「顧客サービス2013」カテゴリーアーカイブ

「教養」とは相手の心が分かる心

「教養とは相手の心が分かる心」とは。解剖学者であり脳研究家でもある養老孟司氏の言葉だ。教養のある人とは、「物知りで勉強ができる人」ではないとの事。

工業デザイナーとして、JR九州の車両(http://jasipa.jp/blog-entry/7959)や、和歌山電鉄の「たま電車(猫の駅長で有名)」、富士急行の「富士登山電車」などで悉く成功をおさめられている水戸岡鋭治氏の対談記事の中の言葉が印象的だ(「致知2013.5より」。

「私は、働くとは即ち人にサービスすることだと思うんですね。人の事を考えられるのは能力が高いと言う事であり、幸福になれる基本ではないかと。だから私の事務所では10名ほどスタッフがいるのですが、来客の予定があると、‘こういう人でこのくらいの年齢だ’だけ話してお弁当を買いに行かせます。お客様の事を考え、いかによい弁当を買うことが出来るか。それが出来ないものによいデザインはできません。お客さまには1時間おきにお茶を出し、3時にはおやつを、夜には夜食を用意する。だから会議がある時は、社員はデパートへ買い出しに、お茶出しにと1日中走り回っています(笑)」

「おいしいお茶がはいるとお客さまも長居されますから、豊かなコミュニケーションが出来て、よい信頼関係が生れる。絵を描いたり、コンピュータを動かしたりはいつでもできる。新人の1~2年間こんな経験をさせると後で大いに役立つ。」

我身を振り返れば、身につまされる話だ。恐らく、水戸岡氏が経営するドーンデザイン研究所では、お客さまとのデザインに関する打ち合わせが多いのだろう。IT業界でも同じ話だ。お客様が、あるいはパートナーの方が来社された際、気分よく過ごされるための精一杯の対応をしているかどうか?そのためには、お客様の嗜好に常に気を配り、データを蓄え、お茶出しから気を使っているだろうか?随分前だが、ある会社を訪問した時、応接室の机の上に一輪挿しのかわいい花が目に留まった。聞くと、秘書が毎日のように気を利かして、花を活けてくれているとの事。後日、秘書に言うと非常に喜んでいたとのこと。こんなちょっとしたことが、記憶に残る。

これも「お客さま第一」の行動の一つだ。

世界一のサービスマン宮崎辰に習う!

昨夜NHKの「プロフェッショナル・仕事の流儀」を久しぶりに見た。タイトルが「世界一のサービスマン」とのタイトルに惹かれての事だ。案の定、サービスに賭けるプロの男の神髄を見た。下記に、NHKのインターネット記事からも引用しながら紹介する。

昨年の世界大会で日本人初の優勝を果たし、“世界一”のサービスマンと賞賛される宮崎辰(36歳)。三つ星フレンチレストラン(恵比寿ガーデンプレイスにあるシャトーレストラン ジョエル・ロブション)を舞台に、感動の瞬間を演出するサービスの極意に迫ったもの。サービスマンは、本場フランスではシェフと肩を並べる高度な技能を求められる専門職で、「メートル・ドテル」と称される。宮崎は、メートル・ドテルの腕を競う世界大会で、日本人初の世界一となった。日本ではソムリエやシェフの重要性は認められている一方、給仕のサービスはほとんど認識されていない。だが、良い給仕は客がくつろいで食事を楽しめるよう最大の努力を払っており、シェフの料理以上に果たす役割は大きいのだという。

お客様の気持ちの先を読む

番組では宮崎の「極上のおもてなし」の作法を紹介する。客のちょっとした表情や仕草(しぐさ)から、客がこれから何を求めようとしているのかを先回りして見極め、接客のベストのタイミングを判断している。たとえば、客がメニューを読む目線の位置に注目して、注文をとりにいくタイミングを読む。そして、客の食べるペースや会話の盛り上がり具合などを考慮して、次の料理を作り出すベストのタイミングをシェフに伝える。しかも、こうした気遣いを同時に何組もの客を相手にやってのけるのだ。

