テレビ断食で日本再建!?

「テレビ断食の会」というのがあってその会長である田中暖人氏が、「致知2013.7」‘致知随想’に寄稿されている。毎日報じられる学校現場での問題の根源は「家庭の崩壊」であり、その原因の根っこは「家族同士の会話のなさ」にあると考え、このほど「テレビ断食の会」を立ち上げ、日々の生活から電子メディアに浸る時間を減らし、有意義な時間を取り戻す運動を推進されている。

ある調査では、今の子どもはテレビやゲーム、インターネットなどの電子メディアに週平均で約30時間、多い子は60時間以上も浸っているという。電子メディアの子どもに与える影響として、長時間のテレビ、ゲームにより、子供の脳は休むことが出来ず学習に集中できなかったり、主体的に時間を工夫して使う事を考えなくなってしまうことを指摘している。電子メディアがなければ、外で遊んだり、本を読んだり、絵を描いたりして、時間の過ごし方を工夫する。その過程で創造力や人間とのかかわり方を学ぶ。電子メディアは、「楽に楽しめる時間」をあたえてしまう、言い方を変えれば、「時間の使い方を工夫すること」をやめ、「電子メディアに逃げ込んでいる」とも言える。

田中氏は「日本がいまよりも、もっと良い国になるには家庭の力の再生にある。テレビ断食の運動はまだ緒に就いたばかりだが、この活動を通じて日本の家庭に会話を取り戻し、家庭が本来あるべき姿に戻ってほしいと願っている」と言う。

元NHKアナウンサーで名を馳せた鈴木健二氏(今は84歳)も近著「心づかいの技術(新潮新書、2013.6.20刊)」で、「家族は常にお互いの目を見合わせて暮らしていかなくてはなりません。しかしいま、日本人の目は家族に向けられず、テレビ向けられています。家族が比較的揃うのは夕食の時間ですが、どうしてその中にテレビに映る他人を入れて、家族全員が他人を見つめたり、話を聞いたりしているのでしょうか」と疑問を呈している。続けて「このままでいくと、日本の家族は対話を失って、無言のままバラバラになって崩壊してしまいます。お願いです。せめて食事の時間だけはテレビを消して頂けないでしょうか。あなたにとって最も大切な家族を守るために」と。いま、日本の小・中・高生のテレビ視聴時間は、欧米諸国の同年代の子達の2倍、その一方読書時間は欧米の子の半分だとのこと。鈴木氏は、子供たちに「テレビや、ゲームの時間を半分にして、その分だけ本を読みなさい。テレビだけ見ているとバカになるよ。日本でテレビが始まる前から放送局で働いていて、テレビの中だけでも、36年も番組を作ってきた私が言うんだから間違いないよ」とボランティアでやっておられる子供たちへの授業の終わりに必ず言うことにしているそうだ。

私もついつい食事をしながらテレビを見ていて、家内に注意される(怒られる)ことがある。孫を含む家族で食事する時は、テレビをつけず話に花を咲かせることに努力したい。家内と二人だけの時は勘弁してもらって。

車椅子のアーティストの生き方に感動!

「先天性四肢欠損症。生まれつきほとんど手足が無い(唯一左足3本の指のみ)という重度の障碍を抱えている佐野有美(あみ)さん、23歳。プロの歌手として活動する傍ら、年間約100回、講演で全国各地を飛び回り、多くの方々に感動と勇気を与えている。」(致知2013.8インタビュー記事「笑顔は最高のおしゃれ」より)

幾多の困難を乗り越えられ、「今はとても幸せ」と。その壮絶な人生体験と、そこからつかみ取った信条を聞くと、健常者である自分の生き方の甘さを感じると同時に、生き方のヒントを得ることが出来る。「悩みは、過ぎ去った‘過去’を悔やみ、‘将来’への不安から来るもの。‘いまここ’を見れば悩みはない筈。だから何も悩まず、今にベストを尽くせる」と言われる博多の歴女白駒妃登美さん(http://jasipa.jp/blog-entry/8227)。「自分が置かれた場所で精一杯咲き、そこが和やかな場になるようにすればいい。その力があるのに、ただ環境のせいにして甘えている人が多い」と言われるノートルダム清心学園理事長の渡辺和子さん(http://jasipa.jp/blog-entry/7878)、曹洞宗大本山總持寺参禅講師大童法慧氏の「いま、ここ」(http://jasipa.jp/blog-entry/7593)。まさに、これらの人の言葉を実践し、幸せな心を掴んだ有美さん。早速インターネットで調べると、YouTubeにも数多く登場し、多くの人の感動を誘っている(http://www.youtube.com/watch?v=K3z48SmqPxU)。

