「進化できない企業の特徴」とは

「その経営のままでいいのかー?第三世代の経営力~進化できる企業だけが生き残る~」(横田尚哉著、致知出版社、2015.11)の中の一節に、「進化できない企業の特徴」の記述がある。横田氏は、アメリカGEで開発された「ファンクショナル・アプローチ」という進化のための思考システムを日本で普及させるために、自らコンサル会社を設立し、顧客サービスの最大化のための活動を展開されている。

進化できない企業として、まずあげるのは、PDCAが回せず、「慎重なP,力によるD,人任せなC,形だけのA」に陥っている企業。結果から何かを学び取ることもせず、ただ結果を点検しているだけの企業。たしかに、企業の業績にしろ、人材の育成にしろ、C&Aがなく、ただ結果だけしか見ていない企業は、失敗を許さず、社員も失敗を恐れて挑戦する意欲もなくなる。時代の変化に合わせたイノベーションは起こるべくもない。

進化できる企業かどうかは、人材面、制度面、風土面の3つの観点から、その企業の進化に向けた強みと弱みを知ることだと言う。そして、そのバランスがアンバランスな企業は進化するための有機的な機構が働かなくなる。そして、アンバランスなことに気付かず、進化できない企業のタイプを6つ挙げている・

  • 成果管理にエネルギーを注いでいる企業
  • リスク管理に時間をかけている企業
  • 原因追及が得意な企業
  • マニュアルや手順書が充実している企業
  • 人材管理を徹底している企業:労務管理だけではなく従業員の行動のすべてを管理・コントロールする企業
  • 人間関係が良く、組織関係の良い企業:上司とか同僚に対して耳の痛い話は遠慮する風土

成果管理についてMBBと言う考え方を紹介している。これは一橋大学の名誉教授野中郁次郎氏らが提唱したManagement By Belief(思いのマネージメント)だ。「MBB:思いのマネージメント」の一節を紹介している。

数値目標だけがあり、夢や志が語られない組織の中にいると、次第に考えることを避けるようになる。そして、単に目の前の課題をひたすら片づけるだけで快感を覚え、本質的な課題を考えたり振り返ったりしなくなる。心の中にモヤモヤしたものを抱えてはいるが、忙しさの中に埋没してしまう。「とりあえず」そんな言葉が職場に蔓延する。上司に相談しても、返ってくる言葉はうつろだ。「俺もそこまで深く考えているわけじゃないから」「出来る範囲でいいから、適当にやってよ」こんな言葉に部下は気持ちがなえてしまう。そのうち上司との真剣な対話もなくなる。こうして形だけをとりつくろい、成果主義の評価をクリアするためだけに数値目標を達成しようとする。刹那的な文化が形成されていく。

「”VUCA”の時代」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/4300)を乗り越えるために一度立ち止まって企業風土のチェックをしてみては如何だろうか?

脱・成長戦略で「1億総幸福社会」を!

中国、インドなども含めて、全世界がGDP競争をするのは、正しいのだろうか?以前このブログで紹介した(http://okinaka.jasipa.jp/archives/3840)ウルグアイ元大統領のホセ・ムヒカ大統領が、リオ会議(環境の未来を決める会議)で講演した際下記のような質問を投げかけた。

ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのでしょうか。

インドの一人当たり名目GDPを1万㌦にするために必要な資源量を人数で表すと70億人分となるそうです(現在日本は4万ドル近く、インドは1500ドル)。現在の地球人口分の資源が必要になると言うことです。「脱・成長戦略~歴史から見た日本経済のゆくえ~」(武田晴人著、朝日新書、2014,12)を読んだ。経済成長は、歴史的に見ても限界にきており、「成長すれば幸せになる」「成長しなければ幸せになれない」とする経済学者の主張に疑念を呈し、低成長下での豊かで幸せな社会の実現を目指さねばならないとの提言である。新3本の矢「1億総活躍社会(http://okinaka.jasipa.jp/archives/3953)」でGDP600兆円を目標としている。が、内閣府のデータ(国民生活選好度調査)などでも示されているが、一人当たりGDPは増え続けているが生活満足度は半世紀にわたって(1960年以降)横ばいだそうだ。1960年代の高度成長時期の大きな生活の変化をもたらしたモノ消費(洗濯機、冷蔵庫、クーラー、テレビ、車)による雇用拡大と賃金UP、そして生産性向上の好循環は、サービス産業の比率が増え続ける今の時代には不可能であり(“おもてなし”などサービスの生産性UPは機械工業と違って生産性UPは期待できず)、しかも希少資源問題、地球温暖化問題などもあることから、これからは経済成長ではなく、低成長下における多様な働き方や、人の幸せを追求する生き方を柱にした戦略を打ち立てるべきだと言う。

