2月末にイベントの休止や、小・中・高校の全国一斉休校要請が突然出され、国全体に緊張感が高まった。そして3月の3連休前に、春休み明けの学校再開が報じられ、3連休は外出規制の動きが緩み、その結果現在の感染者急増につながったと言われている。
如何に政府や自治体の自粛要請を実効あるものにするか、そのための方策とは?
遅ればせながら政府が今日「異常事態宣言」を発出することになった。経済への影響を考えて政府は躊躇していたが、一部の都府県の感染者急増に伴う世間からの要求に抗せず、発出に至ったとも言われる。これで国民の外出規制などの意識改革がなされ、オーバーシュートを回避できることを期待したい。
昨夜、東京都の小池知事が国の「異常事態宣言」発出を前に都としての取組を記者会見で発表した。その中に下記のような発言があった。
今回の法律に基づく徹底した外出の自粛の要請でありますけれども、皆様ご自身を守るためです。そして家族を守るため、大切な人を守るため、そして私たちが生活するこの社会を守るためです。
昨日(4月6日)の日経朝刊の連載記事「核心」に掲載の「社会の免疫力を高めよう~“利他性”が行動変化促す」の記事に注目した。今回のコロナウィルスの目に見えない脅威に対する対処策として、耐性の強い社会を作るための市民一人ひとりの行動変容に関して興味ある提言をしている。
事例として、広島県での水害を取り上げている。2014年夏の豪雨で土砂災害が起こり77人を亡くした。その教訓を受けて県民ぐるみの防災運動を展開、非常品の持ち出し品の準備や避難場所を事前に確認した県民の割合は大幅に増えた。ところが4年後の2018年の夏の豪雨で149人が犠牲に。知識や備えはあっても、いざと言う時に行動に踏み出せる人は少数で、避難観光や指示が出た地域で避難所に逃げた人は0.74%にとどまった。「自分は関係ない」「今すぐ避難しなくても大丈夫」というバイアスが妨げになって、危険な場所に多くの人が居続けたのだ。このように自分に都合の悪い情報を過少に評価するバイアスを社会心理学では「正常性バイアス」と呼ぶそうだ。
広島県では行動経済学専門の大阪大学の大竹教授の力を借り、行動変容を促すキーワードが「利他性」であることを突き止めた。県民に下記3つの呼びかけに対して避難するかどうかを問うた。
A. これまで豪雨で避難した人は周りの人が避難していたからという人がほとんどです。貴方の非難は周りの人の命を救います。
B. これまで豪雨で避難した人は周りの人が避難していたからという人がほとんどです。貴方が避難しないと人の命を危険にさらします。
C. 広島県では夏場に土佐崩れが発生しています。危険が迫ったときに正しく判断できる力をつけ、災害から命を守りましょう。
結果はA,Bの呼びかけで避難すると答えた人は40%近く。Cで避難すると答えた人は20%強だった。つまり、自分だけではなく他人のためにもなると言う「利他性」を軸にしたメッセージのほうがはるかに効き目があった。
小池知事の記者会見を挙げたのは、「家族や、周囲の人を助けるために外出を控えてほしい」とのメッセージの意味合いは大きいとの意思を込めてのことだ。前述の大竹教授はコロナに関する政府の専門家会議のメンバーでもある。感染しても症状が軽く済むことの多い若者に対して「あなたが“3密”の状態を避けることが周囲の人の命を助けます」、「あなたの軽率な行動が周りのひとの命を危険にさらします」のようなメッセージが必要かもしれないとする。
当ブログでも、(日本人の誇り「利他的遺伝子」)https://jasipa.jp/okinaka/archives/9339を紹介した。日本では海外のような都市封鎖(ロックダウン)は出来ないと言う。この際、「異常事態宣言」を契機に、日本人の特質“利他性”に訴え、感染者急増を抑制し早い時期に終息できるよう、皆さん、不要不急の外出抑制を心掛けましょう!周囲の人を救うため!