「経営改革3」カテゴリーアーカイブ

IT業界の職場の実態調査結果、ほんと!?

この2月当ブログにUPした「助けて!組織風土改革にすがるIT業界(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2013/2/5)」の続編版が3月18日のITproに掲載されていた(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20130308/462061/?mle)。2月は、IT業界の組織風土に関するアンケート依頼が主だったが、その後セミナーなどでのアンケート結果と合せて971人の回答結果が出た、その集計結果である。この3月末発売の「日経情報ストラテジー5月号」に特集され、スコラ・コンサルトの柴田昌治氏とNTTデータ相談役の山下徹氏の対談記事もあると言う。

アンケートの設問を下記する。

  • Q1.同じ部門の社員同士であっても心に壁があり、会話や協力が出来ていない。同僚の事を、実はよく知らない
  • Q2.顧客(又はシステム利用部門)の厳しい要求に対応するため多忙を極め、周囲と相談したり、アドバイスしあう機会が大幅に減っている
  • Q3.メンタルヘルス不調の増加など、職場で何らかの問題が発生した場合、それを解決するためのチームを立ち上げたり、新たなルール・制度を設けるなど具体的な改善策を打っている
  • Q4.プロジェクトマネージメントの導入でスケジュールやコストの管理は厳しくなったものの、トラブルが発生した際の打開策は「長時間残業」であり、職場は疲弊しきっている
  • Q5.経営トップは「ソリューション提案力の強化」を掲げているが、そのために必要な人材育成策が整備されておらず、自身のスキル向上に不安を覚える
  • Q6.そもそも会社が「目指す姿」が見えない。会社の存在価値や仕事のやりがいを考えることをあきらめ、会社と一定の距離を置き、目の前の仕事をこなす日々が続いている

上記設問に対して「はい」と答えた比率が、Q1:48%、Q2:50%、Q3:26%、Q4:66%、Q5:74%、Q6:61%となっている。比率が想像以上に高い!母数が少ないので、何処までの信憑性があるのか分からないが、ITproの記事を読んだり、セミナーを受講している方がたはそれなりに問題意識がある人達と考えれば、ある程度の実態を表わしているとも考えられるのではなかろうか?

IT業界の置かれた立場を考えると、やはり由々しき問題である。こんな実態では、「お客様にとっていい仕事」が出来るわけがない。ITpro川俣記者は「職場全体の問題であって、誰かが変えてくれるのを待つだけではなく、自分なら何が出来るかを考え、小さなことでも変えてみるのが必要」と奮起を促している。特にQ5,Q6に関しては、理念を掲げるだけではなく、それを実行に移す施策が全社員に実感として受け止められる形に持っていくことが経営層に求められる。働く人たちの「幸せとは」を、真剣にみんなで考えて見る必要がありそうだ。そうでなければ、IT業界から優秀な人たちが逃げていく。

京セラのコンパ部屋

PRESIDENT2013.3.18号の特集は「直伝!‘人を育てる、人を動かす’バイブル 稲盛和夫の叱り方」だ。新聞でこのタイトルを見て買ってきた。JAL再生の過程において、官僚体質からの脱皮を進める稲盛氏周辺とJAL役員との確執を経ながら、意識改革が進むプロセスが書かれている。いろんな施策によって、稲盛氏の施策が浸透していくプロセスが面白い。それにしても、稲盛氏の指導を受けた著名な企業や経営者の多さに驚く。KDDI小野寺会長(何度も問われた「動機善なりや、私心なかりしか」)、ワタベウェディング渡部相談役(叱られ続けて40年、日本一になりました)、京セラ川村会長(減益決算時、迷いが消えた「理念を大切に」の一言)、平和堂夏原社長(暴動被害35億円!中国人に説いた「利他の心」)、中国ハイアール帳CEO(中国式アメーバ経営で、世界一の家電メーカーに)などなどの記事があり、稲盛氏の指導の重み、すごさを感じる。

