「顧客サービス2015」カテゴリーアーカイブ

「一生の固定客を増やす」まちゼミ伝道師 松井洋一郎さん

“「一生の固定客を増やす」まちゼミ伝道師 松井洋一郎さん”と言うタイトルの記事をインターネットで見た。私も、前職の経験に基づいて、JASIPAなどの講演会で「一生客」と言う言葉を使って、「お客さま第一」の風土を創ってリピート客を如何に創るかが経営の重要なポイントと説いているため、この記事に目が止まった(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151003-00000001-wordleafv-bus_all)。

愛知県岡崎市で化粧品店を営む松井氏は、大型ショッピングセンターなどに押されて活気を失っていく商店街で、歩行者天国、フリーマーケット、アートや音楽の催しなど次々とイベントを設けるが、にぎわいは持続しなかった。そこで一過性のイベントは止め、各商店主の豊富な商品知識を活かした文化講座を継続的に開くことにした。これが松井氏の提唱する「まちゼミ」の原点だと言う。松井氏は「まちゼミとは、各店舗が新しい固定客を獲得する運動です。(中略)地域商店街では各店舗の売り上げの大半は固定客が支えていいますが、大型店が進出し、ネット販売の比重が高まると、離店客が発生します。離店客よりも新しいお客様の数が増えなければ、個店の売り上げはじり貧になり、やがて廃業せざるを得ない。しかし、まちゼミで新しい固定客を獲得できることが分かってきましたので、自分たちの手で商店街を再生できるかもしれないという方向へ意識の流れが変わってきました」と言う。”まちゼミ”では、化粧店では「化粧の仕方」、ワイン店では料理に合うワインの選び方、お茶の販売店ではお茶の作法やお茶の楽しみ方、鮮魚店では魚のさばき方など、まだ気づいていない人生の楽しみや豊かさを、さまざまなお客さまに提案している。受講生の2~3割が固定客になってくれるそうだ。ある文房具店で、手紙を書く楽しさ、気持ちを伝える喜びなど、顧客が気付かなかった生きがいにつながるヒントを提供した結果、万年筆の売上が15倍になったと言う。下駄など伝統文化を継承するためにもこのような活動は意義があるとも言える。

松井氏は全国各地を回り、まちゼミの普及に尽力されており、今では全国200か所以上の商店街でまちゼミが継続的に実施されているそうだ.。モノでは語れない、人でしか語れないサービス、すなわち“おもてなし“のサービスは人の心をつかむのだろう。”まちゼミ“は日本の文化を守り、地方を再生するキーワードの一つかも知れない。

「繁盛創り、人創り」理念で60年続く町の酒屋さん(泉谷酒販)

かつてはどこの街角にも見られた「町の酒屋さん」も1990年以降の規制緩和でスーパーや大型量販店に押され廃業を余儀なくされ次々と姿を消した。私の故郷でも以前何軒かあった町の酒屋さんが今は全くなくなっている。そんな状況の中で、創業60年を経た今も、年商35億円、利益率はコンスタントに3%以上挙げている町の酒屋さんが福岡県久留米市にある。「泉屋酒販」だ。理念を掲げ、その理念を徹底的に追及し、具現化していったその知恵と行動が、今につながっている(「PHP松下幸之助塾2015.1-2」の「酒文化の創造と伝承で人と地域を幸せにする」記事より)。

泉屋酒販は、飲食店や外食産業にお酒を納める業務用酒販店で、自らの事業を「酒文化価値創造業」と位置付け、お酒を販売するだけでなく、それを通じて酒の文化的価値を伝え、お客さまである店の繁盛や人の幸せを創造していくことを目指した。そして「繁盛創り、人創り」の経営理念を掲げた。「繁盛創り」とは、お客さまである飲食店の繁栄を実現する事。業務用に絞って営業展開してきたことで、飲食店が繁盛するためのノウハウを50年以上にわたって蓄積してきた。その蓄積を活用して、久留米随一の歓楽街「新世界」(1960年代)や「文化街」(1970年代後半)の基盤を作ったのは泉屋酒販だ。

