人を大切にする経営(日本レーザー)


以前、「致知」の記事の紹介で「人を大切にする経営で見事再建!(日本レーザー)」とのタイトルで日本レーザーを紹介した(http://okinaka.jasipa.jp/archives/3075)。PHP出版の雑誌「衆知(旧松下幸之助塾)」2017.1-2月号にも、松下幸之助塾での講義録として、「責任はすべて社長にあり~信念と覚悟で実践する“社員を大切にする会社”~」のタイトルで日本レーザーが紹介されている。「致知」と「衆知」双方で掲載される会社が多いのは人間学と経営学に共通するものがあるということだろう
1994年に日本電子から子会社の「日本レーザー」に社長として出向し、就任2年目で債務超過の会社を黒字化。その後23年間、一切のリストラなしに黒字を達成し、維持し続けている。平成23年に「日本で一番大切にしたい会社大賞」の企業庁長官賞など、名誉ある表彰を軒並み受けている。その人とは、近藤宜之氏だ。前回のブログと重複するところもあるが、特に親会社からの独立も含めて、経営者と社員が当事者意識をもって一丸となるための各種施策を紹介する。
“子会社の社長は親会社から”という“子会社の社員のモチベーションの壁”を打ち破ると同時に、経営の独立独歩、独立自尊を達成するために一般的なIPOや自社株を他社に買い取ってもらうM&A,経営陣による買収MBOではなく、日本で初めてのMEBO(Management and Employee Buyout 経営陣と従業員による買収)の手法をとって親会社から独立した。しかも、ファンドは入れずに自己資本と銀行からの借り入れだけで日本レーザーを買収した。すでにある銀行からの借入金の補償問題などもあったが(前稿参照)、社員(正社員のみではなく嘱託社員も)から希望枠の4倍もの申し込みがあり、急遽資本金を増やして再登記したそうだ。
なぜ社員がこんなにも会社を信用して投資をしたか?近藤社長は、日ごろからの施策で社員のモチベーションが高まっていたからだという。社員の間で「会社から大切にされている」実感があったから。その施策とは?
まずは、社員のライフスタイルに応じた多様な雇用制度。1日4時間勤務のパート、6~7時間勤務の嘱託契約社員、8時間勤務の正社員。状況に応じて派遣社員から正社員にと移行可能となっている。また、病気の人には地位と待遇を維持し、闘病期間中もそれまでと同じ給料を払い続ける。60歳以上でも成長意欲のある人は嘱託社員としていつまでも働ける。女性が生き生きと働ける職場つくり、女性の育成にも注力している。該社では。妊娠・主産を理由に退職した人は1件もないという。女性の管理職比率は3割と高い。
これらの雇用制度を効果的に運用するためにも、社員一人一人の思いを知らなければならない。それには社長が社員と向き合うこと。社長室を作らず、社長がフロアを歩き回り、社員とさりげなく話を交わす。「今週の気付き」という施策がある。仕事で気付いたことや家庭での出来事など何でもいいので感じたことを毎週メールで送る。ルールは、“人の批判をしない”、“気付きで問題点が含まれている場合は解決策も併記する“こと。10年続けているが社員からのメールと社長、役員が返信したメール合わせて約6万通となり、社長のパソコンの社員別フォルダーに保存されているそうだ。
教育や人事評価制度にも力を入れている。社長自らが社員を教育することが重要と考え、毎週「社長塾」を開いて創業の志を伝えたり、毎月の全社会議で講義をしたりしておられる。人事評価制度は”透明性“と”納得性“を重視し、例えば評価制度では、上司と本人が決められた項目に関して評価をし、その差を納得できるまで時間をかけて説明する(年2~3回実施)。賃金制度では、粗利の3%を成果賞与として、案件別にチームで話し合い配分を決める。その際、案件の主体となる社員が上司の貢献度合いを決める権利を持ち、結果は公表する。この運用をスムースに行うために社員の一体感を醸成するための施策も重要で、社内ラウンジ(冷蔵庫に缶ビール)があり、就業後社員が集う場として活用している。社員の誕生日には社長直筆のカードとギフトを送る。
“言いたいことが言える社風”もモチベーションのために重要と言う。言いたいことが言えるかどうかは社長次第。社長が変わらねばと、ムッとすることもあるが、3秒おいて落ち着くように努力しているそうだ。“日々の経営は、社長にとってまさに修業の場”とも。
まさに信念と覚悟で築きあげた風土、そして23年間黒字を維持するという結果が、その成果を示している。社員を大切にしないと公言する社長はいないと思うが、建前として大切にすると言いつつ、苦境に陥ると社員よりも業績重視となって、社員を切り捨てる経営者もいる。「社員が気持ちよく働ける会社」、「精神爽奮(爽やかに奮い立つ)」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/20)を具現化することで、社員の能力UPを図ることが経営の基本とも言えるのではないだろうか。今話題の「働き方改革」にも役立つ話と考える。

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