「不易流行」を考えてみよう

「致知2013.1号」のテーマは“不易流行”だ。総リード文からその意味を考えてみる。

「不易」とは時代がいくら変わっても不変なもの、「流行」とは時と共に移り変わっていくもの。ちなみに日本には200年以上続く会社が3000社あるそうだ。韓国はゼロ、中国は9社と言う。当号にも室町時代、京都の地で発祥し、5百年近い歴史を刻んできた「裏千家」前家元と「虎屋」社長の対談記事がある。リード文では、「何百年も続く老舗には共通のものがあるように思える。一つは「創業の理念」を大事にしていること。その時代その時代のトップが常に理念に命を吹き込み、その理念を核に時代の変化を先取りしている。二つは情熱である。永続企業は社長から社員の末端までが目標に向け、情熱を共有している。三つは謙虚。慢心、傲慢こそ企業発展の妨げになることを熟知し、きつく戒めている。四つは誠実。誠のない企業が発展したためしはない。いずれも不易の基を成すものである。その不易を順守していくところに生命の維持発展がある。」

さらに、「ローマは質実剛健の風や信仰心、勇気、礼節、婦徳といったローマたらしめているものを守ろうとする意識が薄れて滅びたと言う。日本はどうか。日本を日本たらしめている不易を守ろうとしているだろうか」と問題提起をする。

日本を日本たらしめている「日本の誇り」「日本人の誇り」とは何か?東日本大震災で世界から評価された日本人の美質もさることながら、近現代史における日本人の活躍など、もっと教育に取り入れていくべきではないだろうか。当ブログでも、今後とも「日本人の誇り」と言える話題は積極的に掲載していきたいと思う。

企業においても、なんでも流行に飛びつくのではなく、「不易」と「流行」を切り分け、「不易」なもの(企業理念・文化・風土)を情熱を持って守り抜くことが、グローバル時代に生き続ける鍵になるものと思う。

東日本大震災時の自衛隊の活躍には目を見張った

「致知2013.1号」のインタビュー記事に「護国への変わらぬ思い」と題して、東日本大震災の際、約7万人の陸上自衛隊の陣頭指揮に当たった第31代陸上幕僚長(現三菱重工顧問)火箱芳文氏の話があった。自衛隊員の被災者および日本を想う献身的な活躍と、それを統率したリーダーシップに感銘を受けた。

防衛省で幹部会議中だった。地震発生後、東北方面からの情報を受けて、現存する災害対処計画の枠を超えて、全国の部隊を集めることを決断し、各方面の総監に東北地方に向かうように指示を出された。地震発生から30分後には全国の部隊が東北に向かって動き出した。本来、これだけの部隊を動かすには閣議決定による大臣命令が必要だが、処分覚悟で幕僚長の判断で動かしたそうだ。津波対応で水につかりながらの生存者捜索、ご遺体の収容に加えて、飲み物や食べ物などの生活物資の供給・配布にも注力した。トラックも来られないような状況の中で、都道府県からの救援物資を陸上自衛隊駐屯地に集め、航空自衛隊が花巻、松島、福島空港まで運び、それを陸上自衛隊のトラックで被災地に運ぶという自衛隊全体の連携プレーで避難所まで届けることが出来た。

7万人の隊員皆さんのご苦労も並大抵のものではなかった。毎日損傷を受けた何百体と運び込まれるご遺体収容作業をしていると、心的外傷後ストレス障害の発症も予想されたため、メンタルヘルスチームも派遣した。特に原発対応は放射線との戦いの中で、隊員の健康を損なうことが心配だったが、「俺がやります。行かせてください」と使命感に燃える隊員たちが次々名乗りを上げてくれたと言う。あまり効果がなかったと叩かれたヘリコプターからの水かけも日本を護るとの決死の思いで真上から、そしてより近づいて水をかけるという過酷な作業だった。

火箱氏は、隊員たちにはほんとに頭が下がる思いといいながら、「隊員たちがこれら大変な作業をやり始めたからこそ、事故と闘っていた東京電力や東京消防庁など他の省庁の職員の人たちのモチベーションを上げるキッカケになったのではと思う」と言う。「何よりも米国政府が本気になり、トモダチ作戦により強力な支援を開始したという意味では大きかったと思う」とも。

そのリーダーシップと、隊員の使命感に基づく行動の凄さが、周囲をも動かし、より大きな力となって拡がったことを思うと、今回の自衛隊の活動の意義は想像以上のものと言える。火箱氏は、「今、日本を取り巻く情勢は厳しいが、自分の国が如何に素晴らしいかを自覚し、多くの国民がこの誇るべき国を潰してなるものかと思うことで、再び蘇ると思う。すばらしい歴史や文化、伝統と言うものを子供たちにもっとしっかりと教育すべきだ」とも言う。全く同感だ。

SIと運用が消える??!!

日経コンピュータのインターネット記事(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20121031/433944/)に驚いた。日経コンピューター2012.6.7号の記事の再掲だ。退職してから世間の動向に疎くなってしまった。

リード文に『米IBMが満を持して投入した「Pure Systems」は、ハードとソフトを統合した垂直統合型システムだ。IBMはPure Systemsを「エキスパート(専門家)・インテグレーテッド(統合)・システム」と呼ぶ。これまで「門外不出」としてきたシステムエンジニアのノウハウまでハードに統合したことを表す。ユーザー企業は、社内に専門家を抱えたり、外部のシステムインテグレータに依頼したりしなくても、システムを構築し、運用できるようになる。システムの構築や運用に人手が不要なのは、パブリッククラウドも同じだ。クラウドと、メーカーのハード回帰という二つの垂直統合によって今、システムインテグレーション(SI)と運用というビジネスが大きな岐路に差し掛かっている。』とある。IBMが今年2月に発表したらしい。

アマゾンや、グーグルなどクラウド事業者は既に、ベンダーの手を借りずにソフトやハードを開発し、ユーザーに直接サービスを提供している。そのため、IBMなど大手メーカーは、市場をクラウド事業者に奪われてしまいかねないため、クラウドと同様にシンプルに運用できる製品として垂直統合型システムに力を入れている。ORACLEの「ORACLE Engineered Systems」も、ハードとソフトを工場出荷時に組み合わせ、最適化して顧客に届ける垂直統合型システムだ。ORACLE社は、「顧客のIT支出の70%を占めるインテグレーション費用を不要にする」と言う。IBMは「システムの運用にかかる人件費を86%削減できる」と。国産ベンダーも周回遅れで、垂直統合型システムの強化に方向転換し始めたそうだ。日立は2012年末に市場投入を開始、富士通は2013.3までに発売、NECも2012年度中に市場投入すると言う。

「クラウド」の着実な進展に伴う、大手メーカーとクラウド事業者の戦いとも言えるのだと思う。確かに、ユーザー企業は、メインフレームからオープンシステムへの移行に伴い、マルチベンダー構成によってシステムは複雑化し、インテグレーションや運用のコスト増大に頭を悩ませている。そこに登場した「クラウド」はユーザー企業にとっても大きな魅力になってきていると思われる。

内製化(ユーザー自身がシステム部門を保有)が進み、システムインテグレータや運用ベンダーが不要になるのか?この動きは無視できない。