付加価値UPが生きる道!

「致知2012.2号」に町田市の「でんかのヤマグチ」の社長が投稿されている。創業30数年を迎えた平成8年、地元に大型量販店が進出するとの話が入ってきた。あっという間に近隣に6店舗も出来、売上が年30%も近くも落ちることが予測され、3~4年で借金は2億円以上に膨れ上がったそうだ。生きるか死ぬかの瀬戸際で、社長が決断したのは、まさに逆転の発想、10年間で粗利率を10%UPし、35%にすることだった。当時大型量販店は平均15%、地元の電気屋が25%程度だったとか。「そんなことできる筈がない」との周囲の声が多かったが社長は「それ以外に生きる道はない」と決断した。

商品を「安売り」ではなく、「高売り」すること。そのためには、商圏をこれまでの3分の一まで絞り込み(行き届いたサービスの限界)、50代からの富裕高齢者層に絞り込んだ。お客を訪問する回数を増やし、家電の使い方などの指導はもちろんだが、本業とは無関係な買い物のお手伝いや、留守中の植木の水やり、郵便物や新聞を数日預かったり、無償で行ったそうだ。

会社のモットーは「お客様に呼ばれたらすぐに飛んでいく」「お客様のかゆいところに手が届くサービス」「たった1個の電球の取り換えでも飛んでいく」。これを1万200世帯のお客に、50名で頑張っているそうだ。良い評判が広がり、目標の粗利率35%は8年で達成できたとか。2億円以上の借金も3年前に完済されたそうだ。

社長曰く「大型量販店の進出がなければ、いまだ安売り競争をやって悲惨な目にあっていたかも知れない。人間はトコトン追い詰められ、地べたを這いずり回るような思いで必死になって取り組むことで道が開ける」と。

もう一つ事例を紹介する。2月19日日経の「日曜に考える」の記事から。中国で最も安定的な成長軌道に乗った小売チェーンはどこか?イオンでも、セブン&アイでもなく滋賀県彦根市の平和堂だ。1990年代初めに滋賀県と友好関係にあった湖南省から同省長沙市への出店要請があった。社内では猛反対を受けたが当時の会長は「内陸部もいずれ成長する」として決断。しかも、スーパーしか経験がないのに、「日本企業なのでブランド品など品質の高い商品を求めるニーズが高かった」ため、ローレックス、シャネルなどを扱う百貨店形式での出店を決断。既存3店に加え、中国各地から出店要請が来ていると言う。これも将来のマーケットを読んだ高付加価値商売への転換の事例であろう。

「安売り競争」に甘んじていると、ますます夢はなくなる(どん底に沈み込む)。マーケットを読み、お客との対話を通して、お客の期待する付加価値で他社をしのぐ優位性を発揮するにはどうすればいいか、真剣に考えたい。

大学の入試改革、教育改革議論に期待!

東京大学の「5年後に秋入学に全面移行」の提言を契機に、国際人育成のための教育議論が活発化してきた。今朝の朝日新聞の「オピニオン(17面)」では、「時期変えるだけで国際人は育たぬ、入試改革の方が先」と題した京都大学松本紘総長のインタビュー記事が掲載されている。松本総長は、昨年当ブログでも紹介しました(http://jasipa.jp/blog-entry/6857)が、「綾の会」を毎年東京で開催され(昨年が20回目)、人と人の絆を広めるきっかけを作られている(昨年は水谷八重子さんも来られました)。学生時代から私も非常にお世話になり、今でも気さくにお付き合いしていただける尊敬する先輩です。

日本経済が世界の中で存在感を低下させている主な原因は、いわゆるグローバル人材が育っていないことにある。グローバル人材とは、英語でコミュニケーションできるだけではなく、日本の歴史や文化を国際舞台で伝えられるような幅ひろい教養を身につけた人材だ。真に創造的な仕事が出来るようになるには、基礎的な知識の集積が不可欠。現在の入試のような限られた少数科目の点数競争ではダメで、複雑な問題にぶつかっても解決策をみつけだせるような柔軟で強靭な思考力こそ必要だ。自分に自信を持って、何かにチャレンジした経験を持ち、意欲のある人が必要だ。

