「組織・風土改革」カテゴリーアーカイブ

アンコンシャス・バイアスって?

昨年来、テレビで「アンコンシャス・バイアス」に関するニュースを何度か見た。気にはなっていたが、企業の人事関係者の多くがその研修に参加していると言うので、インターネットで調べてみた。
「女性活躍や外国人社員の増加など多様化した職場の壁となっているのが“アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)”です。“無意識の偏見”による間違った理解や思い込みを取り除く事が、職場でのダイバーシティ(多様性)を推進する鍵となります。」とある。さらには「学歴や年齢、性別、役職など力を持つ側が、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)にアンテナを立て、意識的に多様な人に向き合うことで、尊重され受容されている、と感じることができるのです。組織内でアンコンシャス・バイアスに意識を向けることは、職場の心理的安全性 を高め、組織と個人のパフォーマンスの向上に役立ちます。」とも。期待通り進んでいない女性活躍の推進、そして4月よりの外国人受け入れ拡大など労働力確保策を進めるうえでも、”無意識の偏見“の壁を克服することが重要課題だと思える。
グーグルでも、2013年から社内で「アンコンシャス・バイアスに関する研修」を実施しているそうだ。米国では、女性は労働力の半分を構成し,科学・技術・工学・数学(STEM)分野の職の約30%を担っているが、映画などで描かれる女性のSTEM従事者の比率は低すぎると言う問題提起がされているようだ。“Me Too”運動も同じ問題認識と思われる。島国でもある日本は、欧米に比しても”無意識の偏見“問題は立ち遅れている中、この対策は急がれるのではなかろうか。

NHKで紹介されたある企業での研修課題。部下に緊急の残業を依頼する際、誰に声をかけるかがテーマだ。選択肢は
①仕事のあとスポーツクラブに通う、独身男性、田中さん
②共働きで、保育園に通う子供がいる男性、鈴木さん
③育児休暇明けで、時短勤務の女性、山田さん
受講者の多くは①を選んだ。しかし田中さんは大事な試合に向けた最後の練習、鈴木さんは奥さんが海外出張中、山田さんは育児に協力的な両親と同居中。このような事実が分かるとだれを選ぶか、選択は違ってくる。無意識の偏見(先入観)が判断を左右することで、本人の意欲をそぐことにもなりかねない。

翻ってみると、私自身も”無意識の偏見“とは無関係ではないように思う。学歴とか、風貌とか、ちょっとした発言だけで人を判断することは避けるべしとの意思は持っていたものの、ほんとに出来たかどうかは自信がない。女性に対する対応も、優しさと勘違いしながら”無意識の偏見“に陥っていたのではないか。常に対話を心がけながら、本人の意向を正しくとらえながら判断することを心掛けておれば、もっと働く意欲に満ちた職場にすることが出来たのではと遅まきながら反省している。アンコンシャス・バイアスの気付きは、働き方改革にとっても大きな意味を持つものと思う。

涙活(るいかつ)って?

5月1日の日経記事ではじめて“涙活(るいかつ)”の言葉を知りました。インターネットで調べると1月にもNHKの朝番組「おはよう日本」でも取り上げられ、3月31日にはNHKの「生活情報ブログ」でも下記のように紹介されています。
映画などを見て泣いてしまったけれど、その後、何となくすっきりしたという経験、ありませんか?すっきりしたい、日頃のストレスを解消したいという人たちが集まり、映画や音楽などを鑑賞して涙を流そうという活動、略して「涙活」が、今、注目されています。
別のインターネット情報では、”涙活“とは、能動的に泣くことでストレス解消を図る活動とある。離婚式プランナーの寺井広樹氏の提唱と言うのも面白い。人間の自律神経は涙を流すことにより、緊張や興奮を促す交感神経が優位な状態から、リラックスや安静を促す副交感神経が優位な状態に変化する。よって、たくさん涙を流すほど、ストレスが解消し、心の混乱や怒り、敵意も改善されるという。ただし、ストレス解消に効果があるのは、感動などによる涙だ。
5月1日の日経の記事のタイトルは「”涙活“で連帯感、自由に働き育児と両立」だ。記事によると、寺井氏が2015年に企業に涙活の講師を派遣するサービス「イケメソ宅泣便「を始めてから年3、4割のペースで受注が増えているそうだ。このサービスを使ったIT企業が紹介されている。ネット事業のアジャストでは感動を共有することで連帯感が高まったという。参加者(女性)からは「以前より同僚とお互いに助け合うようになった」との声が聞かれる。

