第17回JASIPA経営者サロン実施(2日)

今回のテーマは「中小企業の経営に活かす補助金活用術」で、これまでの15年間で積極的に補助金活用を実施されてきたスキルインフォメーションズ(JASIPA理事・関西支部長)の杉本社長から、活用のためのノウハウを伝授願った。JASIPA会員の関心は高く、事務所に入りきるか心配したが、いつもより多い13名の参加を得て実施できた。

政府の成長戦略で、来年度の政府補助金は従来に対し、倍増の勢いと言われている。8月16日の日刊工業新聞にも「スーパーものづくり補助金」で中小支援に2000億円超、必要経費補助上限を1000万円から2000万円に倍増させるニュースが報じられている。当然、政府が成長戦略の要として声高に言っているIT関連の補助金も経済産業省だけではなく、農水省、国交省、文科省などからの補助金募集テーマにもIT関連が数多く盛り込まれるだろうと杉本氏は予測する。中央省庁のこのような動きを受けて、都道府県をはじめ各種自治体でも補助金テーマの公募も活発化するとみられる。

自社の技術力を生かして、新しいことにチャレンジする場合、リスクを回避するためにも公的補助金を利用することを薦める。しかし、公募倍率は高く、いきなり無手勝流で応募してもなかなか採択されることは難しい。補助金は結構大企業が、中小企業より上手く活用していることが多い。そのため、現在の大手のユーザー顧客の補助金応募に参加させて貰うことによって、提案書、プレゼンのノウハウを吸収すると同時に、省庁との接点の人脈を作るのが効率的と言う。あるいは、省庁の主催するセミナーや講演会に参加し、名刺交換して接点を作る前向きな取り組みも必要と説く。JASIPAで言えば、定期交流会で毎回講演していただく関東経済産業局情報政策課との接点を強化するのが最も身近なやりかたかもしれない(7月の定期交流会でも「経済産業省の情報関連予算について」のテーマで講演頂いた)。文科省の科研費を使う場合は、大学とか国の機関などとの接点の活用も効果的。

公募スケジュールを大まかに把握しておき、公募より前に如何にテーマを把握するかも重要と言う。公募があってからでは提案書作成に時間が足りないことが多い。経済産業省関連では、本予算と補正予算の年2回のタイミングがある。最初は、GW前後の公募が一般的だが2月頃からテーマが見えてくる。省庁によって時期は異なり、国交省や農水省は2~4月に公募がある。もう一つ重要なのは、補助金は事後払いなので、キャッシュフローには要注意と警告を発する。

杉本氏は、JASIPAの会員企業が、公募するなら、提案書作りの支援を行うことはやぶさかではないと言ってくださる。中小企業として、新しいことにチャレンジする場合、補助金の活用は大いに意味あることと、杉本氏は経験に基づいて強調される。

今回の補助金活用のテーマは、JASIPA会員企業経営者にとって非常に関心の高いテーマと思ったが、関心がないのか、関心があっても忙しくて時間がなかったのか、期待通りの参加者が集まらなかった。8月の企画会議で「JASIPA会員のメリットは?」との問題提起がされたが、JASIPAを活性化し、JASIPA会員企業に還元できるメリットを追求するためには、JASIPA会員企業の皆さんのJASIPAに対する期待・希望の声が必須だが、あまり聞こえてこないのが残念で仕方がない。経営者サロンのテーマに関しても、もっとこんなことをやってほしいとの声が欲しいのだが・・・。今回二部では、こんな議論をしたかったが、少し生煮えになってしまった。

「一緒に仕事できて良かった!」企業文化とは?

本の題名が『「一緒に仕事できて良かった!」と部下が喜んで働くチームを作る52の方法』(エイドリアン・ゴスティック/チェスター・エルトン共著、匝瑳玲子訳、日本経済新聞出版。2013.5.24)と言う本がある。

企業の競争優位は「社員」から生まれる、好業績をあげるカギは「企業文化」だ、など言い古された言葉でありながら、かつ誰もが分かっていながら、そのための具体的な方策に悩んでいるマネージャー、経営者が多いのではないかとの問題提起に基づく提言本だ。著者の会社で、2009-2010の2年で、700社800万人分のデータを集積し、高業績を誇る25社(社員30万3000人)を抽出、分析したそうだ。すると、このような高業績企業の文化には例外なく「愛着心、活躍の支援、活気づけ」の3要素が見つかったと言う。

このような企業文化を作る7ステップを示す。

①危機を定義する:最高のマネージャーは、自らミッションを根拠も含めて明確に定義・説明し、そこに危機感を吹き込む。(ただ単に会社の方針だとの説明では納得も賛同もしない)
②顧客に焦点を合わせる:社員がその時々で正しい決断をし、自主的に動くようにするために、社員に気迫のこもった顧客本位の姿勢を要求する。
③俊敏になる:将来を見据えて来るべき困難に取り組み、新たな機会に投資するマネージャーを社員は求めている。
④すべてを共有化する:マネージャーは厳しい事実さえも一刻も早く社員に伝え、議論を奨励する。マネージャーとの信頼関係醸成のためにも。
⑤部下の才能を見出す:偉大なマネージャーは、成功とは自身が偉いのではなく、部下の創意工夫と力量の結果だと信じている。社員を真のパートナーとして彼らが成長できるような機会を作る。
⑥互いに応援しあう:同僚同士が頻繁にお礼を言いあっている。
⑦責任を明確化する:社員に目標達成のための責任と手段を与え、目標達成時には見返りを与える。

この7ステップいずれかが欠けても企業文化の構築は成功しないと著者は言う。

一流の業績を生み出す要素「愛着心」「活躍の支援」「活気づけ」に関しての方策や、社員が喜んで全力を尽くしてくれる方法などにも言及している。要は、マネージャーが、如何に部下の成長をのぞみ、その可能性を適切な指導や適材適所の配置によって実現に向けて支援してやる、その心が通じれば、「一緒に仕事が出来て良かった」と部下が喜ぶ上司になれるということ。

私にも、「この恩師、この上司のお蔭で今がある」と今でも感謝している方々が多くいる。いずれも厳しい方ばかりだが、その指導のお蔭で私は成長でき、今があると信じて疑わない方ばかりだ。恩師は既に亡くなられたが、上司とは今でも親しくして頂いている。