日本人が誇るべき「利他的遺伝子」!

久しぶりに、人間学を学ぶ月刊誌「致知」の記事を紹介する。2020.3月号に当ブログでも紹介したことのある筑波大学名誉教授村上和雄氏(生命科学研究者)の「日本人の利他的遺伝子」があった。そのリード文は
人間には誰かの幸せや喜びのために生きようという「利他的遺伝子」が備わっているというのが遺伝子工学研究者の第一人者・村上和雄氏の持論である。日本人の利他的遺伝子の発現は、その歴史の中でいくつもの事例を挙げることができるという。そこから見えてくるのは、日本人が持つ他に誇るべき美点である。
とある。

日本人の利他的遺伝子の発現事例は数多くあり、諸外国からの評価は高い。村上氏が挙げる事例の一部を列記する。
1.記憶に新しいアフガニスタンに命を捧げた日本人
★アフガニスタンで医療や人道支援に尽力された中村哲氏。昨年12月4日に非業の死を遂げられ、国内外で追悼の声が挙がり、中村氏の死を悼んだ。人道支援に対する脅しにもめげず、「平和に武器はいらない」「百の診療所より一本の用水路を」「家族と一緒に暮らし、食べていける。まずそれさえ保証されればアフガニスタンの人々は満足してくれる。紛争も収まっていく」との固い思いの元、1万6500haの灌漑を実現し、65万人の生活が維持されることになった。想像を絶する「利他的遺伝子」の発露に頭が下がる。

2、ポーランドやイスラエルが今でも日本に恩義を感じている件
★第二次世界大戦時のユダヤ系ポーランド人を救出した杉原千畝氏(当時リトアニアの領事代理)の話(https://jasipa.jp/okinaka/archives/98)。当時同盟関係にあったドイツの迫害を受けたユダヤ人の救出には相当の覚悟をもって望まれたことと思う。
同じく2万人のユダヤ人の入国を拒否した満州国(ドイツへの気がね)を説得し、救済した関東軍ハルピン特務機関長の樋口季一郎少尉の話。

3. 中国の人に感銘を与えた件
★2008年5月四川省での大地震の時の事。死者の数9万人という悲惨な事態でした。その中で駆け付けた日本の救援隊が残した1枚の写真に反日感情の強い中国人の間から絶賛の声が挙がった。それは、母子の遺体を日本の救援隊が発見、救援隊全員が整列し、二人の遺体に黙とうをしている写真だ。失われた命に敬意を表する姿に「日本人を見直した」と言う声が広がったそうだ。
★東日本大震災の時の女川町での出来事。ある水産会社で働く中国人20人を専務が自らと家族を犠牲にしながら全員救出した話だ。
★同じく東日本大震災の時、香港から石巻市に旅行に来た夫婦をJR職員が救い、その後、ある一家に5泊お世話になった話。など。

本来「利他的遺伝子」を人は内在的に持つと言われている。それを“スィッチオン”でき様々な場面で活躍しているのが日本人ということであり、“日本人が持つ他に誇れる美点”と村上氏は言う。「このような心温まるエピソードに触れるにつけ、日本人としての誇りが高まっていく」と村上氏は締めている。
悲惨な事故、事件も多く、惨めな気持ちになることもあるが、“人間とはこんなに温かったんだ”といろんな事例を思い出しながら、自らも「利他の遺伝子」をスイッチオンすることで日本の美点を増幅していければと思う。

新型コロナウィルス(COVID-19)で世界は大騒ぎ!

今、世界は“新型コロナウイルス”で大騒ぎだ。一方で、アメリカでは今インフルエンザ患者が2000万人、死者が12000人と過去最大の被害状況らしい。2月初めに中国湖南省や四川省で鳥インフルエンザが発生とのニュースもあった。

8年前に、13000年に渡る人類史の謎「銃・病原菌・鉄」(ジャレド・ダイアモンド著。倉骨彰訳、草思社文庫)が発売され、ピュリッツアー賞を受賞するなど、発売1か月で26万部突破と人気を博した本がある。読み切ってはいなかったが、今回のこの騒ぎを契機に、その第11章「家畜がくれた死の贈り物」を読み直した。

世界の歴史は、人間と病原菌の戦いであり、いまだにその戦が続いていることになる。第二次世界大戦までは、負傷して死亡する兵士よりも戦場でかかった病気で死亡する兵士のほうが多かったと言う。過去の戦争において勝利できたのは、タチの悪い病原菌に対して免疫を持っていて、免疫のない相手側にその病気を移すことが出来た側で、コロンブスの1492年の航海にはじまるヨーロッパ人のアメリカ大陸制服において、もっともおぞましい歴史的役割を果たした。アメリカ先住民は、大概少数民族で、付き合う動物の種類もヨーロッパに比して各段に少ない。従って、病原菌の種類によっては、免疫ができておらず、感染する度合いが高まる。戦争以外でも、第一次世界大戦が終結した頃インフルエンザの大流行があり世界で2000万人が命を落としたり、14世紀から16世紀にかけて流行した腺ペストではヨーロッパの全人口の四分の一が失われた。
病原菌も、人間と同様、自然淘汰の産物と言う。生物は進化の過程で、自分の子孫を適正な環境にばらまく事によって生き残る。感染症にかかった場合の様々な症状は、病原菌が感染を広げ拡大して生き残れるかの巧妙な仕掛けだ。例えば狂犬病ウィルスは、感染した犬の唾液に入り込み、犬を凶暴にして人に噛みつかせ新たな犠牲者に伝搬させる。インフルエンザのように、抗体ができても変種を生み、ワクチンも効かないようにして広げるものもあるが、麻疹ウィルスは、一旦抗体が出来れば死ぬまで有効のため、流行は抗体のない子供たちが成長するころまで流行しない。感染症で死なせることは、病原菌の真意ではないと思えるが、一人が二人にうつせば目的は達する。病原菌も生き残るために必死なのだ。その意味でも、病原菌と人間の戦いは永遠に続く。