以前「暗闇体験でつながろう」とのタイトルで「非営利活動法人ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)」の活動を紹介した(http://okinaka.jasipa.jp/archives/460)。世界的に人気を博している研修だそうだが、「参加者は完全に光を遮断した空間の中へ、グループを組んで入り、暗闇のエキスパートであるアテンド(視覚障害者)のサポートのもと、中を探検し、様々なシーンを体験」とある。これもコミュニケーションの改善を図る試みだ。

スマートフォンなどの普及で、コミュニケーション危機や、相手を思いやる気持ちの薄れなど時代の変化とはいえ、懸念する人は多い。「働き方改革」が叫ばれているが、残業を減らすことだけではなく、チームとして働きやすい職場つくり、信頼しあえる仲間つくりも重要な課題だ。そのための世の中のいろんな取り組みを評価し、積極的にチャレンジしていくことも必要ではないだろうか。

現場の共感が不正を防ぐ!(日経コラム)

1月15日の日経朝刊5面のコラム「経営の視点」の記事に目が留まった。編集委員塩田宏之氏の記事だ。タイトルは「現場の共感、不正防ぐ~稲盛氏が誉めた”2000円節約“」。
最近の品質データ不正などの問題が、経営者(社長など)と社員との意思疎通、信頼関係不足にも大きな原因があるとの懸念を指摘する。
事例として、京セラ、クボタ、積水ハウスの経営トップの施策を紹介しながら、「経営者への共感があれば社員も発奮し、飛躍や革新をもたらすかもしれない」とし、「面従腹背は、飛躍や革新どころか、不正や隠ぺいが起きかねない」と警告する。
京セラの稲盛氏は、工場など現場に赴く、社員に感謝する、コンパを開いて杯を交わす、など、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」との経営理念を自ら実践するためにも社員とのコミュニケーションに注力した。再建を任された日本航空でも同じで、エピソードとして下記のようなことを紹介している。「伊丹空港視察時、カウンター勤務の若い女性社員が月2千円のコスト削減を説明した。金額の少なさに周囲は困惑したが、稲盛氏は“そういう努力が一番重要なんだ”と大いに誉めた。この件はメールで部署を超えて広まった。」(京セラのコンパ部屋に関しては、私のブログでも紹介している。HTTP://OKINAKA.JASIPA.JP/ARCHIVES/382)
クボタでは、社員約1万1千人の自宅に毎年、バースデーカードが届く。それには木俣社長の顔写真と手書きのメッセージが印刷されている。課長時代、事故やけがの多さに悩み、「ケガするなよ」と誕生日を迎えた社員一人一人に声をかけていたらピタッと止まったという。海外含めて、現場にも頻繁に出向き、その際は「ゆっくり暇そうに歩く」ことがコツだとか。社員が話しかけやすいように。
積水ハウスの和田会長は月1回、店長など次世代を担う現場のリーダーら約80人を集めて「希望塾」を開いている。3時間ほど経営ビジョンや体験談を語り、その後社員が感想や意見を述べる。和田会長曰く「インターネットの時代になっても、顔を突き合わせて心を通わせる人間関係が重要」と。
一般企業では、一般社員から見れば、「社長は雲の上の人」で、“話しかける”、あるいは“話しかけてもらえる”なんてことは想像できない存在であることが多い。社員からは社長を遠い人と見て、社長は社員を(希望も交えて)近い存在であると信じたい。そのような関係の中で、実際、社長は近い存在であり、我々のことを考えてくれていると一般社員に思ってもらえることが、信頼関係構築への第一歩とも言えるのではないだろうか。社員が熱意をもって仕事にあたることが出来る環境つくりが、「人づくり革命」の基本と心得たい。