そのために高校と連携して、受験科目に力を入れるだけではなく、実験や発明、芸術、スポーツ、ボランティア活動なども含め、多様な活動をさせているかどうかも評価する。大学と高校で「こんな人材を育てたい」という目標を共有化し、その活動を評価し、入試にも反映する。連携高校の選定には多くの議論を呼ぶだろうが、これ位の改革をやらないと、点数偏重の教育から脱皮は出きないし、チャレンジ精神に富んだ創造性の高い生徒は育たないとかなり意欲的だ。

さらには、5年間全寮制の大学院の創設を2013年度に実施するそうだ。20人程度に絞り、次代のリーダー育成のために、研究だけではなく幅ひろい教養も身に着け、海外留学経験を積ませ、国内企業や官庁で自ら立案したプロジェクト経験も積ませると言う。ほぼすべての授業は英語で、恐らく海外留学生も今以上に受け入れるものと思う。

現在、日本の人口当たりの研究者数やGDPあたりの科学技術研究費は世界1,2位を争っているが、人材の質の低下に歯止めがかからない。今やまったなしの改革が求められている。今回の記事で京大総長の覚悟を感じた。松本総長を知る人は、この記事を読んで本気度に大きな期待を持たれたと思う。東大の「秋入学」を契機とした主要12大学の協議会が発足し、その中で入試改革や、教養教育の在り方など、大学教育が抱える様々な問題を議論したいと言われている。早期改革実行を期待したい。

ギャングスターズ水野監督勇退!

自らの一生を京都大学アメリカンフットボールに賭けた男、水野監督が昨年11月に監督を勇退されたとの記事が日経ビジネス(2012.2.13号)に掲載されている。足掛け36年間、ギャングスターズの監督を務められたそうだ。水野監督の人生の半分だ。ギャングスターズが名を馳せたのは、1984年初めて甲子園ボールで大学日本一となり、そしてライスボウルでいきなり社会人を破り実質日本一となった時。1997年まで6回学生日本一に輝き、そのうち4回は社会人を破って日本一となった(これは日大フェニックスに並ぶ記録)。この頃がピークで、その後は立命館、関西学院などに押され、残念ながら表に出なくなっていた。私が1995年東京に転勤になってすぐ、当時のアメフト部部長の西川教授(その後、大阪工業大学の学長になられ、東京に来られた時に㈱NSDの大工大OBと対談して頂いた)から券を頂き、家族で東京ドームに応援に行ったことがある。その時は残念ながら社会人(リクルートシーガルズ)に負けたが、それがライスボウルでの最後の試合となったようだ。

水野監督は、私学と違って大学から何の補助もなく(グラウンド提供だけ)、部員と一緒に学習塾を経営して資金としながら部の運営をされていたと聞く(お酒も飲まれない)。関西学院などと違って、部員は初めてフットボールに触ったという素人ばかり。なぜ、そんな集団が日本一になれるのか、いろんな意味で水野監督の記事がインターネットでも掲載されている。

神鋼ラグビー部の平尾監督は。試合の戦法やチームの有り方などすべて選手の自主性に任せることによって、7連覇を達成したという。しかし、当時の選手は名だたるラグビー名門校の名選手であり、自らの力を知り、己のプレーを評価できる高度なレベルの選手ばかりであった。一方、京大の選手は、全く素人のため、自主性に任せることは出来ない。「やるべきこと」「やってはいけないこと」を明確にし、その基本を徹底的に、強制的にやらせる。実戦練習を求めがちだが、実戦は相対的なもので、相手が強ければ負けてしまう。だから基本練習を重視する。さらには「チームの求めるレベル」も明確に示し、参加すること自体は個人の意思に任せる。そして、己の力、己の限界を知り、自分で自分を問い質す事が出来る人間を目指して、己を鍛えていく。そうすれば、「やれないことはしない」「やれることは徹底してやる」という方策が身体で覚えられる。

このような経験を踏まえて、今の教育にも疑問を投げかけられている。「子どもの目線で、子どもを尊重する教育」に対して、子どもだった経験のある大人たちの厳しい指導も必要と主張される。強制的に世の中の厳しさを、大人たちの経験則に則って教えるべきとも言う。

しかし、素人ながら資質のある部員を如何に集めるかがポイントとなる。そのため、高校を回り、人を掘り出す努力も欠かせない。強い時は結構素質のある部員を集めることが出来たが最近は少なくなってきたそうだ。しかし、今年のギャングスターズは優勝できる戦力になったので、勇退されたそうだ。今年の活躍に是非期待したい。