「俺は聞いてない!」と怒り出す人たち


標題は、本の題名だ。2012.12.30発行、心理学の専門家榎本博明氏著作、朝日新聞出版(朝日新書)のものだ。

「俺は聞いてない!」と怒る発言は、部下の報告を聞いて、鋭い質問や有効なアドバイスが出来ないときの自分の存在感を示すための発言だと言う。「見下され不安」で、自分より部下の方が優れている事実(Ex.現場の情報を部下の方がよく知っている、部下が素晴らしい提案をする)を素直に受け止められない時に発する。折角、部下がいい提案をしても、上記発言で議題がストップしてしまう。この発言は最後の切り札的発言であるため、全てが止まってしまう。

上司、部下の関係に、榎本氏は「メンツ」と「甘え」の構造が入り込み、「すねる」「ひがむ」と言った心理が生ずると言う。このような関係の中で、上司の存在感を満足するために「報連相」も上司の心のケアとしての意味合いがあるとも言う。日本では、「メンツ」に対する配慮がはびこり、真の実力主義とはなっておらず、実力のない人物が高い地位につくことも多い。そのため、能力の高い部下ほど葛藤を覚えることにもなる。優秀な人材を潰さないような配慮と共に、上司のメンツをつぶさないようにする配慮も必要と説く。

作れば売れる「大量生産時代」を経験した私も、上司に「俺は聞いていない」と怒られないよう、上司への「報連相」には常に気を配っていたものだ。しかし、グローバル時代を迎え、環境変化は激しく、意思決定のスピードが求められる今の時代でも、「すべての情報を自分が把握しておかなければならない」と、事細かく「報連相」を強制する管理者がいるのも事実だろう。

有名な話だが、未来工業㈱では「報連相」は禁止だ。「常に考える」廊下、階段、トイレなど未来工業の本社内で、いたるところに張られている標語だ。「ホウレンソウ禁止」もこの理念に基づき、1人ひとりが自ら考える自発性を重視したためだという。上司への報告は必要最小限にとどめる。業務の遂行は自分で考え、自分の判断で進める。必要と判断するなら上司の許可をあおがなくても出張は自由。すべて相談する義務はない。その前に自分で考えてやってみようということだそうだ。

この4月に管理職となった人も多いと思うが、自分の発言の重みを認識しつつ、部下との信頼関係をはじめ、効率的な組織運営を目指してほしい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です