「経営改革4」カテゴリーアーカイブ

船井流経営法の神髄は「長所伸展法」!?

日本の経営コンサルティングの草分け的存在であり、コンサルティング会社として世界で初めて上場(1985年)を果たした船井総合研究所創業者・船井幸雄氏。今年1月肺炎で亡くなられたが、その傍らに仕え、4代目の社長として氏から船井総研を任された高嶋栄氏が、創業者から学んだ経営の要諦について話された記事が「致知2014/11号」に掲載されている。

タイトルは「経営者よ、企業経営に命を懸けよ」だったが、私が記事の中で特に興味を引いたのは「船井流経営法の神髄は“長所伸展法”」との言葉だった。日本のコンサルティング会社は10名未満の組織がほとんどの中で船井総研が約700名の規模まで成長したのは、船井幸雄氏の考え方をコンサルティングのベースに置き、その軸をブラさないからだと言いつつ、その真髄は“長所伸展法”との事だ。

コンサルティングの世界は、例えばMBAなど、外資系の手法が注入されやすい業界であり、そのアプローチ方法は短所改善、問題解決型だと言う。ますます競争が激しくなる中で、問題解決型で、ある問題解決が出来たとしても、他社を凌ぐ改善策になるのは難しい。それよりも、長所を、お客さまにとってピカッと光る魅力的なものにする方が近道との考え方だ。しかし、お客様の実態を分析すると山のように出てくる短所に、長所が埋もれていることが多いため、如何に長所を抽出するかが腕の見せ所と言う。

長所を伸ばすか、短所を克服するかの判断は難しいとは思うが、より難しいのは、長所を如何に見出すかだと思う。私も講演でよく言っているが、「自分あるいは部下の強み」はなかなか出てこないが、「欠点、短所」はいくつも出てくる。「自分の会社の強みは?」というより、「自分の会社の弱みは」の方が答えは出やすい。人はとかく欠点を見ることに慣れて、長所を見ることには慣れていない。意識して長所を見る、いわゆる「美点凝視」を人材育成のポイントと指摘される経営者が増えていると聞く。「長所伸展法」は、コンサルティングだけではなく、人の育成にも通ずる話と思うが如何?

日本はマーケティング後進国?

今朝の朝日新聞5面「波聞風問」に編集委員の加賀谷克彦氏が「マーケティング後進国~日本企業、より顧客目線で~」とのタイトルで記事を掲載されている。先週都内で開かれたマーケティングの世界大会で、マーケティングの権威である、米ノースウェスタン大学のフィリップ・コトラー教授による日本企業批評の厳しさを伝え、警告を発している。

「日本の企業は、消費者ニーズより自らの技術を重視しているようだ」とか「何かにとりつかれてように、いつも製品の改良に追われている。そこからイノベーションは生まれない」とのコトラー氏の発言だ。

大会のテーマは「21世紀型マーケティング」だったが、「日本はマーケティング後進国なのか?」という話題がたびたびなされたとの事だ。コトラー氏の定義は

企業の業績向上と顧客の満足の創造によって、人びとの生活の改善を目指す学問

と間口は広く、奥行きもある。日本では多くの企業が広告・宣伝・販売促進などの業務を言っているが、それでは十分ではない。専門家は

「日本の技術は優秀だ。だから1990年くらいまでは高機能、高性能だけで売れた。マーケティングは軽視され、その成功体験から抜け出せていない」「もう機能や性能だけで差別化するのは難しい。顧客が何を望んでいるかを踏まえ、新しい生活様式、感動も提案しなければいけない。でも顧客視点が欠けていたから出来なかった。」

と分析する。

大会では、顧客目線の成果例として、P&Gの紙おむつ「パンパース」とネスレ日本の「コーヒーマシンの企業への無償貸与」を挙げている。「パンパース」は最初「高い吸水性」を強調する宣伝を売ったが効果なく、そこで親のニーズを探った結果、「紙おむつをつけると赤ちゃんの眠りが深くなり、夜泣きが減る」と宣伝すると売り上げが増えた。ネスレ日本は、無償提供によってコーヒーを定期的に購入してもらうビジネスで成果を挙げた。マシン周りでのコミュニケーションの拡がり効果も評価を得たそうで、オフィス環境の変化を読み取ったマーケティングの成果と言う。

