偉大な先人たちの教えをもとに国民が覚醒し、我が国がこの時代の分岐点に果敢に道を切り開いていくことを願って止まない、と訴える。

「地球上で、最後まで残ってほしい国は“日本”」とたしかフランスの著名人が言ったとの記憶があるが、数土氏ご指摘のような事実が、その後もあとを絶たない日本の現実に日本の将来が心配だ。昨今世の中を騒がせている旧統一教会問題に関する国会議員を見ていると、選挙に勝つためには何をしてもいいとの態度が見て取れる。国会議員を“選良”すなわち “優れた人&選ばれた人”と呼ぶらしいが、東京五輪の元理事と同じく、利権欲しさで、何をしてでもともかく選ばれる人になりたいと言うのが国会議員ともいえる体たらくだ。こういう人を選んだ私も含めた国民にも責任はあるが・・・。

ともかく、今の子供たちの未来を作り、人を育てる環境を作る、そんな日本に国会議員が先頭に立って、模範を示しながら進めていく,そんな日本になってほしい。数土氏が言う「国の品格や国の健全性は、義に喩る国民の多寡によって決まる“を胸に、いろんな行動につなげていきたい。