「日本の課題」カテゴリーアーカイブ

”ポテサラ””が問う家庭の姿(日経)

8月5日の日経朝刊6面Opinion中外時評に「“ポテサラ”が問う家庭の姿」との論説委員辻本浩子氏の記事に目が留まった。というか「ポテサラ」と言う聞いたことのない言葉に引かれたというのが正しい。

“ポテサラ”とは7月にネット上で話題になった”ポテサラ論争“で、きっかけは

幼児を連れて買い物中の女性が、総菜コーナーでポテトサラダを手に取ったとき、高齢男性が「母親ならポテトサラダ位つくったらどうだ」と言い、女性がうつむく

と言う内容だ。近くにいた人が女性を応援する趣旨で投稿するとあっという間に拡散したそうだ。約30万の“いいね”があったとか。身近なテーマで同じ思いをした人が多いからこそ話題になったのではと辻本氏は言う。

ポテトサラダはシンプルに見えて結構手間のかかる料理であり、特に”母親なら作れ“との女性に対する上から目線の価値観の押し付けが問題だと言う。

7月末に出た男女共同参画白書のデータが紹介されている。働く男女の、仕事のある日の家事時間を比べたものだ。独身時代は男女とも家事の時間はほぼ同じだが、結婚すると女性が男性の2.6倍になる。子供が生まれると2.8~3.6倍にまで差が広がる。

コロナ禍で在宅勤務が増え夫婦ともに家で働くケースも出てきて、これまで潜在化していた夫婦間の不均衡が目にもさらされている。コロナ禍を機に家事・育児の分担を工夫したと言う人は約3割いたそうだ(内閣府調査)。多いとは言えないが変化は生じつつある。男性の長時間労働抑制など、男性の分担をより増やすには働きかた改革も必要となる。

2019年の男女平等度調査でも世界153か国の中で121位と下位に低迷している。政府の目標であった女性管理職比率30%(2020年)も大きく未達成で、仕切り直しとなった。コロナ対策で評価を挙げたドイツ、ニュージーランドの宰相は女性だ。諸外国では、重要ポストで活躍する女性も数多く顔を出す。日本では、政治の世界や財界の要職の女性比率も圧倒的に低い。これからの人口減少に備え、女性活躍の推進は不可欠だ。女性の家事・育児負担を男女平等にし、女性の能力を最大限活用できる社会を実現させるため、男性の意識改革も急がねばならない。

私ことだが、退職して家事の大変さが良くわかった。先述の内閣府調査でも、献立を考えるのも「妻」、「どちらかと言うと妻」が8割以上と言う結果が出ている。しかし、今更分担を変えると言うのも躊躇する自分がいる。料理実習講座を受けたが、いまだに料理は献立を考えるのも含めて家内の仕事だ。「女性活躍推進」は日本の将来の重要課題だが、どうやったらいいのか、皆さんはどう考えますか?

介護職にもっとリスペクトを!

7月に入り、コロナウィルス感染も落ち着く事を期待していたが、期待通りには行かないようだ。何か月もの間、医療関係者皆さんの命を懸けた献身的なご尽力にはほんとに頭が下がり、国民すべての人が敬意を表している。その一方で、介護にあたる方々は、政府、メディアともに医療関係者に比しては注目度が少ないように感じる。

「介護職にリスペクトを」との題で朝日新聞の”オピニオン&フォーラム“に大阪健康福祉短大の川口啓子教授が投稿されている(6月3日)。団塊世代が大量に後期高齢者になる時代を迎えるに当たって、国としても、企業としても、個人としても、切実な問題であることから、ブログで取り上げることにした。

川口氏は「今でも現場は絶対的な介護士不足にあえいでいる。根底には、介護と言う仕事に対する”無意識で悪意のない見下しがあるのではないか。誰もがみんな年を取る。いずれ世話になる人たちへのリスペクト(敬意)は足りてますか?」と問題提起する。
政府は、65歳以上の高齢者がピークを迎える2040年度には、介護職を100万人以上増やす必要があると試算している。が少子化で労働者が600万人以上減ることが予想される中、介護職に対する偏見もあって、今でも介護人材養成施設の学生はどんどん減り、入学者数はいまでは定員の半分にも満たない状況(専門学校や短大などの数は08~18年の10年で20%近く減った)を考えると増員は全く困難な状況らしい(文科省は定員割れの養成施設は縮小または閉科するよう指導)。なぜ、需要はあるのに、希望者が増えないのか?
介護職を見下す世間の風潮が加速しているのではと指摘し、介護職に対して「簡単、単純。誰でもできる、学歴もいらないつまらない労働」との思い込みがあるように感じる」と言う。国が昨年改正した“入管法”に関して一部報道で「単純労働に門戸を開いた」との表現で、介護も対象業種に挙げられたが、まさにこれが世間の認識(ネットでは底辺職とも)と言う。このような認識であるため、なりたい職業ランキングにも登場せず、志望者もいない状況が加速し、大学にも介護福祉養成課程はほとんどないそうだ。不愉快な事例として、おむつを交換している介護ヘルパーが利用者に「こんなきたない仕事、娘や孫にさせられないわ」と言われ悔しい思いをしたことが挙げられている、この利用者も悪気がなく、感謝の言葉も口にするそうだが、明らかにヘルパーの仕事を見下している。
家内の母が近くの老人ホームでお世話になっている。92歳で、いたって体は元気だが、目が見えにくくなり、部屋でも物をどこにおいたか分からず、ヘルパーさんを困らせることがある。しかし、ヘルパーさんは、怒ることもなく母に親切に対応してくれる。
川口氏は、どんなことを言われても、つらくても、高齢者の声に耳を傾け、心を開かせるまでに至る行為に介護の専門性を備えた実践力が必須と言う。食事介助などいろんな局面でケアされる側のストレスを知ることも必要となる。
今の若い人たちも、いずれ両親がお世話になる時、あるいは自分の老後について、介護サービスが滞りなく提供されるなんて夢物語を描いているのではとの疑念も持つ。介護の現実に出くわしたとき、その大変さは分かる。
川口氏は最後に「介護職が不足する中、家族介護はまだまだ続く。そこで不可欠なのは愛情でも根性でもなく知識だ。老いを知り、ケアを学ぶ、それは要介護を忌避することなく、老いを肯定的に受け入れる社会のインフラとなる。そのインフラが介護の担い手をはぐくむ土壌になる」と締める。

