政治不信「2.0」


29日の朝日新聞「ザ・コラム」に現在の政治に対する興味ある記事があった(大野博人編集委員)。政治不信には二つのバージョンがあるというのだ(立教大学の小川有美教授の見立てだそうだ)。

  • 政治不信「1.0」:政治家がやるべきことをやらず、国民の負託に応えない。経済は上向かないし、雇用も増えないし、対外関係も上手くいかない。こんなときに与党を中心に政界に向けられる不信。
  • 政治不信「2.0」:グローバル経済や少子高齢化、環境など重要な問題に、もはや政治は解決をもたらせないではないか、リーダーや政権党が交代しても同じではないかというもっと深刻な不信。

今、日本を含め民主主義国では「2.0」へのバージョンアップが進んでいるとの事で、日本では信用を失っているのは与党だけではなく政治そのものなのに、自民党も「1.0」の不信しか視野に入っていない(政権奪回すれば何とかなるとの主張)。ことここに至っては「信頼ではなく不信に込められた民意を政治に活かす仕組みを考えよう」とのフランスの歴史学者の意見を実現させるしかない。多くの国で、民主主義の骨格をなす選挙と議会に対抗して、その外側から民意を表現するさまざまな仕組みが動き始めている。デモや市民運動、新旧メディア、NGO、専門家たち、あるいは市民による各種の委員会や評議会だ。すなわち民が立ち上がらなければ今の政治は変わらないとの主張だ。

東日本大震災では、復興に向けての斬新なアイディアを自主的に構成した市民委員会で提案し、それを市議会が承認することで復興を進めている気仙沼の事例もある。中央政治に依存していたのでは復旧も進まない。代表制民主主義と民意(カウンター・デモクラシー)が補完的に動いた好事例と言う。地域が抱える課題の解決策をさぐる市民による討議会という手法がドイツで始まり、日本でも一部で広がっているそうだ。

旧来のメディアの発信力が問題視されている中、今急速に広がっているソーシャルメディアは、民意を即時性をもって汲み上げる有効な手段になりつつある。しかし、その前に我々がもっと政治に対して関心をもつことが必要ではなかろうか。デンマークでは、「教育は社会のための人材育成のため」ということが徹底され、小・中・高校生が国の教育問題に意見を出し、国会デモをすることも珍しくないとか。デンマークの国会議員選挙で投票率が80%を切った事がないと言う。日本では驚くべき数字である。

今朝の日経に、29日閉幕した世界経済フォーラム・ダボス会議の記事で、「世界覆う危機、焦燥と無策と」「社会不安、民主主義に試練」とのタイトルが踊っている。政治の世界でのリーダーシップ欠如はともかく、代表制民主主義は世界的な問題のようだ(ダボス会議は企業経営者や学者など有識者も入っているが、決めるのは政治家)。

「政治不信「2.0」」への1件のフィードバック

  1. デンマークはなぜ福祉国家?

    BLOG_NAME JASIPA特別顧問ブログ
    「政治不信2.0」(http://jasipa.jp/blog-entry/7233)でデンマークについて少し触れた。中・高校生が積極的に政治に関心を示し、国会議員選挙の投票率が1953年憲法制定以来80%を切ったこ..

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