算盤製造会社を守り続ける女性社長!

算盤と言えば、電卓やコンピューターの発展によって商売にはならない業界と思っていたが、その算盤会社(創業大正9年)を創業者の死後30年社長として守り続けている女性社長がいる。その名は、藤本ともえさんで、会社の名前も「トモエ算盤」。創業者の父が社名を娘につけたそうだ(「致知2014.10」「第一線で活躍する女性」シリーズでの「苦境の中で守り続けた算盤が今人気再燃」と題した藤本氏へのインタビュー記事より)。

確かにきついマーケットだ。ピークの1980年には240万人いた算盤検定者数が一時は18万人まで落ち込み、ここ2~3年は22万人まで復調したがそれでもピークの10%にも満たない。そのような中で藤本氏が算盤にこだわるのは、算盤の効用が世界で認められ、子供たちの基礎的な計算力をつけるために必須との信念があるからだ。確かに「トモエ算盤」のホームページを見ると数多くの著名人が「算盤の効用」を説いておられる。脳の前頭前野は人間を人間たらしめ、思考や創造性を司っている中枢だが、算盤をすると前頭前野が刺激されるとも言われているそうだ。今では、算盤の製造・販売と言うより、その効用を普及させるソフト面に注力し、多彩な「算盤教室」に力を入れておられる。ご本人は、算盤会社を継ぐなどとは全く考えておらず、英語が好きで大学卒業後は高校で英語教師をやられていた。その特技を活かして「英語で算盤教室」を開いたところ、英語に対するニーズの高さもあって人気教室となっていると言う。他にも「運動しながら算盤教室」などアイデアを駆使しながら、子供達が楽しみながら覚えられる教室を展開されている。

最近、計算と言えば電卓など電子機器の世界だ。昔学習と言えば「読み」「書き」「そろばん」と言われ、我々世代も算盤を習いに行ったものだ。算盤があったせいで日本人の暗算能力に外国の人は驚いていると言う。算盤暗算競技のすさまじさには我々日本人も驚く。頭の中にイメージとして算盤を置き、指ではじきながらどんな大きな数字でも正確に計算できてしまう。そんな算盤が、コンピューターはなやかなりし今、世界でも注目されているそうだ。私も、ワープロ普及で漢字が書けなくなったことを実感している。コンピューターに頼り過ぎたために落ちた基礎能力を考え直すべき時期が来ているのかも知れない。

それにしても女性の活躍が目立つようになってきたのは、嬉しいことだ。

よいラガーメンよりも良い人間を育てる(帝京大学ラグビー部岩出監督)

滋賀県立八幡工業高校を7年連続花園出場に導き、その後、帝京大学ラグビー部監督に就任(平成8年)。平成22年に創部40周年にして初の全国大学選手権優勝。今年、史上初の5年連続制覇を実現した、帝京大学ラグビー部岩出雅之監督が「致知2014.10」のインタビュー記事に登場されている。優勝経験のなかった帝京大学を、様々な困難を経ながら育て上げてきた岩出氏の「リーダー哲学」は我々にも大いに参考になるものと思う。下記にその哲学を紹介する。

「ただ目の前の勝利だけ見ているのと、学生たちの未来まで見てあげているのとでは、彼らの将来はまるで違ってくる。学生時代というのは長い人生の中のたった4年間なので、そこで勝ったからと言って、後の人生で幸せになる保証があるわけではない。ですからいい学生生活を送るということは、単に勝ち負けではなく、目標に向かって成功も失敗も含めていい体験を積み重ねていくことが将来様々な力になっていくと思う。」

学生たち一人ひとりにしっかり心を配り、それに応じた導き方のできる指導者でなければならない。そのためにもこれまでのように指導者の考えとエネルギーばかりで引っ張るのではなく、彼らが主体性を持って行動していけるチームに転換していこうと考えた。その源は上級生の姿だ。上級生がよい手本になってチーム全体をよい方向へ導いていけるチームにしていこうと。具体的には、挨拶や掃除を4年生は率先してやる。自分のエネルギーを他者貢献に使うことで自己研鑽する姿を上級生が見せ、そこに刺激を受けた下級生たちも育っていく。そういうことが定着していったことで、優勝も、連覇も実現できたと思う。」