コロナ禍で医療崩壊が大きくクローズアップされた。団塊世代が高齢化するにともない、今のままでは介護崩壊が起こるのではと危惧される。もっと介護職の重要性と、そのスキルに焦点を当て、相応の処遇をすることで官民あげての対応が望まれる。でなければ、家族介護が増え、ますます介護離職を誘発し労働人口もさらに減らすことにつながりかねない。
「介護職に是非ともリスペクトを!」が切実な思いだ。

ここまで書いて、今朝(7月6日)の日経を見ると「新状態での介護 仕事とどう両立」の記事があった。コロナ禍でデイサービスが停止したりして、苦労している方々や企業の取組が紹介されている。政府は2017年“ニッポン1億総活躍プラン”で20年代初頭までの「介護離職ゼロ」を目標に掲げたが、2018年で10万人近くの介護離職者(うち女性が8万人近い)との厚生省の調査があるとの事。そして介護を理由とする離職者は要職に就き始める40代以降の数値が高いそうだ。企業としても頭の痛い問題だが避けては通れない。

新しい年を迎え想うこと

令和初のお正月は天気も良く、のどかなものだった。暮れに息子の家族と共に、8人で1泊2日の伊豆旅行を楽しんだ。年に1~2回家族全員が集まって親睦を深めることにしている。末永くみんなが仲良く幸せに過ごせることを願ってのことだ。
すがすがしい天候とは裏腹に、世間は騒々しい。昨年来の”桜を見る会”の騒ぎ、IR疑惑に続き、ゴーン被告のドラマよりも奇異な逃亡劇、米国によるイランの司令官殺戮に伴う中東危機など、信じられないことが起こっている。
今年は、1964年以来56年ぶりのオリンピック、パラリンピックが東京で開催される、我が国にとって記念すべき年明けなのに、政治・経済共に波乱の幕開けだ。明るいニュース、出来事を探すのに苦労する。天皇陛下、皇后陛下の国民目線での思いと行動にほっとする。
それにしても、世界的に経済はグローバル化が進むも、政治の世界は保守主義へ傾斜(自国ファースト)しているため、国家間の軋轢が増し、国際的な機関(国連、NATO,WTOなどなど)が機能しなくなってきているのが心配だ。令和時代も、平成に続いて戦争のないことを祈るばかりだ。
国内政治に目をやると、相も変わらず国会議員の不祥事で、政策論争が停滞している。長く続く1強体制の中での与党の傲慢さ、野党のふがいなさに政治不信が募っている。“将来の世代に安心して引き継げる社会作り”のために向こう10年が非常に重要な意味を持つと言われている。世界的には”気候温暖化“などであり、国内では”少子高齢化“に伴う持続可能な経済・財政、社会保障施策改革などだ。ここで失敗すると、地球は破滅に向かって進まねばならないと言われ始めた。こんな時に、選良であるはずの政治家自身のあきれるばかりの不祥事に時間を取られている。野党を非難する人もあるが、まずは不祥事を起こす議員を咎めるべきとは思う。しかし、一方で、野党は重要課題目白押しの中で、長期的な国民目線の施策を打ち出し、国民の理解を得る最大のチャンスと今を捉えるべきではなかろうか。
このままでは、政治に対するあきらめの気持ちが高まり、国会議員を選ぶ選挙の投票率がますます低下することになり、支持率ガ50%以下なのに議席数は70%以上という(全有権者に対する自民党支持者は20%前後)、まさに民主主義の危機ともいえる状態が続いている。このような状態を打破するために、政治にも危機感を与えるために、選挙における比例代表当選者の数を投票率と連携させ、残りを別の選び方にする方策を提案し、活動する人もいる。議員も必死で投票率を上げるための行動を起こすことになると思われるが、今の所、破天荒な施策と受け取られているそうだ。
本によると、デンマークでは選挙の投票率は80%を切ったことがないそうだ。出産費用から葬儀代まで国家が負担し、「消費税25%で世界一幸せな国」とも言われている。学校教育も含めて、国民は「国家を愛しているがために行動もする」、「選ぶに足らない人がおれば、自ら立候補する」ともいう。国家と国民の間にまともな信頼がある。政治家は大学や高校でも政策討論会を行い若者も積極的に政治活動に参加しているそうだ。スウェーデンのグレタ・トウィンベリさんのような人が出てくる素地はあるということらしい。
今、日本も孫やひ孫の時代までもより良い日本が続けられるよう、今の若い人たちにも政治に深い関心を持ってほしいと切に思う。
悲観的な話になっていしまったが、今年こそ未来に展望が開ける日本、世界になるよう、日本を愛する一人として願いつつ、自分に何ができるか考えたい。