今回も、過去に例のないウィルスでワクチンも、治療方法も検査キットもない状態故に大きな騒ぎとなっている。中国では死者も出ているが、幸い重症者は日本では発生していない。東京オリンピック、パラリンピックへの影響は、今中国で発生している鳥インフルエンザのほうが怖いと言う専門家もいる。アメリカのインフルエンザの猛威に対してメディアは全く取り扱わず、外務省のホームページを見ても何の情報もない。
「正しく恐れる」と専門家は言うが、基本はどんな感染症が来ても、「手を丁寧に洗う、うがいをする、マスクをする、手で口、鼻、目を触らない」との基本を徹底し、日ごろの行動規範とするしかないのではと思う。それが病原菌との過酷な戦いに立ちむかう人間の対抗手段ではなかろうか。
今朝(2月12日)に新聞ニュースで、昨日急逝された野村克也氏のお父さんは、中国への出征時、疫病で亡くなられた由。日本人も過酷な環境下で多くの戦士が疫病で亡くなったことは間違いない事実だと思える。

ところで、企業にはBCP(事業継続計画)策定を政府は要請しているが、政府には国の継続計画として、地震や、災害、パンデミックなどに備えた計画は存在するのだろうか?省庁縦割りの弊害がいまだに残る現実の中で、大震災時を含めた政府の対応が場当たり的と思えるのは私だけだろうか。今回のウィルス対策でも、医療体制の不足が深刻になっている。事前に感染者の多寡により、診療体制をいかにするか計画を公表し、医療機関の対応力を確保しておくのは当たり前と思う。今回のようなことでバタバタしていては、首都直下地震が来た際の対応できるのだろうかと不安になる。時の政権の対応能力が日本の浮沈を左右する現実は企業より深刻と考えられるが、皆さんはどう考えるだろうか?

新しい年を迎え想うこと

令和初のお正月は天気も良く、のどかなものだった。暮れに息子の家族と共に、8人で1泊2日の伊豆旅行を楽しんだ。年に1~2回家族全員が集まって親睦を深めることにしている。末永くみんなが仲良く幸せに過ごせることを願ってのことだ。
すがすがしい天候とは裏腹に、世間は騒々しい。昨年来の”桜を見る会”の騒ぎ、IR疑惑に続き、ゴーン被告のドラマよりも奇異な逃亡劇、米国によるイランの司令官殺戮に伴う中東危機など、信じられないことが起こっている。
今年は、1964年以来56年ぶりのオリンピック、パラリンピックが東京で開催される、我が国にとって記念すべき年明けなのに、政治・経済共に波乱の幕開けだ。明るいニュース、出来事を探すのに苦労する。天皇陛下、皇后陛下の国民目線での思いと行動にほっとする。
それにしても、世界的に経済はグローバル化が進むも、政治の世界は保守主義へ傾斜(自国ファースト)しているため、国家間の軋轢が増し、国際的な機関(国連、NATO,WTOなどなど)が機能しなくなってきているのが心配だ。令和時代も、平成に続いて戦争のないことを祈るばかりだ。
国内政治に目をやると、相も変わらず国会議員の不祥事で、政策論争が停滞している。長く続く1強体制の中での与党の傲慢さ、野党のふがいなさに政治不信が募っている。“将来の世代に安心して引き継げる社会作り”のために向こう10年が非常に重要な意味を持つと言われている。世界的には”気候温暖化“などであり、国内では”少子高齢化“に伴う持続可能な経済・財政、社会保障施策改革などだ。ここで失敗すると、地球は破滅に向かって進まねばならないと言われ始めた。こんな時に、選良であるはずの政治家自身のあきれるばかりの不祥事に時間を取られている。野党を非難する人もあるが、まずは不祥事を起こす議員を咎めるべきとは思う。しかし、一方で、野党は重要課題目白押しの中で、長期的な国民目線の施策を打ち出し、国民の理解を得る最大のチャンスと今を捉えるべきではなかろうか。
このままでは、政治に対するあきらめの気持ちが高まり、国会議員を選ぶ選挙の投票率がますます低下することになり、支持率ガ50%以下なのに議席数は70%以上という(全有権者に対する自民党支持者は20%前後)、まさに民主主義の危機ともいえる状態が続いている。このような状態を打破するために、政治にも危機感を与えるために、選挙における比例代表当選者の数を投票率と連携させ、残りを別の選び方にする方策を提案し、活動する人もいる。議員も必死で投票率を上げるための行動を起こすことになると思われるが、今の所、破天荒な施策と受け取られているそうだ。
本によると、デンマークでは選挙の投票率は80%を切ったことがないそうだ。出産費用から葬儀代まで国家が負担し、「消費税25%で世界一幸せな国」とも言われている。学校教育も含めて、国民は「国家を愛しているがために行動もする」、「選ぶに足らない人がおれば、自ら立候補する」ともいう。国家と国民の間にまともな信頼がある。政治家は大学や高校でも政策討論会を行い若者も積極的に政治活動に参加しているそうだ。スウェーデンのグレタ・トウィンベリさんのような人が出てくる素地はあるということらしい。
今、日本も孫やひ孫の時代までもより良い日本が続けられるよう、今の若い人たちにも政治に深い関心を持ってほしいと切に思う。
悲観的な話になっていしまったが、今年こそ未来に展望が開ける日本、世界になるよう、日本を愛する一人として願いつつ、自分に何ができるか考えたい。

冲中一郎