「指導者に努力や学習意欲のないチームには未来はない。指導者がこれぐらいでいいと考えたところで、学生たちの可能性を摘み、チームの歩みも止まる。だから指導者は成長し続けなければならないというのが僕の哲学だ。4年間がラグビーだけで終わるのではなく、指導者が未来をしっかり見据えて指導することで、社会に出て生きる力を育むことが出来ると思う。若い世代の可能性を大きく引き出す指導者でありたい。」

指導者に反発して傷害事件を起こし公式戦出場停止の処分を受けたり、単位不足で一人悩んで自殺した部員があったり、様々な経験の中から作り上げてこられた「岩出哲学」。時間がかかったとは言え、今では早稲田、明治も歯が立たない強豪校に育て上げた「岩出哲学」は、企業の職場での社員育成にも通じる話として受け止めたい

JASIPAの強みはお客様の問題解決力?!

2012年の元旦に私の初夢として下記のような事をブログに記した(http://okinaka.jasipa.jp/archives/152)。

サービス業の原点に戻って、“お客様のため”を徹底します。この‘お客様’とは最終ユーザーを言います。そのためには、会員企業は下記を実行します。

  • プライムで請けたお客様をトコトン大事にします。(信頼関係を築きます)
  • 日頃の対話の中から、お客様の課題・期待を聞き出します。自社で解決できる問題だけでなく、JASIPA会員企業全体で解決できる問題も含めて。
  • JASIPA会員全体の知恵で、提案をします。
  • 各社は自社の強みを打ち出し、それを徹底的に磨きます。
  • お客さまは、JASIPA株式会社の総合力での対応に満足します。
  • 総合力として不足の技術を持つベンダーを誘い込みながら、より大きなアライアンス集団としてJASIPAを発展させていきます。

 

上記の参考になるかどうか、士業の方々が寄り集まり、お客様の問題をワンストップで解決する集まり「法務・会計プラザ」(札幌)を主宰する弁護士太田勝久氏が、「致知2014.9」の致知随想に寄稿している。発足から21年経った今、連携の輪は広がり公認会計士、中小企業診断士、社会保険労務士など様々なプロ(専門資格者)23名、スタッフを含め総勢80名の集まる部隊になっており、お客さまから高い評価を得ているそうだ。

太田氏曰く、「士業に携わる人間も、かってのように情報を独占し、それを笠に着てお客様の相談に応じるような仕事のやりかたは通用しない。入手した情報からいかに優れた解決策を導き出せるか。そこに我々プロの存在意義がある。」と。分野の異なる専門家の英知を結集してより高いレベルでお客さまの要求に応えたいとの思いで「法務・会計プラザ」を発足させた。その目的達成のために、各人の専門性を磨くと同時に、問題解決力の根本とも言える“人間力”を磨くことにも力を入れたと言う。なぜ“人間力”か?

「問題を解決するためには、まず状況を冷静に分析しなければならない。そのためには三つの視点が必要と言われる。大局を俯瞰する鳥の目、周囲を回遊しながら状況を把握する魚の目、そして小局を見る虫の目の3つだ。ところが、人間は、自分の思い込みや我執などで目が曇り、物事を素直にありのままに見ることがなかなかできない。そこで人間学を通じて心を耕し、見識を磨き、人間としての器を大きくする必要があるのだ。」と太田氏は言う。さらに続けて「士業に携わる人間は、常時数十件の案件を同時に抱えている。しかしお客さまにとっては自分の一件に人生が懸っている。自分は座禅や古典の勉強を通じて人間力を養うことにより、自分の心をクリアな状態にし、限られた時間の中で一件一件の案件を全力で取り組めるように努めてきた」とも。

最後に「高い次元での問題解決力を養うためにも、組織を担うひとり一人が人間学にもとづいて自分を向上させ主体的に行動し、燃える集団にならなければならない」と言う。冒頭の初夢を実現するために相通ずるヒントがこの事例にはたくさん盛り込まれているように思う。「お客さま第一」「お客様のための問題解決」と言う言葉をJASIPA会員企業のアライアンスで完遂するには、各社の強みにさらに磨きをかけるとともに、お客様の問題を素直に捉えることが出来る人間力を個々に備える努力をし、成果につなげていくことが必要になる。中小ITベンダーの強みを柔軟に組み合わせながら、お客様の問題解決に資する、これがJASIPAの最大の強みになる。是非とも実現したい。

冲中一郎