1977年フォード大統領時代、アメリカでは心臓病の死亡率が一位で、癌は二位だったが、心臓病だけでもアメリカの経済はパンクしかねないと言われる程医療費が増大していた(1977年には1180億ドル―約25兆円)が、そんな財政的危機を何とか打開しようということで、医療改革が進められた。そして、その一環として上院に「国民栄養問題アメリカ上院特別委員会」を設置し、全世界からよりすぐりの医学・栄養学者を結集して「食事(栄養)と健康・慢性疾患の関係」についての世界的規模の調査・研究が7年間の歳月と数千万ドルの国費を投入して行なわれ、5000ページに及ぶ膨大な報告がなされたが、それを「上院レポート」又は委員長の名前をとって「マクガバンレポート」と呼んでいる。
そのレポートの中で、「世界で最も理想的な食事は、元禄時代(1700年前後)以前の日本人の食事だ」と結論付けている。それは雑穀を主食とし、海藻の入った味噌汁、旬の野菜と近海で捕れる魚を副食とする食事だ。そして、その報告書を読んだアメリカ人が目覚めたのが和食で、いまではアメリカに1万店以上の和食店が出来るに至っている。
逆にその頃から日本では、アメリカで「食べるな」と警告されたハンバーガーなどのファストフードを盛んに食べるようになったと言う。
これは、「致知2012.9」の「いま日本の進むべき道」の記事の中で、東京大学名誉教授月尾嘉男氏と東北大学大学院教授安田喜憲氏との対談で月尾氏が日本の固有の文化を日本人自身が気づいていない一例として紹介したものだ。
安田氏は、上記話に続いて、「財布を落としてもそのまま戻ってくるという世界でも稀なる国をつくった日本人は、人を信じる心が残っている。その心は縄文と稲作漁労の連綿とした歴史の中で築かれてきたもの」と言っている。アインシュタインが来日した時、「日本人の心の優しさや美しい立ち居振る舞い、正直な心の原点が日本食にあるのではないか」と言ったそうだ。
ほんとに日本人は、自国の事を教えられていない中で、「日本人の誇り」どころか「敗戦国」としての負のイメージに捉われている人が多いと言われている。我々高齢者が、若い人たちに、積極的に日本人の良さ、日本の良さを説明し、海外に出ても自信を持って他国と接することが出来るようにせねばならないと痛切に思う。