記事の最後に、一橋大学の神岡太郎教授の言葉を紹介している。

日本企業は、まず経営陣から、そして全社的に顧客ニーズを重く見る方向性を確認すべきだ」

前回、前々回に紹介した「コンシャスカンパニー」の一つ、ドッグフードのぺディグリーの事例も参考になる。最初は「水分を含んだ食品を缶に詰め、乾いた食品をバッグに入れて利益を出していただけ」のぺディグリーは世界でトップクラスのドッグフード企業だったが2004年頃業績は急降下、倒産も視野に入る位低迷していた。そこで自己分析を行い、自社の存在目的を見直した。2005年に「犬を愛する、犬のために存在する会社」と宣言し、犬や犬の幸福をすべての活動の中心に置いた。その後、強力なブランド力と安定した業績はもちろん、社員のモラルと愛社精神も大いに盛り上がり2009年には史上最高の利益を計上した。同社の犬に対する愛情の深さを犬の愛好家が認めた結果と言う。これも顧客視点の考え方で、自社の存在目的を見直した成果と言える。会社も社員も、今一度自らを見つめ直し、「顧客視点」の真の意味を見つけ出してほしい。

コンシャスカンパニーとは?(その2:顧客との信頼関係作り)

前回の続きとして、ステークホルダーの顧客に対する価値提供に関する印象的な話題を抜き出すことにする。

ジョン・マッキーの言う「ステークホルダー」とは、一般的に言う社員、顧客、投資家、パートナーに加え、コミュニティ、環境を加えている。これらすべてがコンシャスカンパニーでは「WINの6乗」になることを目指す。存在目的とコアバリューをベースにして、ステークホルダーがすべて相互に依存しながら結びつく。経営者の責任は、会社に合った人々を採用して十分に教育し、社員が豊かになり、生き生きと働ける環境を整備する事。社員の仕事はお客様を満足させ、喜ばせることだ。お客さまが満足すれば、ビジネスは成功し投資家は幸せになれる。そして投資家はそこで得た利益の一部を投資して会社が成長するという好循環を創りだす。

大半のコンシャスカンパニーは、自社の顧客または自社の社員のいずれかを最も重要なステークホルダーとみなしている。「顧客と社員は鳥の翼のようなもので両方ないと空を飛べない。二つは両立する」。しかし、時に社内では顧客を忘れ去る議論が多い。アマゾンのジェフ・ペゾスは次のように指摘する。「たいていの企業のミーティングには、もしかしたら重要かもしれない関係者が出席していない。それはお客さまだ。だから、私たちは会社の中にいるとついお客様の事を忘れてしまう」と。そこでペゾスは、会議を開催する場合には、だれも座っていない椅子を必ず用意し、参加者に顧客の存在を意識させるようにしたと言う。顧客を利益を得るための単なる手段と考えている企業は、顧客への共感も、サービスへの取り組みも、顧客ニーズの理解も、顧客の幸福を目的とする企業ほどに高くない。顧客は、だれかが自分の事を心から気遣ってくれていると、それに気付く

「顧客への価値の提供」とは、自社に都合の良い商業主義ではなく、顧客のニーズや欲求に歩調を合わせ、顧客が自分にとって良いものを欲しがるように仕向けること。顧客の本当のニーズ(それを顧客が明確には説明できなかったとしても)に結びついた販売は、高潔(heroic)と言っても良いほど価値の高いサービスになるかもしれない。時に顧客から頼まれたものだけを提供し、付加価値を高めるための今一歩の方法をとかく探そうとしない。この教訓を物語るものがある(ザ・コンテナ・ストアの創業者兼CEOキップ・ティンドルによる)。

この物語の主人公はもう何日も砂漠の中をさまよい歩き、ほとんど死にそうな状態になりながらも這うようにして何とかオアシスまで辿りつこうとしている。あなたはオアシスに住んでいて、この男を見つける。あなたならどうする?

たいていのビジネスマンはその男に駆けより1杯の水を差しだすだろう。そして「よく頑張ったね」と軽く背中を叩きながら、ああ、今日はよいことをした満足する。しかし、この男のためにもっと多くの事が出来る筈だ。熱中症か日射病にかかっている可能性があるかもしれない。防止と日焼け止めがいる。そして水分をもっと補給すべきだろう。その男の妻や家族に連絡し、無事を伝えたいのかも知れない。あなたが今していることは、砂漠で遭遇したこの見知らぬ男の多くのニーズを直感で知ろうとしている。当社の人間であれば、「砂漠にいたその男は数時間後にはマルガリータを飲みながらプールの中で泳ぐくらいでないと」と言うだろう。それだけ徹知的に面倒を見る。砂漠にいた男は、自分に施されたあらゆるもののお蔭でずっと幸せな気分になっている。これがいわゆる「高潔な販売」なのだ。

大抵の企業では「お客さま第一」とか「お客様のために」と理念や方針に掲げている。しかし、コンシャスカンパニーのように、全社員にそのマインドが徹底できておらず、行動に繋がっていないのではなかろうか?「リーマンショック」で「マネー資本主義」と揶揄されたアメリカにおいて、コンシャスカンパニーを謳う企業が出てきていることに驚く。日本企業もこのような動向を真剣に受け止め、国民にも信頼される意識の高い(コンシャスな)企業像を追い求めていくことが求められているのではなかろうか?経済優先で、地球温暖化問題などの地球的課題の先送りなどは決してあってはならない。