“深層対話力”で仕事の効率UP!

最近、囲碁の世界で「人工知能、トップ棋士破る」のニュースが連日報じられている。米グーグルが開発した「アルファ碁」と世界トップ級のプロ棋士、韓国のイ・セドル九段との対戦で「アルファ碁」が勝利とのニュースだ。チェスや将棋に続き、今まで一番難しいと言われていた碁で人工知能が勝ったから大騒ぎだ。カギとなったのは深層学習(ディープラーニング)とか。「人の脳内で進む情報処理を真似てデータに潜む特徴を自力で見出す」技術との説明がある。人間の直感をビッグデータを基に言い当てる、その精度が今回の囲碁で実現できたとなると影響力は大きいとも思える。「ロボットの脅威~人の仕事がなくなる日」(マーティン・フォード著、日本経済新聞社刊、2015,10など、世間もますます騒がしく成るだろう。我々人間も計算機に負けない実力をさらに磨かねばならない時代になる。

「仕事の技法」(田坂広志著、講談社新書、2016.1では、身につけば仕事力が圧倒的に高まる「対話の技法」について書かれている。仕事の根幹は「対話」であり、その対話には1種類あると言っている。

  • 表層対話:言葉のメッセージによる対話
  • 深層対話:言葉以外のメッセージによる対話

言葉以外のメッセージを如何につかむか、これが仕事力に飛躍的UPの根幹と言う。15日の日経朝刊1面「アジアひと未来」で「パパイア売りから420億円企業」との題でインドネシアのハイフラックスCEOオリビア・ラム女史が紹介されていた。マレーシアの村に孤児として生まれ、電気も水もない貧しい生活の中で、成績は優秀で進学し、商売を夢見ながら、路上でパパイアを売っていた。その時、客に声をかけ相手の望みを察する術を身に付け、その後ウェートレスや家庭教師で稼ぎ大学まで行ったとある。この術こそ、田坂氏の言う「深層対話力」ではないかと思う。

「深層対話力」は上司、同僚はもちろん、お客さまとの関係においてもより重要になる。これを身に付けるためには、「反省の習慣」が効果的と言う。商談の帰りに、「A部長の反応と心の動きは?」「B課長の質問にあの答えは正しかっただろうか」「C担当のあの質問の背景には、どんな思いや考えがあったのだろうか」・・・。たしかに、このような反省を習慣づければ、相手との対話をより注意深く行うようになり、深層を探るようになっていくのだろう。よく私も、「お客さまとの飲み会などで、お客様のグチなどにも注意せよ」と言っていたことを思い出すが、お客様の本音は正式な場での言葉だけでは知ることが出来ない。しかし、「深層対話」には、落とし穴もあると田坂氏は警告する。「相手に深い敬意を持って接する」ことをしなければ、相手を意のままに操ろうとしたり、無意識の傲慢さに陥りかねない。

「受託開発からサービス提供」型への脱皮を目指すIT企業にとって、お客様自身の悩みや課題を聞き出すことは非常に重要だ。その意味でも田坂氏の言う「深層対話力」を磨くために、「反省の習慣」を考えて見てはどうだろうか。

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都内有数の進学校都立小山台高校がなぜ強くなったのか(高校野球)

人間学を学ぶ月刊誌「致知」の「致知随想」記事は、信じられないような苦難を経ながら志を忘れず成功した人たちの物語が毎回綴られている。いつも真っ先に読んでいる。今回2016.4号に「大輔が残したメッセージ」と題して、東京都立小山台高校野球部監督福島正信氏が投稿している。2014年の春の選抜高校野球に21世紀枠だったが小山台高校が出場した時は私もびっくりした。新日鉄住金にも幹部など小山台高出身者が数多くいる。

「大輔」は、2006年当時2年生で唯一のレギュラーだったが、先輩と一緒に新しいバットを買いに行ったその帰りに、当時マスコミを賑わせた自宅マンションのシンドラー製エレベーター事故に巻き込まれ帰らぬ人になった。何事もコツコツと一生懸命取り組み、誰からも信頼される選手だった。当時は、小山台は都内有数の進学校で、練習スペースも時間も限られており、甲子園はおろか上位進出さえ難しいチームだった。あの時、大輔にバットを買いに行かせなかったら・・・、事故後監督も生徒も悔しくて悲しくて涙が溢れ、練習もままならなかった。その時、再び前を向いて一歩を踏み出す力を与えてくれたのが、大輔のお母さんだった。「皆さん、悲しい顔で練習をしていたら大輔が泣きます。だから笑顔で練習してくださいね」との手紙。そして大輔の野球日誌の「エブリデイ・マイ・ラスト」「1分1秒悔いのないように生きる。精一杯生きる」などの言葉に、全員「泣いてはいけない。大輔の為にも笑顔でプレーしよう、毎日を精一杯生き、絶対に甲子園に行こう」と、チームとしての絆が深まり、必死に練習に励むようになったそうだ。試合のたびに赤とんぼがベンチに飛び込んでくる話(大輔の変わり身)も織り込みながら、何事にも一所懸命取り組み決して手を抜かない、大輔が教えてくれた生き方が、小山台高野球部の伝統的精神として根づき、目に見える結果として表れるようになった。そして2009年と2012年の夏の東京大会で準々決勝まで進出。そんな中で、2014年1月春の選抜高校野球に21世紀枠として選ばれたとの報が飛び込んできた。結果は初戦敗退だったが、その悔しさを胸に、21世紀枠選出にふさわしい実力、≫品格を備えたチームになろうとあらためて誓い合うことが出来たと監督は言う。実際2015年夏の東京大会でも準々決勝まで進出している。

