プロの音楽家の厳しさ(バイオリニスト諏訪内晶子)


10日の朝日新聞26面に諏訪内晶子さんが仕事力について語る記事があった。諏訪内さんのお父さんはIBMで新日鉄の営業をやっておられ、JUASの細川顧問とブラジルの技術協力にご一緒させて頂いた折、その帰りにアメリカのIBMの紹介などでお世話になった方である。2~3年前にゴルフをご一緒させて頂いた折は、まだIBMで頑張っておられた。晶子さんは、20歳前(1990年)にチャイコフスキー国際コンクールで最年少、日本人初の優勝を飾り、一躍バイオリニストとして名をはせた方である。翌年、紀尾井ホールで開かれたコンサートで第1回新日鉄音楽賞を受賞され、その縁で新日鉄のCMにも出て頂いた記憶がある。今や押すに押されぬ第一人者として世界を舞台に活躍中である。

朝日新聞の記事のタイトルは「人生に懸けて追いかける」。プロとは何かを、20歳前後から世界的な演奏家から教わったとの事だが、名バイオリニストのアイザック・スターンには、「指導者の教えてくれたまま演奏するのは改めなければならない」と厳しい忠告を受けたそうだ。「作曲者の自筆譜を研究して、自分なりの演奏をし、しかもその演奏を自分の言葉で表現できなくてはならない。」問題を自分で考え、自分の内部で消化し、解決策がきちんと自分のものになっていなければならない、と。自分でどう弾きたいのか、どう表現したいのか。「プロの音楽家」としての姿勢だ。晶子さんはその時大きな衝撃を受けたと言う。「作曲家が曲を書いた背景を演奏家も理解していなくてはならない。音楽もいろいろな社会の状況や政治情勢とも無縁ではない。」晶子さんは新聞を隅から隅まで読むようになったと言う。

芸術と言う世界まで踏み込まねばとの思いで、米国のジュリアード音楽院に留学。校長先生は、音楽は総合的な芸術であり、アカデミックな学問も必要であると、並行してコロンビア大学で政治思想史などを受講する機会も与えてもたったそうだ。バイオリンを演奏するために、広く学問を志す。「プロになる」ということの大変さを教えてもらった。

プロとは?「プロの条件~人間力を高める5つの秘伝」(藤尾秀昭著、武田早雲書、致知出版社)によれば「仕事をすることによって報酬を得ている人は、そのことによって、既にプロである。またプロでなければならないはず」とし、プロとアマの違いを指摘する。

  • 自分で高い目標を立てられる人
  • 約束を守る:自分に与えられた報酬にふさわしい成果をきっちり出せる人、言い訳はしない
  • 準備をする:絶対に成功すると言う責任を自分に課す。絶対に成功するために徹底して準備し自分を鍛える
  • 進んで代償を支払おうという気持ちを持っている:高い能力を維持するために時間とお金と努力を惜しまない。

過ぎ去った時間は取り戻せない。年老いて、学ぶにつれ、過去を悔いる自分が情けない。せめて余生は「頑張った」と言えるものにしたい。

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