「日経情報ストラテジー」の戸川尚樹記者の記事に目が止まった(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20130726/494505/?mle)。「カスタマー・エクスペリエンス」と言う言葉が注目を浴び、日本IBMや日本オラクルなど、この言葉を掲げたソリューションを提供しているIT企業も増えてきたと言う。私の記憶では数年前に、野村総研の藤沼氏(現会長)が何かの講演でこの言葉を使われ、目新しさを感じたが、今回「日経情報ストラテジー」9月号で特集を組むほどにまで注目されるようになってきたようだ。
戸川記者は、カスタマー・エクスペリエンスを「商品・サービスの選定、購入、利用、サポートまでの経験を通じて顧客が感じる価値。小売業であれば、店に行き、出るまでの全体験に満足を与える経営手法」と定義する。野村総研などは、カスタマーエクスペリエンスの必要性について、「機能や性能の優れた商品やサービでも、単一企業による独占的な事業展開は難しく、直ぐに類似サービスが市場でひしめく結果となりがち。とかく価格だけが競争軸になりがち」と言う。要は、商品やサービスを購入したり、使用したりする際に顧客が受ける「心理的・感情的な価値」が重要になってくる。
既に米国スターバックスや、アップルなど成長企業では、カスタマー・エクスペリエンスにとり組むところが多いそうだ。「ここまでやるか」と言うサービスが、ネスレグループ(ネスレネスプレッソの取り組み)やドミノ・ピザジャパン(注文から配達までボーカロイド「初音ミク」が熱唱するサービス提供)に加えて、本、ワイン、自動車教習所、ファッション通販サイト、旅行サイト、車修理・・・などの分野でもカスタマー・エクスペリエンスを高めるための工夫を凝らし始めている。
日本IBMのサイトを見ると、製品に「IBM Customer Experience Suit」があり、説明に「IBM Customer Experience Suiteは、多彩で魅力的なWebエクスペリエンスを多様なチャネルを通じて提供し、顧客関係の促進と顧客セルフサービスの向上を図ります。」とある。ORACLEも昨年7月に「Customer Experience」製品群を発表している。
顧客満足度向上の重要性が言われる中、その施策を実行する企業から「なかなか成果が出ない」との声も聞かれる。顧客は「満足」だけでは当たり前で、より大きな「感動」や「感激」「感謝」を覚えるサービスを期待している。商品の選定からサポートに至る全体験の中で、顧客がわくわくするようなサービスとは何か?「Customer Experience」を勉強する価値はありそうだ。