その中で「無気力社員の8割をも戦力化するコンパ部屋」との京セラに関する記事がある。京セラでは、社員同士の飲み会を「コンパ」と言い、昔も今も変わらず重要視されている。京セラ本社(伏見区)ビルの12階に居酒屋の座敷のような100畳敷の和室がある。これがコンパルームだ。京セラのコンパはこの「和室」で鍋を囲むのが基本。食事の材料は社員食堂運営会社が割安で提供し、費用は全額個人負担。だいたい一人2000~3000円程度。幹部曰く「各組織が同じ目標に向かって、みんなの気持ちを一つにする行為がコンパです。普段の会議ではどうしても形式的な話に追われてしまう。お酒が入ると、人は本音で話しますから、腹を割って意見を交わす事が出来る」と。大半の工場にも畳敷きのンパルームがあり、八日市工場では昨年1年間に350回のコンパが実施されたそうだ。コンパでは圧倒的に仕事の話が多いが、病気や出張以外で欠席する社員はまずいない。上司と部下の意思疎通に使われたり、組織の壁を乗り越えるための交流、決起集会などに使われる。稲盛氏は「ただ面白おかしく、ただ酒をくらって己を忘れてしまうような、酒に飲まれるような酒は下の下」と言い、氏のフィロソフィーの中の「人生・仕事の結果=考え方x熱意x能力」(http://jasipa.jp/blog-entry/6637)の「考え方」をプラスの方向に向かわせて、「熱意」を引き出す役割が「コンパ」だという。

JALの再生に向けた活動の中でも、稲盛氏と役員が酌み交わす「コンパ」を実施したそうだ。最初は反発があったそうだが、川崎の安いホテルで、部屋の椅子とテーブルをどかして借りてきた畳を敷き詰め、夜8時から明け方4時まで延々と「コンパ」を実施したとか(そのホテルはいまは倒産してないそうだ)。特に大企業で、社長含む役員と一般社員が親しく話をする機会はまずないのではないだろうか(私が最初に入社した会社ではそんな場は想像だにできない)。どんな規模の会社でもやろうと思えば出来ることを京セラが示しているのではないだろうか。

はみだす人がイノベーションをおこす?!

今朝の日経の6面「活かす企業人」にクレディセゾン人事部長の武田雅子氏が投稿している。カード事業も厳しく、常にイノベーションが求められている状況の中での採用方法が面白い。求める人材像は、「常にクライアントオリエンティッドで活躍できる人。ルールの中でレールに乗る人ではなく、自分たちのやり方や過去の慣習、業界の常識をも超えて働ける人」という。そのような人材の見極め方がユニークだ。

入社希望者に、自分がどういうタイプかを設問に答えながらネット上で自己診断する「夢中力診断」を受けてもらう。これは社内で活躍している人を分析して「兄貴・姉御系」「切り込み隊長系」「異才オーラ系」「インテリガテン系」「こだわり職人系」「何とかします系」「メンバー思い系」の7タイプに分けているもの。こういう多様な個性を持つ夢中人が集まって熱く議論を戦わせたときにイノベーションと言う化学反応が起きるので、「夢中になれる力=夢中力」を重視しているとのことだ。選考の際、5人程でのグループワークを実施し、集団の中で主体的に動けるか、全体を意識出来ているかを見る。さらに最終面接では「自分が過去に成長したと思ったのはいつ?」と質問をし、自ら限界を決めず、目標の為には自分を変えられることを知っている人かどうか確認する。その行動に再現性があるかも含めて。

該社では、新人の80%が女性で、係長以上の役職者の約半数が女性とか。以前も紹介したがクレディセゾン林野宏社長が、昨年末にまた本を出版されている。「BQ~次代を生き抜く新しい能力」(プレジデント社、2012.12)で、この熾烈な競争の中で勝ち残るビジネスパーソンに必要なスキルは「BQ(Business Quotient)=ビジネス感度」と言う、従来からの主張を本にされたものだ(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/date/2011/6/2)。

時代時代に応じた会社が必要とする人材を定義する方策として、上記のような分類は非常に面白い。命名が楽しい。会社が求めている人材像をみんなで話題にしながら、己を知り、自分を変える目標つくりも出来る。「事業は人なり」と言いつつ、どんな人を求めているのか、社員に分かりやすく言っている会社は少ないのではなかろうか。