お客さまと心を開きあう

宮崎は、客の心の内を少しでも理解しようと話しかけ、同時に自らのことも素直に話し、互いに「心を、開き合う」ことを目指す。そのように関係を育んだ客との間には、宮崎が理想とするリラックスしたサービスが実現するという。1月、宮崎に一本の電話がかかってきた。彼女の誕生日にプロポーズをしたいという会った事も無い29歳の男性から。事前に念入りに計画をし、当日の気配に合わせた演出で見事、男性の人生をかけたプロポーズを成功させた。

100%ではダメだ

最高級の料理や飲み物、設備を提供することで、100%の満足は実現できて当たり前。あらゆる手だてを駆使して極上の空間を演出し、100%以上の満足を追求していくことが、サービスマンにとってもっとも大切だと宮崎は考える。

宮崎が言うプロフェッショナルとは、

目標とか夢を達成するために、身も心も削って、過去を顧みず常に前進するような人。自分が出来るんだと思ったらプロフェッショナルを辞めるとき。

そして、サービスについて

接客とは愛です。お客さんが自分を活かしてくれる、お客さんがいるから自分が生きられる。だから、生きていく上でお客さんに尽くすことが自分の使命だ

と言う。宮崎の接客を求めて多くの客が来ると言う。

第12回経営者サロン(http://jasipa.jp/blog-entry/8594)のテーマ「お客さま第一」を実現するサービスには限界がない。常に「お客さま」サービスを追求する姿勢が、お客様を呼ぶことになる。宮崎氏の姿勢は、サービス競争時代を迎えるIT業界にとってもヒントになることが多い。

「さらば安売り」でんかのヤマグチ山口社長の連載記事始まる

“さらば安売り!ウチは「量販店の2倍の価格」でもテレビが売れる”(日経ビジネスオンライン2013.3.12 http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130305/244566/?mlp)。当ブログでも何度も紹介しており(http://jasipa.jp/blog-entry/7295)、坂本光司法政大学教授の「日本でいちばん大切にしたい会社」講演会(http://jasipa.jp/blog-entry/8437)の中でも出てきた、町田市の家電販売店「でんかのヤマグチ」山口社長の連載の第1回目”高くても買ってくれる顧客を増やす方法“が始まった。地方に量販店が進出した時、多くの販売店が店を閉めざるを得なくなる状況下で、10年で営業利益35%を達成すると宣言し、8年で目標を達成してしまった山口社長は、本(なぜこの店では、テレビが2倍の値段でも売れるのか2013.2.19日経BP社)も出版されたり、各地に呼ばれ講演でも忙しいと聞く。

50インチの液晶テレビの価格は32万8000円。量販店では同じ製品が17万8000円位で、15万円の開きがある。それでもヤマグチの客は買ってくれる。その秘密は「徹底した顧客サービスにある」。レコーダーのセッティングとか、買ってもらった電球の交換などは当たり前のサービス(「表サービス」)。ヤマグチでは「裏サービス」に注力している。営業担当者が車で回っている時、顔見知りのお客様に声をかけると、今から病院に行かれると言う。「それなら送りましょう」と車で病院まで送る。韓流ドラマなどを録画するために定期的にお客様の自宅にお邪魔する。「遠くの親戚より、近くのヤマグチ」とお客様から言われているとの事。社員の名刺には「でんかのヤマグチはトンデ行きます」とのモットーが書かれている。

単に「モットー」があるから社員も喜んでサービスを徹底できているのか?お客様のかゆいところを察知するための「気付きの力」がなければ、お客様に満足してもらえるサービスは出来ない。その力を養うために「お客様にしたことシート」を毎日作成することにしている。商談以外で、「お客様に自発的にして挙げた事」を書いて提出する。「雨どいを掃除した」「植木の枯枝を切った」「街灯の清掃をした」など、いろんな報告があると言う。このシートに毎日書くことによって、商品を売りこむ以外に「何をすればお客様に喜んでもらえるか」を自然に考えるようになったそうだ。

自社の商品を得ることだけに精力を注いでいる営業マンが、お客様からの信頼を得られるだろうか?これから、IT業界も、如何に安売り競争から脱皮し、お客様に求められ、喜ばれる付加価値競争、サービス競争に勝つかが問われる。「でんかのヤマグチ」と同じ考え方で成功している中小企業は数多くあると、坂本教授は多くの事例を紹介される。ぜひ、山口社長の連載記事に注目してほしい。