日本はマーケティング後進国?


今朝の朝日新聞5面「波聞風問」に編集委員の加賀谷克彦氏が「マーケティング後進国~日本企業、より顧客目線で~」とのタイトルで記事を掲載されている。先週都内で開かれたマーケティングの世界大会で、マーケティングの権威である、米ノースウェスタン大学のフィリップ・コトラー教授による日本企業批評の厳しさを伝え、警告を発している。

「日本の企業は、消費者ニーズより自らの技術を重視しているようだ」とか「何かにとりつかれてように、いつも製品の改良に追われている。そこからイノベーションは生まれない」とのコトラー氏の発言だ。

大会のテーマは「21世紀型マーケティング」だったが、「日本はマーケティング後進国なのか?」という話題がたびたびなされたとの事だ。コトラー氏の定義は

企業の業績向上と顧客の満足の創造によって、人びとの生活の改善を目指す学問

と間口は広く、奥行きもある。日本では多くの企業が広告・宣伝・販売促進などの業務を言っているが、それでは十分ではない。専門家は

「日本の技術は優秀だ。だから1990年くらいまでは高機能、高性能だけで売れた。マーケティングは軽視され、その成功体験から抜け出せていない」「もう機能や性能だけで差別化するのは難しい。顧客が何を望んでいるかを踏まえ、新しい生活様式、感動も提案しなければいけない。でも顧客視点が欠けていたから出来なかった。」

と分析する。

大会では、顧客目線の成果例として、P&Gの紙おむつ「パンパース」とネスレ日本の「コーヒーマシンの企業への無償貸与」を挙げている。「パンパース」は最初「高い吸水性」を強調する宣伝を売ったが効果なく、そこで親のニーズを探った結果、「紙おむつをつけると赤ちゃんの眠りが深くなり、夜泣きが減る」と宣伝すると売り上げが増えた。ネスレ日本は、無償提供によってコーヒーを定期的に購入してもらうビジネスで成果を挙げた。マシン周りでのコミュニケーションの拡がり効果も評価を得たそうで、オフィス環境の変化を読み取ったマーケティングの成果と言う。

記事の最後に、一橋大学の神岡太郎教授の言葉を紹介している。

日本企業は、まず経営陣から、そして全社的に顧客ニーズを重く見る方向性を確認すべきだ」

前回、前々回に紹介した「コンシャスカンパニー」の一つ、ドッグフードのぺディグリーの事例も参考になる。最初は「水分を含んだ食品を缶に詰め、乾いた食品をバッグに入れて利益を出していただけ」のぺディグリーは世界でトップクラスのドッグフード企業だったが2004年頃業績は急降下、倒産も視野に入る位低迷していた。そこで自己分析を行い、自社の存在目的を見直した。2005年に「犬を愛する、犬のために存在する会社」と宣言し、犬や犬の幸福をすべての活動の中心に置いた。その後、強力なブランド力と安定した業績はもちろん、社員のモラルと愛社精神も大いに盛り上がり2009年には史上最高の利益を計上した。同社の犬に対する愛情の深さを犬の愛好家が認めた結果と言う。これも顧客視点の考え方で、自社の存在目的を見直した成果と言える。会社も社員も、今一度自らを見つめ直し、「顧客視点」の真の意味を見つけ出してほしい。

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