「日本の課題2014」カテゴリーアーカイブ

イケアが日本の人事制度に一石!

8月3日の日経朝刊10面「日曜に考える」(中外時評)の「週12時間の正社員~日本社会にイケアが一石」(論説副委員長水野裕司)に目が止まった。イケアは当ブログでも、企業理念「より快適な毎日を、より多くの方々に」やその理念に基づく10か条の「IKEA Value」を紹介しCo-Partnerの育成に注力している姿に感銘を受けた事を述べた(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/entry/7728)。「世界でいちばん大切にしたい会社」(翔泳社)にもイケアは登場している(http://okinaka.jasipa.jp/archives/1152)。

大学で心理学を勉強したイケア・ジャパンのピーター・リスト社長は、いろんな仕事を通じ学んだのは「人のモチベーションを如何にして高め、上手に成長させるか」ということ。その方向に沿って「どんな会社にすればいいか」を考え、「性別、年齢、国籍などを問わず、そして正規社員、非正規社員の区別もなく、自分の力を発揮出来たり新しいスキルを習得出来たりする、誰にでも成長できる機会の平等があること」、「子育て、介護などに時間を割くことになっても、安心して長く働き続けられる環境が必要」との結論を得た。そしてこの9月から、その理念に沿っての下記新制度を実施することにしたそうだ。

  1. パート社員全員に正社員の人事制度を適用する

・職位や担当業務ごとに正社員の賃金を時給に換算して、ポストや    仕事の業務が同じならパート社員にも正社員と同じ賃金を支払う。

・正社員と同じようにポストや報酬が上がる

・パート社員と正社員の区分けを廃止するため、呼称を「コワーカー(共に働く人)に統一する

2.柔軟な労働時間制度を新設する

・1週間の勤務時間を12~24時間、25~38時間、39時間(フルタイム)の3つから選べる。結果として今週は12時間、来週は20時間などと働く時間を調節できる。育児・介護や資格取得などで労働時間を短縮したい場合に利用可能となる。(現在正社員は40時間のフルタイム勤務。)

3.パート社員も含めて、各人の生産性向上のため、全員と上司が面談し職務遂行能力の確認や、新しいスキル習得の目標設定などを進めている。

イケヤ・ジャパンでは、約3400人が働き、その7割がパート社員。「誰にでも、そして人生のどんな局面でも、働くことを通じて成長と自己実現の機会がある。人が育てば組織も強くなる。」そんな会社を目指す。

「パート社員にとって正社員と同じ成長機会を得るにはハードルもあるが、それを乗り越えてこそ新しい風景が開ける。イケア・ジャパンの改革は、正社員と非正規社員の二極化が進み、正社員の長時間労働が女性の活躍を阻む中で示唆に富む。」と編集子水野氏は言う。

イケア・ジャパンの改革は、政府の成長戦略の目玉である「女性の活躍促進」と「非正規社員問題」「労働生産性向上」など日本の課題に対する一つの提案でもある。果敢な挑戦とも言えるが、その成果を期待したい。

「花まる学習会」に熱い視線が・・・

「平成5年以降、埼玉県や東京都を中心に展開する学習塾・花まる学習会に、いま全国から熱い視線が送られている。他の学習塾とは一線を画す独自の教育法を武器に、逞しい子供たちを育てたいとの一心で懸命に走り続ける高濱正伸代表」。これは「致知2014.8」インタビュー記事「その瞬間を逃さない(花まる学習会代表高濱正伸)」のリード文だ。

現在埼玉県や東京都を中心に、4歳から15歳までの生徒数が約1万7千名にのぼり、どの教室も人気でキャンセル待ちも出ていると言う。そもそも「花まる学習会」を開くことになった経緯を高濱氏は語る。「中堅の予備校の教師をやっている時、試験の点数を挙げることに終始していて、リーダーシップを執る力もなく、生命力も弱い、飯を食えない大人を量産しているのではないかと言うことに気付いた。いてもたってもいられず、33歳の時に設立、自分が子供たちを自律させる教育をやり、公立の学校に影響力を及ぼしていこうと考えたのが発端」と。それでは、高濱代表の目指す教育とは・・・。

10歳目での教育で力を入れているのは、「人間の土台作り」。知識偏重ではなく、子供たちが主体的に考える力を伸ばす教育に力を入れている。例えば、高濱氏が考案したゲームやクイズなどを算数の指導に取り入れ、ほんとに納得いくまで食い下がり、自分で解くことにこだわる「しつこさ」を養成する。

