“Not Yet”思考で落ちこぼれを救う!

今年の4月30日のPRESIDENT Onlineに「“Not Yet”思考で落ちこぼれが変わる」とのタイトルの記事があった。あらためて読み返すと共感を覚えるものがある。モチベーションの研究では世界的権威と言われるスタンフォード大学心理学教授キャロル・ドェック氏のTEDでのプレゼン(2014・9)の紹介記事だ。
とある米国の高校の成績評価で、米国では当たり前の、落第点“F”(Failing Grade)評価を”Not Yet”に変えたそうだ。“F”評価を受けた子は、「あなたには将来の希望はない」との烙印を押されたようなもので、勉強するモチベーションを失ってしまう。一方で、“Not Yet”と評価されると「あなたは学習目標に対して、まだ到達していないだけで、到達するにはさらに努力が必要だ。でも目標への軌道には乗っている」との理解で、生徒の「努力したい」とのモチベーションにつながるという。
この概念は大人にも当てはまるはずという。例えば、人生において挫折を味わったとき、「絶望的」と思わずに、Not Yetと考え、前向きな思考で、成功するための努力目標にすべしと。人間には潜在能力があり、それを呼び起こせるかどうか、その気持ちの問題が大きい。
企業でもイノベーションを起こすために新しい評価体系を作ることを提言している。結果より、進歩・成長に注目した評価体系を社内に作ることを。新しいスキルを身に着けた社員、たぐいまれなチームワークを発揮した社員などを表彰する制度も推奨する。日本人は失敗を恐れる民族と言われているが、それでは会社も社員も成長できない。「成功に向かって邁進し、数々の障害や失敗を克服しようと、その目的へのビジョンと情熱と忍耐力を持つ成功者」こそ賞賛しようと呼びかける。結果だけを見るのではなく、数々の障害に直面し、それを克服してきたプロセスを評価する。今、最優秀と評価された社員が、将来も引き続き成果を出すとは限らない。失敗した人に烙印を押して立ち上がれないようにすることが企業にとって良いことか?失敗した社員が、プロセスにおいて、大きな障害に会い、悩み工夫して障害を突破しようとしたができなかった社員が、その反省を糧に次の仕事で見事に成果を出すことを促進するほうが企業にとって意味ある事。キャロル氏が企業コンサルでまず行うのは、どういう問題で苦しんでいるか、どういう間違いを犯したか、その間違いから何を学んだかを聞いて回ることという。シリコンバレーには、Failure of
the Year Award(その年の失敗賞)を授与する財団があり、誰もが欲しいと思う憧れの賞だそうだ。失敗は本当に多くの情報を提供してくれ、将来多くの成功を生み出す可能性を有している。シリコンバレーのモットーは「より早く、より首尾よく成功できるように、早期に、そしてできるだけたくさんの失敗をせよ」ということ。
日本でも、失敗をほめる試みをしている企業があり、当ブログでも紹介した。太陽パーツ㈱の「大失敗賞」などの施策だ(http://okinaka.jasipa.jp/archives/1865)。「企業は人なり」、過去松下幸之助氏や本田宗一郎氏などの「人を大切にする経営」こそ、人の成長を促す経営だったと思う。少子高齢化の進展で、労働生産性を今以上にあげることが求められている時代、社員の成長を促進する施策として、キャロル氏の提言も参考にしてほしい。