JAL再生における稲盛氏の教え(植木社長語る)


前々稿から、稲盛氏関係のものが続くが、今回は「致知4月号」のJAL植木義晴社長のインタビュー記事「JAL再生一千日の闘い」から、稲盛氏の教えを紹介する。

植木氏は、まさにJAL経営破たんが決まった2010年1月19日の数日後に、機長(子会社の副社長兼)で操縦桿を握っていた氏に、再建の役割を担う執行役員運行本部長の打診があったそうだ。そして、稲盛氏の指導を直接受けることになる。そして昨年(2012)稲盛氏の推薦で社長を拝命された方である。よほど、稲盛氏のメガネに叶った方と思われる。その方が、言うには、

一人の優れたリーダーが指揮を執ることによって、人の意識がこれほどまでに変わるものなのかと言うのを実感した

と。「プライドの高いインテリ集団」「頭でっかちのインテリ集団」とも言う稲盛氏も心配した集団の意識をどうやって変えたのか?稲盛氏が名誉会長に着任されて(2010.2)から半年近くは、会議や、対話の中で鋭い指摘(今までになかった)を通じて、JALの生ぬるい風土・文化を気付かせる動きをされた(一般社員の中にも何の気負いもなく入って行かれたそうだ)。「月次実績が3か月後しか出てこないのを当たり前と思っていたのを有無を言わせず1ヵ月後に出るよう指示」「月次報告や、提案説明会などの本部長説明で、内容よりも責任を持って遂行せんとする心意気が感じられなければ、聞く耳を持たない。私と刺し違えるくらいの気迫のないものは去れ」・・・。そして6か月後から、稲盛フィロソフィーの教育を始めた。6月に17回平日の18時から22時頃まで役員・部長相手に直接講義や、DVDの聴講を実施した。そして1年目から目覚ましい業績回復を実現したが、その頃には、植木氏と言えども運航本部にいたとき本部の予算を意識したこともない集団が、ヘッドセットの修理代や雑巾一枚の価格まで、最も予算に詳しい本部長が育っていた。決算を発表しても無関心だった客室乗務員も、決算資料を我先に受け取る姿に変わっていた(決算資料なども情報漏えいのリスクを考えて社員には配布していなかったが、稲盛氏の「社員の心を一つにする力を考えると、リスクは無視せよ」との指示で公開することにしたそうだ)。

破たん後1年後には稲盛氏の教えに基づき、社内委員会で作成したJALフィロソフィー手帳を全社員に配布し、各部署で毎朝唱和するとともに教育カリキュラムにも取り入れ徹底を図った(JALフィロソフィーの概要はホームページhttp://www.jal.com/ja/outline/corporate/conduct.html参照)。その中で特に植木社長の心に響くフィロソフィーは

  • 人間として何が正しいかで物事を判断せよ
  • 人生の方程式「人生・仕事の成果=考え方X熱意X能力」:熱意、能力に関してはJALの社員は全員合格。考え方、人間性、人格の重要性を改めて認識。

さらには

  • 謙虚にして奢らず。さらに努力を

この3月末に稲盛氏は取締役を退き、以降経営には直接タッチしないと新聞では報じている。これからがJALにとっての正念場と植木社長は気を引き締め、渾身満力、全身全霊の努力を宣言されている。

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