過去には専業主婦が「子どもを育てる」任務を負っていた(シャドウワークと言われ、家事労働などはGDPに入らず)が、急激に共働き世帯が増え、保育所などの施設が必要となってきた。さらには、高齢化が進むにつれて「高齢者を支える社会」ニーズと負荷が加わり、核家族化の進展でより社会的なサポートが必要となっている。このような生活に必要な社会的施設や支援サービスを今以上に充実させることは、女性や高齢者の多様な働き方、生き方を追い求めるためにも重要なことと言える。そのためには、介護サービスなどに従事する人の重要性を鑑み、処遇を改善することも重要な施策となる。幸福社会を実現するために、未来に対する不安を亡くするために、ある程度の国民負担は致し方ないとも筆者は言う。

政府は「経済成長至上主義」を第一義とするため、武器輸出や、原発輸出などにも力を入れることになります。「1億総活躍社会」という「女性も高齢者もガンバレ!ガンバレ!」と言うより「1億総幸福社会」とし、本質的な問題でもある格差是正や、社会保障政策、教育を受ける権利の均等化などにもっと力を入れ、将来に対する不安(特に若者の)を払拭することが出来れば、ゼロ成長を基軸に経済もまわり始めるのではと思う。菊池桃子さんが提言し安倍総理も賛同した「ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)」は必ずしも経済成長第一義の発想ではない(http://okinaka.jasipa.jp/archives/3953)。安倍総理や加藤担当相も「若者も高齢者も、男性も女性も、困難な問題を抱えている人も、また難病や障害を持った人も、みんなにとってチャンスのある社会を作っていく。そういう日本に変えていかなければならない」と言う。企業寄りに偏りがちな施策ばかりではなく、もっと国民の幸せを重視する施策を前面に出してほしいと思う。国民もそれが理解、納得できれば、消費税などの施策にも理解がすすむのではなかろうか。

“VUCA”の時代に「LFP経営」を!

VUCA(ぶか)”とか「LFP経営」、初めて聞く言葉だったが、今日の時代に生き残るためには必要な考え方ではないかと興味を持った。先の読めない時代を勝ち取るための、桁違いに素早く、変化に柔軟な経営を言っている。これからの時代、JASIPAのような動きやすい中小企業こそが、やりかた次第で活躍できる時代かもしれない。以下で「LFP~企業が“並はずれた敏捷性”を手に入れる10の原則~」(シャレドア・ブエ/遠藤功共著、PHP研究所、2015.11刊)の本からLFP経営に関する要点を説明する。

欧米の経営者で話題となっている“VUCA”と言う言葉は、下記の頭文字からとったもの。

Volatility(不安定性),Complexity(複雑性)、Uncertainty(不確実性)、Ambiguity(曖昧模糊)

これまでも大きな環境変化はあったが、その影響は一時的、単発的であり、やがて新たな安定へと落ち着いていった。が今の状況は、経済もグローバル化が進み「安定が期待できない」、常にさまざまな変化に晒され不安定が常態化している、この状態を“VUCA”と呼んでいる。そして”VUCA”と言う環境に勝ち残るための経営コンセプトが「LFP(Light Footprint)」で、「足跡が残らないほど素早く身軽な経営」と言う意味だそうだ。VUCAに適応するためには「並はずれた敏捷性、柔軟性、創造性」、この3つの「組織能力」を手に入れねばならないと説く。LFP経営を当たり前として本能的に備えている企業としてグーグルやスマートフォンアプリを通じてタクシーやハイヤーを配車するサービスを手掛けるITベンチャーウーバーーテクノロジーズを挙げる。「まずはやってみる」が彼らの基本スタンスとした上で、LFP経営の4つの特長を挙げている。

中央集権と自律分散の両立:乱気流の経営では変化にさらされている現場が自ら状況を読み解き、迅速に行動することが必要。「大きな意思決定」以外は現場に権限を委譲し任せるべき。

協働共創;、目まぐるしく変化する乱気流の時代には、自前主義にこだわらず、異なる経営資源、能力を持つパートナーと連携し、迅速かつ効果的に対応する取り組みが求められる。尾^分。イノベーションのためには異業種連携も重要。

相互信頼:現場に権限委譲するにも、パートナーとの連携による迅速な対応にも、相互信頼が基本となる。

隠密潜行:並はずれた敏捷性、柔軟性、創造性を効果的に行うためには、「相手に気付かれない」ことも大切。競争相手が油断している時の攻撃こそ、効果大。

“VUCA”の時代に、どう向き合うか?大鑑巨砲では動きが取れないことも明白だ。これからの時代、JASIPAに集う中小IT企業の出番かも知れない。機動性はある。社長の一存で方向性は決まり、意思決定は早い。時代に応じた技術を素早く身に付け、それぞれの強みを持つ企業同志が、お客の要請に応じて柔軟に、機敏に連携して、お互いの資源を活用しあう。”相互信頼“に基づく”協働共創“、JASIPAの会員企業のこれからの生きる道が見えてくるのではなかろうか。

冲中一郎