そして、このようなお客様の繁栄に貢献できる社員を育成することが「人創り」だ。酒の文化を伝えていくには、社員自身がその知識に精通している必要がある。そのため、ソムリエや唎酒師(ききざけし)、焼酎アドバイザーなどの資格取得を奨励し、多くの社員が何らかの資格を持つ「お酒のプロ集団」となっている。

1955年(昭和30年)に4坪の店舗からスタートした土師軍太現会長の理念を、息子の現社長(康博氏)と専務(正記氏)が受け継ぎ、現在も博多や北九州、熊本の八代などまで取引先を拡げている。泉屋酒販が扱っているのはお酒と言う「モノ」ではなく、お酒と言う「文化」であり、社員やお客さまと共に、お酒の夢やロマンを語れ、人の幸せにつながるお酒の飲み方、売り方を今後も提案していくと息子たちも言う。

東京町田市にある「でんかのヤマグチ」を何度かこのブログでも紹介した(http://okinaka.jasipa.jp/archives/180)。「町の電気屋」も酒屋さんと同じく多くの店が廃業に追い込まれる中、地域のお客さまに対するサービスを徹底することで安売り競争に巻き込まれることなく、今なお高い利益率(粗利率35%)を挙げられている。日本の課題「地方創生」の大きなヒントになるのではなかろうか。

こんな「カリスマ添乗員」もいる!(日本旅行)

この3月阪急交通社のイタリア旅行に行った際、添乗員の博識に感心し、添乗員次第で旅の面白さが変わることを述べた(http://okinaka.jasipa.jp/archives/2744)。

それを突き抜ける驚くべき添乗員が日本旅行にいることを「致知2015.8」の記事が教えてくれた。その名は、平田進也氏(日本旅行西日本営業部個人旅行営業部担当部長&おもしろ旅企画ヒラタ屋代表)。その記事のリード文を紹介する。

突き抜ける、とはこの人の事を言うのだろう。平田進也氏は大手旅行代理店の1社員だが、年間売上8億円、お客さまからなるファンクラブの数も2万人にのぼる「カリスマ添乗員」である。平田氏はいかにしてお客様の心を掴んだのか。いかにして前例のない驚きと感動のツアーを企画し続けるのか。その仕事術に学ぶ。

平田氏が企画したツアーの一部が紹介されている。

仇討ツアー:日頃旦那さんたちが遊び回っている大阪の歓楽街・北新地に奥様方が繰り出し、高級クラブ、高級レストランを巡る旅。奥様の反応―男たちはこんな遊びをしているのか、腹立つわ(笑)。

快GOツアー:ファンクラブの方のお父さんが脳梗塞で倒れ、「車椅子でも行ける旅行」を希望されたため企画。介護福祉士を同伴し、日頃介護されているお客さんに代わって車いすを押し、お風呂にも入れてあげる。この取り組みがテレビで紹介され、同じような要望が殺到。

こんな企画を年間40本近く企画、平田さんの企画なら何でもいいから参加したいと全国から平田ファンが集まってくれる。平田氏の原点は「お客さまに喜んでもらいたい、とのお客さまに寄り添う心」だと言う。場合によっては、お客さまが喜んで下さるなら女装や変装も辞さず。「なんでそこまで?」と思う方もいるが、中途半端にやるのではなく、人生やりきる、ただ生きるのではなく、生き尽くさなければならない。肩書も関係なく、人間・平田進也がどれだけ仕事に尽くし、お客さまに尽くし、周囲の皆様に尽くして、かけがえのないご縁を築けるか、それこそが人生の財産であると平田氏は言い切る。

当初はお笑い芸人を目指していたが、意に反して旅行会社に入社。そしてお客様の喜ぶ声と顔に魅せられて、これからも添乗員を天職として感動のツアーを提供し続けていきたいと意気込む。まさに「いま、ここ」に志を持って集中する、その生き方がお客様の感動を生み、ファンを増やし続けることだろう。