ベルギー・オランダ旅行~その6~特徴ある都市(オランダ)

世界遺産はないが、興味深く一度は訪れてみたいと思われる都市を2回にわたって紹介する。

まずは、オランダのハーグを簡単に紹介する(マウリッツハウス王立美術館は前稿で紹介した)。ハーグは北海に面し、国会議事堂や各国の大使館が集まるオランダ政治の中枢地だ。1899年のハーグ平和推進会議において〈国際紛争平和的処理条約〉(1907修正)が定立されて以来,世界の平和・紛争防止に関するハーグ条約など世界平和のための活動都市となっている。ハーグ条約は、日本でも昨年話題になった、国家間の不法な児童連れ去り防止を目的とした条約、またユネスコによる「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」、ハイジャック防止に関する条約など多国間に関わる条約である。2番目の文化財の保護に関する規定が第二次世界大戦後のユネスコ設立につながり、世界遺産指定になった。その意味でハーグ条約の世界遺産への寄与は大きい。
1899年のハーグ平和推進会議を契機に建設され、現在は“平和宮として国際司法裁判所の機能を果たしている。国際司法裁判所の裁判官は国籍の異なる15人で構成され、現在のメンバーの中には皇太子妃雅子様の実父小和田恆(おわだひさし)氏もいる。小和田氏は2009年に日本人として初めて国際司法裁判所所長に選出され2012年まで務め、雅子様が皇后になることもあり、今年6月に退任されるとのことだ。日本語で「世界人類が平和でありますように」と書かれた柱があった。

ハーグにあるオランダの政治の中心地ビネンホフ。国会議事堂、外務省、総務省などが集まっている。左の建物が”マウリッツハウス王立美術館”だ。ここでもチューリップが満開。

オランダと言えば風車の街。その風車のある光景で有名な“ザーンセ・スカンス”。アムステルダムから約20kmのところにある。風車の街では世界遺産に指定されているロッテルダムに近いキンデルダイクも有名だ。ザーンセ・スカンスは17~18世紀にザーンランド地方の伝統的な建物が移築・保存されている地域で、風車とともにオランダの原風景が広がる。今では数機しか残っていないが、ザーン川の岸辺の風車と家屋の風情にみとれてしまう。

オランダでも珍しいSL蒸気機関車。アムステルダムの北に位置するホールーンからメーデンブリックまで、ゆっくり、ゆっくり、途中の駅で休憩して1時間程度の旅だ。のどかな風景が広がり、チューリップ畑、風車、ウサギが飛び回る畑なども見られる。

“ミッフィー”の生まれの街ユトレヒトも訪れた。ドム広場に“ドム塔”と“ドム教会”がある。オランダで最も高い塔(112m)とオランダで最も古い教会(元は7世紀頃の木造建築)だ。隣り合わせに”ユトレヒト大学”がある。卒業生・教員の中から12人ものノーベル賞受賞を輩出しているオランダでも最優秀な大学だ。運河沿いも賑わっている。ミッフィーの街の香りは、今回は信号機のみ。ミッフィーミュージアムなどいろいろあるようだが・・・。

同じくオランダのデルフト。フェルメールやデルフト焼き陶器で世界に知られており、マルクト広場や運河沿いなど、昔の王家の栄華を彷彿とさせる史跡もたくさんある。デルフト工科大学のある学生の街でもある。マルクト広場には市庁舎がある。17世紀のルネサンス調の建造物だ。市庁舎に向かい合って立つのが新教会。14世紀に建造されたこの教会はゴシック様式で、教会内部には、オランダ独立達成を目前に、敵の放った刺客の手に倒れたオラニエ公ウィレム1世はじめ歴代オランダ王の棺が格納されている。少し離れたところにある旧教会は、工事中で分かりにくいが傾いている。運河沿いの街並みも美しい。街の名を最も有名にしているのは、この地が生み出した白地に深いブルーの絵付けが美しい陶器「デルフト焼き」。16世紀に中国磁器の影響を受けて生産が始まり日本の伊万里焼にも影響を受けたそうだ。デルフト焼窯元の”ロイヤルデルフト“を訪ねた。デルフト焼きの歴史はもちろん、貴重なアンティーク品や王家に献上したデルフト焼きのコレクションなどを見て周ることができる。

ベルギー・オランダ旅行~その5~美術館巡り

次に紹介するのは、美術館巡りだ。ハイライトは、オランダ ハーグのマウリッツハウス王立美術館だ。フェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」、「デルフトの眺望」、レンブラントの「テュルプ博士の解剖学講義」の人気作品が飾られている。

この美術館はビネンホフの隣り合わせにあり、17世紀オランダ領ブラジル総督ヨハン・マウリッツの邸宅だった建物で、オランダ・フランドル絵画の名画が揃う。今回は閉館後の貸し切り見学(最近ツアーでも時々ある)で、余裕をもって見学できた。上記絵画以外にも目を引くものが多い。ルーベンスとブリューゲルの共作「楽園のアダムとエヴァ」は、柔らかいタッチのアダムとイブ(左側)はルーベンス、細かなディテールで描かれた動物たちはブリューゲルが仕上げた。アントワープのノートルダム大聖堂で紹介したルーベンスの「マリア被昇天」、パウルス・ポッターの「牡牛」、ヤン・ステーンの「この親にしてこの子あり」(親のしつけの重要性を説く)などが有名だ。

