コンシャスカンパニーとは?(その2:顧客との信頼関係作り)


前回の続きとして、ステークホルダーの顧客に対する価値提供に関する印象的な話題を抜き出すことにする。

ジョン・マッキーの言う「ステークホルダー」とは、一般的に言う社員、顧客、投資家、パートナーに加え、コミュニティ、環境を加えている。これらすべてがコンシャスカンパニーでは「WINの6乗」になることを目指す。存在目的とコアバリューをベースにして、ステークホルダーがすべて相互に依存しながら結びつく。経営者の責任は、会社に合った人々を採用して十分に教育し、社員が豊かになり、生き生きと働ける環境を整備する事。社員の仕事はお客様を満足させ、喜ばせることだ。お客さまが満足すれば、ビジネスは成功し投資家は幸せになれる。そして投資家はそこで得た利益の一部を投資して会社が成長するという好循環を創りだす。

大半のコンシャスカンパニーは、自社の顧客または自社の社員のいずれかを最も重要なステークホルダーとみなしている。「顧客と社員は鳥の翼のようなもので両方ないと空を飛べない。二つは両立する」。しかし、時に社内では顧客を忘れ去る議論が多い。アマゾンのジェフ・ペゾスは次のように指摘する。「たいていの企業のミーティングには、もしかしたら重要かもしれない関係者が出席していない。それはお客さまだ。だから、私たちは会社の中にいるとついお客様の事を忘れてしまう」と。そこでペゾスは、会議を開催する場合には、だれも座っていない椅子を必ず用意し、参加者に顧客の存在を意識させるようにしたと言う。顧客を利益を得るための単なる手段と考えている企業は、顧客への共感も、サービスへの取り組みも、顧客ニーズの理解も、顧客の幸福を目的とする企業ほどに高くない。顧客は、だれかが自分の事を心から気遣ってくれていると、それに気付く

「顧客への価値の提供」とは、自社に都合の良い商業主義ではなく、顧客のニーズや欲求に歩調を合わせ、顧客が自分にとって良いものを欲しがるように仕向けること。顧客の本当のニーズ(それを顧客が明確には説明できなかったとしても)に結びついた販売は、高潔(heroic)と言っても良いほど価値の高いサービスになるかもしれない。時に顧客から頼まれたものだけを提供し、付加価値を高めるための今一歩の方法をとかく探そうとしない。この教訓を物語るものがある(ザ・コンテナ・ストアの創業者兼CEOキップ・ティンドルによる)。

この物語の主人公はもう何日も砂漠の中をさまよい歩き、ほとんど死にそうな状態になりながらも這うようにして何とかオアシスまで辿りつこうとしている。あなたはオアシスに住んでいて、この男を見つける。あなたならどうする?

たいていのビジネスマンはその男に駆けより1杯の水を差しだすだろう。そして「よく頑張ったね」と軽く背中を叩きながら、ああ、今日はよいことをした満足する。しかし、この男のためにもっと多くの事が出来る筈だ。熱中症か日射病にかかっている可能性があるかもしれない。防止と日焼け止めがいる。そして水分をもっと補給すべきだろう。その男の妻や家族に連絡し、無事を伝えたいのかも知れない。あなたが今していることは、砂漠で遭遇したこの見知らぬ男の多くのニーズを直感で知ろうとしている。当社の人間であれば、「砂漠にいたその男は数時間後にはマルガリータを飲みながらプールの中で泳ぐくらいでないと」と言うだろう。それだけ徹知的に面倒を見る。砂漠にいた男は、自分に施されたあらゆるもののお蔭でずっと幸せな気分になっている。これがいわゆる「高潔な販売」なのだ。

大抵の企業では「お客さま第一」とか「お客様のために」と理念や方針に掲げている。しかし、コンシャスカンパニーのように、全社員にそのマインドが徹底できておらず、行動に繋がっていないのではなかろうか?「リーマンショック」で「マネー資本主義」と揶揄されたアメリカにおいて、コンシャスカンパニーを謳う企業が出てきていることに驚く。日本企業もこのような動向を真剣に受け止め、国民にも信頼される意識の高い(コンシャスな)企業像を追い求めていくことが求められているのではなかろうか?経済優先で、地球温暖化問題などの地球的課題の先送りなどは決してあってはならない。

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