もう一つは「人間関係の力を育てる」こと。今の教育は事なかれ主義で、子供たちにトラブルが起きないように動いている。成功体験はともかく、友達とけんかするなど苦い体験も自立のためにはものすごく大切。その実践の場として野外体験がある。サマースクールでは、魚つかみ、虫取り、夜の探検、滝壺への飛び込みなど、思い切り遊ばせる。こんな遊びの中で、いろんな工夫をし、危険を予知する力も磨く。このような体験で一番伸びるのは人間関係の力と言う。申し込み受付時に考慮するのは、全員が初対面だということ。そしてお母さんには予めトラブルが起こること前提で参加申し込みを受け付けている。泣きながら家に帰ったり、時には怪我をして帰ることも有るが、お母さんからのクレームはこれまでゼロ。講師は、子供たちを眺めていて、子供達の何らかの挙動を捉えたときにどう反応してやるかで、子どもたちの自信につながる。野外体験ではそんな瞬間が数多く起こる。

高濱代表が常日ごろ大事にしているのが母親との関係作りだ。核家族化が進み、お母さんは子供の事に関しても相談する相手もおらず孤独だと高濱氏は言う。イライラの矛先がどうしても子供になってしまう。そこで、お母さんの不安の受け皿になる決意で、お母さん相手に講演会をかなりやっていると言う。其の場で声掛けをすると、お母さんはホッとする。そんなお母さんが花まる学習会を応援してくれる。

今年の春から、佐賀県武雄市と協力して本格的に公立学校の教育に関わることになったそうだ。高濱氏の夢の第一歩だと思うが、先般「子ども・若者白書」について述べた(http://okinaka.jasipa.jp/archives/1310)が、大人になっても飯が食える子供たちの育成に国としても真剣な取り組みが求められる。人口減必至の中で、子どもたちの育成は日本の大きな課題だ。

自給率向上のためにも和食を見直そう!

「食乱れて国家滅びる~日本の伝統食こそ国の生命線だ~」の当ブログ記事で紹介(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/entry/9055)した小泉武夫氏が「食と日本人の知恵」(岩波書店。2002.1)と言う本を出版されている。少し前NHKの番組で、一番の安全保障対策は「食料自給率を挙げること」との話があったが、小泉氏が主張されていることでもある。その番組で、戦後の米国の日本占領時代(6年8ヵ月)、米国で小麦が大量に余っていたことから、その消化のために日本にパン食が初めて導入されたそうだ。特に学校給食などに導入されたことで、飛躍的に家庭に普及したということだ。小麦を大量に消費している限り日本の食料自給率は高まらないこともあるが、日本食が健康のためにも世界的に見直されている(http://blog.jolls.jp/jasipa/nsd/entry/8024)ことから京都の小学校などでは給食に日本食を取り入れる試みを始めているそうだ。

昨年12月に和食が「ユネスコ文化遺産」に登録された。和食を無形文化遺産にしたいと最初に考えたのは、京都の料理人たちだったそうだ。子どもたちに食材や料理の知識を伝える「食育」の活動の中で、日本の伝統的な料理を知らない子どもが多くいることに気づき「このままでは和食が滅ぶ」。そんな危機感から、無形文化遺産に登録して保護しようと、政府に働きかけ始めたとの事。世界遺産登録をきっかけに、和食の普及に政府も力を入れようとしている。地域の食文化を伝える「食育」の活動をさらに広げていくことや、食文化を学び、多くの人に伝える人を育てるなどの活動が始まっている。その日本食に関する先人の驚くべき智恵に関して、小泉氏は書いている。

牛蒡(ごぼう)」は日本人だけが食べる。栄養源にはならないが腸内清掃や、腐敗菌の増殖防止に役立つものだ。「こんにゃく」も腸管の清掃役だ。

塩辛」は日本人のどん欲なまでの魚の利用法(無駄をなくす)と美的追求心から生まれた知恵。鰹(かつお)の腸を利用した「酒盗(しゅとう)」、ナマコの腸から「海鼠腸(このわた)」、アユの腸や卵から「うるか」、イカの腸から「白づくり」や「黒づくり」など。

徳川家康は魚が大好物で、江戸城に入城した際、摂津の国の佃村名主らを呼び寄せ今の佃島で漁業を興させた。大きな魚は献上し、小雑魚は自家用にして保存食品を作った。それが「江戸名物・佃煮」となって拡がった。佃煮は材料を限定しないため、その土地の特産物を佃煮にしてしまう。金沢では「ゴリと胡桃」、山形の「鯉」、静岡の「ウナギ」、桑名の「ハマグリ」、富山の「ホタルイカ」、岡山の「穴子」。広島の「昆布、のり、小鯛」など枚挙にいとまなし。日本列島は隅から隅まで佃煮王国。

私も朝はパン食が普通になってしまった。ホテルに泊まった時は朝食は和食にしているが、一汁三菜も見直したいと思う。