次に紹介するのはオランダアムステルダムの国立美術館。1889年開館、世界屈指の中世絵画の傑作を収蔵している。

必見は、レンブラントの「夜警」「ユダヤの花嫁」「聖パウロに扮した自画像」、 フェルメールの4作品「牛乳を注ぐ女」、「手紙を読む青衣の女」、「小路」だ。
オランダ出身のゴッホの「自画像」、「モンマルトル」とヤン・ヴィレム・ピーネマン《ワーテルローの戦い》。

次に紹介するのはベルギー王立美術館。ブリュッセルにあり、2003年以来200年以上の歴史を誇る美術館だ。メインとなる美術館はフランドル派を中心とする15世紀から18世紀までの作品を収めた古典美術館と19・20世紀の作品を収めた近代美術館で、2万点以上の所蔵作品を有する。

 

古典を主体に見学した。ブリューゲルやルーベンスの絵が多い。ブリューゲルの「反逆天使の墜落」、「聖マルティヌスの日の葡萄酒」「ベツレヘムの戸籍調査」、ブリューゲルの息子の「黄金の大皿と花輪のある静物」。

ルーベンスの「聖母被昇天(アントワープ大聖堂にもある)」、「聖フランチェスコのいるピエタ」、「ゴルゴダの丘行き」。

他にも大作がある。ボッシュの3連作「聖アントニウスの誘惑」、ヤン・ヴルハースの「学童の行進1878年」、ディーリック・バウツの「皇帝オットー大帝」。

ベルギー・オランダ旅行~その4~世界遺産都市巡り

次に紹介するのは、運河が縦横無尽に通った運河と橋の街で、“北のベネチア”、”水の都“、”屋根のない美術館“とも言われる人気の観光地、ベルギーのブルージュ。まずは、中世ヨーロッパのかわいらしい街並みが堪能できる世界遺産「ブルージュ歴史地区」を紹介する。歴史地区の中に、世界遺産「フランドル地方のベギン会修道院」と先に紹介した「ベルギーとフランスの鐘楼群」の一部がある。街を縦横に運河が流れ、50以上の橋がかかる(ブリュージュとは橋の意)。当初予定になかった運河クルーズの最終便に現地ガイドのお陰で乗船できた。街のシンボル鐘楼や聖母教会があちこちで見える。両岸に立つ中世の建物も風情がある。豪商の建物が多いそうだが、今はホテルやレストランとなっているそうだ。

船を降りて、世界遺産のベギン会修道院を経ながら鐘楼のあるマルクト広場に向かう。13~15世紀頃建てられたブルージュで最も高い122mの“聖母教会(内部にミケランジェロの聖母子像がある)。聖ヨハネ病院を経てベギン修道院へ。広場には水仙の花が見事に咲き誇っている。その後方の白い建物がベギン修道院だ。修道院に面して”愛の湖“があり、そこには多くの白鳥が戯れている。この湖にはミンナと言う美しい娘の悲恋、悲劇の話があるそうだ。白鳥にも意味があるという。近くにブルゴーニュ公国最後の君主だった絶世の美女マリーが眠るノートルダム教会もある。マルクト広場に向かう街並みも中世の雰囲気を残した建造物が多い。マルクト広場には紹介済みの鐘楼や西フランドル州庁舎がある。少し行くと市庁舎もある。

いよいよオランダだ。まずは首都アムステルダムを紹介する。「アムステル川に築かれたダム(堤防)」という名の通り、160本以上の運河と1500以上の橋をもつ(中央駅を中心に扇状に広がる運河)。一番外側のシンゲル運河内の街の歴史的建造物などが世界遺産だ。16世紀ごろから貿易業が盛んになり、17世紀にオランダ東インド会社の本拠地が置かれたころには、世界貿易の中心として栄えた。まずは、運河クルーズで船から街並みを見ることにした。中央駅の近くから出発。運河の岸辺に住むボートハウス(水上居住者住居)が目につく。もともと住宅地が少ないための窮余の策だったらしいが、今では上下水道・電気などもつながり、バスタブも完備し、デッキで優雅に過ごしている人たちが多いそうだ。立派なホテルもある。運河に2500軒もあるという。次の写真はアムステル川にかかる“マヘレの跳ね橋”。岸辺の建物は、中世の豪商の建物が多く、いまだに立派な姿を見せている。

街散策に戻る。1889年に開業された赤レンガ造りの美しい“中央駅”は東京駅丸の内駅舎のモデルになったことでも有名。アムステルダムの地名の由来にもなっている、“ダム広場”は、1270年頃、アムステル川にダムが築かれたのが始まりだ。第二次世界大戦の慰霊塔が立っている。広場の西側には市役所として建てられた”王宮“がある。運河沿いに歩いていると、斜めになった建造物に時々出会う。埋立地故、傾いているそうだ。ハウステンポスにあるヨーロッパホテルの原形もある。レンブラント公園には、彼の代表作のひとつ「夜警」(1642年作)をそのまま銅像で表現してある実物大の群像がある。中央駅近くには、プロテスタントの多いオランダでは珍しいカトリックの”聖ニコラス教会“がる。オランダは自転車天国。自転車専用道路(オートバイも走る)をわが物顔にすごい速さで駆け抜ける。ガイドさんも何度も注意を呼び掛ける。

冲中一郎