食事や着替え、メイクに加えて、パソコン(3級検定資格を有す)の操作や字を書くのも、唯一ある左足の3本の指でこなす。水泳も100㍍泳げる。本人は、小さい頃から両親がいろいろ考えて教えてくれたからと言うが、本人の努力は想像に絶するものだったろう。本人曰く、生まれつき明るい性格だったが、その反面気が強くて自己中心的な性格だった(有美さんが生れたとき、両親は将来を考え心中も考えたそうだが、その時の有美さんの笑顔に、一緒に頑張っていこうと思い直したそうだ)。小学校(普通学校に行った)の時、周囲からいろんなことを言われて言い返していたが、一人ぼっちになった時、一人では何もできないことに気付き、自分の存在を否定しがちになってしまった。中学校でもその気持ちをひきづっていたが、友達の大切さや感謝の気持ちを大切にしながら自分を出していこうと高校に進み、友達、先生に恵まれチアリーダー部に入った。そこでも落ち込むことがあったが、先生からの「もう有美には手足は生えてこない。でも、有美には口がある。だったら、自分の気持ちははっきり伝えなさい。有美には、有美にしかできない役目がある」との言葉に衝撃を受け、チアリーダー部でもステージがある時は司会を務めたり、練習中も声だしに徹するなど自分の役割を見出していった。その先生の言葉が、今の講演活動や、音楽活動に繋がっている(歌手デビューは平成23年。その年に「あきらめないで」で日本レコード大賞企画賞)を受賞)。

有美さんは、講演で伝えたいことはとの質問に、まず「諦めない事」と言う。何かチャレンジする時「出来るか、できないか」よりも「やりたいのか、やりたくないのか」そちらの気持ちの方が大事と。それから「自分がまず輝くこと」。有美さんの座右の銘は「笑顔は最高のおしゃれ」。そして言う。「昔は自分の障碍を嫌ったり、避けていた時もあったが、いまは自分がこの体で生まれてきたからこそ大切な事を感じることが出来ているのかもしれないと思う。確かに日常生活の中で不便を感じることはある。でも、私は不幸ではないなと。いまとても幸せです。」

「いまここ」に精一杯の力を尽くす、その事の素晴らしさを有美さんは教えてくれた。頑張れ!有美さん!

生物に学ぶイノベーション ~生物模倣技術の挑戦~

7月1日NHK「クローズアップ現代」で、「生物に学ぶイノベーション~生物模倣技術の挑戦」が放映された。

「軽く、かたい『アワビの貝殻』の構造をまねした新素材でつくる宇宙船、炭素繊維より軽く、強く、しなやかな『クモの糸』でつくる自動車のボディー、壁や天井を自在に移動する『ヤモリの足』の仕組みを取り入れた強力な粘着テープ。いま、厳しい生存競争の中で生物が進化させてきた機能を模倣する『バイオミメティクス(生物模倣技術)』により、革新的な技術が次々と生まれようとしている。電子顕微鏡やナノテクノロジーの進化により、生物の『神秘のメカニズム』を分子レベルで解明、再現できるようになってきたのだ。

次世代技術として期待される一方で、日本では昆虫学や動物学の研究者と工学系の技術者との連携が弱く、製品化の動きは欧米に大きく遅れを取っているのが現状だ。“生物のパワー”をどう技術開発に生かし、イノベーションにつなげていくのか。加速する企業や大学での研究の最前線を追い、可能性と課題を探る。」(NHK「クローズアップ現代」(生物に学ぶイノベーション~生物模倣技術の挑戦)2013年7月1日記事引用)

 アワビの貝殻は、厚さ1ミクロン以下の薄いセラミックスの板を軟らかい接着剤で貼り合わせた「積層構造」になっていて、厚さ1mmの中に薄い板が1000枚以上重ねられている。貝殻にヒビが入っても軟らかい接着層でヒビが止まり、薄板が1枚1枚少しずつ壊れるのでなかなか割れない。ハンマーで殴っても、車でひいても大丈夫!セラミックスの壊れやすい弱点が克服できる。しかもこの積層構造を作るのに高熱も不要。

蜘蛛の糸も鋼鉄の2~4倍の強度で、かつナイロンより柔軟性がある。日本のバイオベンチャー企業であるスパイバー社(山形県)は、バクテリアにクモの糸の組み換え遺伝子を注入し、培養したバクテリアにフィブロインを合成させることに成功、また、大手メーカーと共同して、この合成フィブロインを「タンパク質繊維」として合成する技術も開発し、蜘蛛の糸試作に成功した。普段使っている化学繊維は、石油から合成されるが、合成時二酸化炭素を出す。廃棄時もバクテリア分解できず地中に残ってしまう。その意味でも。蜘蛛の糸は軽くて、強くて、環境に優しい新繊維と言える。

ともかく、生き残ってきた動植物の摩訶不思議さは、同じNHKの「ダーウィンが来た」を見ても驚く。化石燃料に依存する現在の産業構造では、地球温暖化が避けられない状態になっており、またいずれ枯渇するもの。やっと産業界が「生物模倣技術」に注目し始めたことは、歓迎すべき事と言える。既に世界で実用化研究が始まっている。一歩先んじている日本のリーダーシップが期待されている。

「ネイチャーテック(http://j-net21.smrj.go.jp/develop/nature/archives.html)」に、動植物の模倣技術の紹介がされている。