テレビを見ていると、今「昆虫食がヨーロッパなどで人気が出始めている」と報じられ、さなぎやコウロギなどが食卓に並ぶ姿を見て、ギョットした。昔、“イナゴ”を炒って食べたことを思い出すが、現在のように食材が豊富な時に「なぜ昆虫を」と疑問に思い、インターネットなどで調べてみた。
欧州で昆虫食が話題に上り始めたのは5~10年前。国連食料農業機関(FAO)が2013年、食の安全保障に絡め、昆虫食の可能性を強調した報告書を発表。世界の人口増加で新たな牧畜場所の確保は困難となり、漁業資源も枯渇すると指摘。気候変動や降水量の減少で食糧生産が難しくなるとの危機感を示した。FAOによると、牛肉1キロの生産に必要な水が2万2000リットル、豚肉が3500リットルに対し、昆虫は10リットル程度でえさも少なくて済む。さらに牛は”ゲップ”時にメタンガスを出す。栄養面でも、牛肉に比べ、たんぱく質は9割あり、アミノ酸の一部は上回るそうだ。先日国連の温暖化抑制会議開催時小泉大臣がステーキを食べたことが話題になったのを思い出す。
世界を見てみると、フィンランドのヘルシンキでは、スーパーにコオロギ商品がスナック菓子棚に並び、ほぼ売り切れていたと。フィンランドでは、コオロギ農家が約50軒、企業6社がすでにあると言う。フランス・パリでも昆虫を混ぜたハンバーガーが、試験販売では500個が5分で完売したとか。タイではコオロギの養殖工場があり、月16トンのコオロギを生産し、欧州、オーストラリア、北米などに輸出していると言う。
日本では、どうだろうか?信州では、イナゴのつくだ煮や、蜂の子など、昆虫食が昔から根付いており、スーパーでも売られているそうだ。FAOの報告書以後、日本でも昆虫食に対する関心が増え、昆虫食に関するNPO法人への要望が増え、あちこちで、昆虫食に関する講演会や、学習会を開いている。すでに、昆虫食を生産、販売する店も全国で増えている。京都で、コオロギの粉末を混ぜたお菓子を販売する”バグモ“(2018,11販売開始)、徳島大発のベンチャー「大学シーズ研究所」も18年12月に、コオロギ約30匹分の粉末を練り込んだパンを発売した。大阪国際大では毎年の「防災フェスタ」でイナゴなどを使ったクッキーを提供している。熊本市では18年11月、風船専門店「ディスカバー バルーン」に食用のカブトムシなどを買える自動販売機が登場し、毎月数百個と予想以上の売れ行きとなっている。
現在、世界人口70億人が、30年後には100億人に増える。今でも、温暖化で、うなぎ、サンマなどが減少するとともに、中国の食糧事情の変化で、マグロの供給量に限界が生じつつある。牧場面積も限界を迎えつつある状況の中で、肉や魚に変わる食材として、栄養素に富む昆虫が注目されるのは時代の趨勢かもしれない。50年、100年後には昆虫食が当たり前の世界になっているかもしれない。