何よりもこの記事に驚いたのは、「人間、志を持つことによって、こうまで変わることが出来る」のかという事。リーダーの役割にも注目した。大輔のお母さんの言葉をきっかけとして掴み、大輔の遺した言葉をもとに、「何事もコツコツ努力する先に光がある」と選手たちの心の持ち様や、日常の基本姿勢の大切さを、以前にも増して強調するようになり、監督との信頼関係がより増幅し、世間も驚く成長を見せた。

同じ目標に向かって、みんなが一致してあるべき方向にやる気が集中すれば何でもできる」、このことを実現した小山台高校野球部のみんなは社会人になっても、目標に向かってあきらめず頑張れることと思う。小山台高校野球部頑張れ!

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“フェアトレード”製品が世界的に拡がっている!

前稿で「社会的インパクト投資」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/4496)を紹介した。同じ日経朝刊1面の連載記事「新産業創世記~課題に挑む4」(3月3日)にイギリスを中心に広がりつつある消費者の消費性向「フェアトレード」について掲載されていた。同記事の中に以前当ブログでも紹介した「人を幸せにする経営=コンシャスカンパニ―」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/1718)米国自然食品スーパー、ホールフーズ・マーケットも紹介されていたので興味を持って読んだ。

世界で消費者の行動が変わってきた。先進国では必要なモノは満たされて物欲は薄れ、むしろモノを減らして暮らす生き方に注目が集まる。物を買うにも、誰かの犠牲の上に成り立った「安さ」より、自分の価値観に照らし、正しいと思える商品を選ぶ人が増えた。

また、下記のような表現もある。

消費者が自らの信条に沿った製品を選ぶ動きが広がっている。環境にやさしく、途上国の持続的な発展につながるフェアトレード。

この事例として、岡山にあるカジュアル衣料大手ストライプインターナショナルが紹介されている。該社はファストファッションで成長したが、その担い手は新興国の工場だ。2013年にバングラデシュで縫製工場が倒壊し千人以上が亡くなる事故が発生。劣悪な労働環境が明るみに出ると批判の矛先はアパレル産業に向った。そこで、2014年に該社は「ビジネスモデルを変えるしかない」と腹を括り、「着る人も、作る人も幸せになる服」との理念の下、児童労働や強制労働、公害のない工場とだけ取引することにし、中国を含む海外の工場(1000社以上)を綿密に精査し、取引工場を選んでいる。ブランド名は「KOE」。まだ日本では浸透していないが、「フェアトレード」が拡がる欧米で普及を目指している。

ホールフーズ・マーケットは、株主価値の最大化を信奉する米国で、それとは一線を画し従業員の幸福、共同体や環境への配慮を優先する企業として紹介されている。価格は他のスーパーよりは2~3割高いが、理念に共鳴した消費者が支持する。

フェアトレード認証製品(国際フェアトレードラベル機鋼(FLO)による認証)の世界市場は約7200億円で、10年で7倍強に拡大したと言う。スターバックスは倫理にそぐわない調達先から購入しない方針を表明。ネスレも調達先に社会福祉や医療も提供する。日本市場は約80億円で、世界市場の1%ほど。先進校である英国の30分の1、ドイツの12分の1にとどまる。しかし、日本でも震災を契機に世界とのつながりを意識し、生産地を気にする人は増えているという。イオンも2004年にフェアトレード商品の販売を始め、全社の取り組みに拡げているそうだ。大量消費社会の申し子のイオンも変わろうと動く。

「社会的インパクト投資」や「フェアトレード製品の販売」などでイギリスが積極的に動いている。原発や武器輸出でGDPを伸ばすことよりも、GDP(消費)の中身(質)での競争が、新興国も含めた地球規模の発展につながるのではなかろうか。

冲中一郎