「日本の課題」カテゴリーアーカイブ

やせた女性の栄養はたりているのか?(市民公開講座の案内)

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当ブログでも紹介した「お産を控えた女性はダイエットに注意せよ!(福岡秀興早稲田大教授)」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/2077)の福岡君(高校同級生)の主催する学会(日本DOHaD学会:生活習慣病胎児期発症起源説)が市民公開講座を開催する。彼のあいさつ文からその意図を紹介する(一部抜粋)。
子供が健やかな一生を過ごすためには、栄養をはじめ社会環境が如何にあるべきかは、私たち世代の責務として真剣に考えねばならない問題です。その基本を考えるのが聞き馴れない名称ですがDOHaD説(Developmental Origins of Health and Disease)なのです。妊娠してから胎児期、乳幼児期という人生最初の僅か1000日間に環境と遺伝子との相互作用により、健康や種々の疾病リスクが大きく決められていくことが明らかとなってきたのです。それを示す概念であって、胎児プログラミングとも言われています。約30年前David Barker先生が、「成人病(生活習慣病)の起源は胎児期にある」という考え方を提示されて膨大な研究が推進されてきており、今や21世紀最大の医学概念の一つとまで言われています。(中略) 翻って日本では出生児の体重は先進工業国中でも著しく低く、今後生活習慣病の更なる増加が危惧されています。これに対応するには多方面の方々と共通認識のもとに一致して進まねばなりません。社会的責任の重さを考えながらが、産婦人科、小児科、内科、精神科などの臨床家、基礎生物学や農学の研究者、栄養学・看護学、保健等に携わっている多くの方々と共に、DOHaDを共に学び、社会に貢献し得る学際的な学会にしたいと望んでおります。
少子化問題以上に、“女性のやせ問題”が重要と訴え続ける福岡君。「成人病(生活習慣病)の起源は胎児期にある」との警告に耳を傾ける機運は日本では盛り上がらず、欧米に立ち遅れている。
8月28日に開かれる市民公開講座の案内を冒頭に添付しておきます(PDF文書)。妊婦の皆さん、これから子供を産みたいと考えている女性、そして日本の将来に対して危惧されている方々などのご参加を期待しています。
低体重児問題に関する福岡君の記事に関しては、冒頭のものに加えて下記のものも参考にしていただきたい。
「小さくなる赤ちゃんに警告!」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/6225)
「痩せる女性、膨らむ危険~生まれる子にも影響~」(http://okinaka.jasipa.jp/archives/2376)

高プロ人材のフリーエージェント社会は到来するか?

7月16日の日経朝刊1面トップに「プロ人材 移籍制限歯止め~働き方 自由度高く~」と題した記事が目に留まった。前文に
企業と雇用契約を結ばずに働くフリーのプロフェッショナル人材らの労働環境改善に向け、公正取引委員会は独占禁止法を活用する力関係の差を背景に企業が転職制限をかけたり引き抜き防止協定を結んだりして人材を囲い込む恐れがあるためだ生産性の高いプロ人材が働きやすい環境を整備することは日本の国際競争力強化にも欠かせない。
とある。最近テレビで、ラグビートップリーグで、移籍選手が移籍元の了解がなければ移籍先で1年間の試合停止を余儀なくされるとの制度が問題視され、見直しを検討するとのニュースがあった。日本代表にもノミネートされるような選手が1年間試合停止となるのは、世界と戦う日本にとって大きな損失だとの認識だ。
日経の記事によると、フリーランスの人材は企業と対等な関係で仕事を受ける専門職で、日本で約1122万人いるという。この中で、専門性が高いプロ人材と呼ばれる人や独立した自営業・個人事業主らはほぼ3分の1の約390万人だそうだ。米国ではフリーランス全体で約5500万人に上り、日本は欧米などに比べて専門性を持った人材活用が遅れている。
このような課題に対して、今まで独占禁止法は、原材料(鉄鋼など)に限定していたのを、スポーツ選手も含めたプロ人材にも拡大適用し、プロ人材を囲い込むための不当な取引条件や、獲得競争による報酬上昇を回避するためのカルテル是正を行う。例えば、仕事を発注する条件として競合他社との取引を長期間制限したり、自社で使う人に仕事を発注しないよう同業他社に求めたりすれば「拘束条件取引」や「取引妨害」になる可能性がある。欧米ではすでに労働市場への独禁法適用は進んでいる。オランダでは医師の引き抜き防止協定もある。
「フリーエージェント社会の到来~組織に雇われない新しい生き方~」(ダイヤモンド社、ダニエル・ピンク著、池村千秋訳、2014.8発行)によると、米国では組織に忠実に使える「オーガニゼーション・マン(組織人間)」から、組織に縛られない「フリーエージェント」が労働者の新しいモデルになりつつあるという。既に教育の現場も変化し、18歳未満の子供の10人に一人が在宅教育を受けている事実もあり、プロフェッショナル性をより高度なものにするための教育制度も、徒弟制度などが復活したり、高校をスキップして大学に行くなど多様な選択ができるようになるとの予測や、キャリアの考え方や働き方、部下の監視を主体とする管理職の価値の低下、定年退職の考え方の変化などが起こるとピンク氏は主張する。
近い将来さらにグローバル競争が激化し、仕事の高付加価値化が進み、AIが仕事の質を変える中で、1企業内で市場が要請する高度化人材を揃えるのはかなり困難になるのだろう。日本でもすばらしいプロフェッショナル人材や、個人事業者が力を発揮しているが、その評価と流動性は米国などに比べて十分ではないように思われる。政府は骨太方針「人材投資」を掲げる。同時に人材への独禁法適用など、制度的な充実も図りながら、企業と連携しながら高度プロフェッショナル人材の育成、流動化の促進を図っていくことが求められている。

小さくなる赤ちゃんに警告!

今朝の朝日新聞に大きく高校時代の友人が写真入りで掲載されていた(19面オピニオン&フォーラム)。以前から低体重児問題をテーマに全国的に活動を展開している早稲田大学理工学研究所研究院教授福岡秀興君だ。タイトルは“小さくなる赤ちゃん~妊婦の栄養不足、行き過ぎに懸念、社会全体で対応を~”。当ブログでも彼を応援する意味で2度記事を掲載した。

  • ・お産を控えた女性はダイエットに注意せよ! https://jasipa.jp/okinaka/archives/2077
  • ・痩せる女性、膨らむ危険~生まれる子にも影響~ https://jasipa.jp/okinaka/archives/2376

朝日新聞記事のリード文を下記する。

日本の赤ちゃんが小さくなっている。折しも、生まれたときの体重が少ないと、将来、生活習慣病などによるリスクが高くなるという研究が欧米などで相次いで報告されている。出生前の栄養が次世代に与える影響について、早くから警鐘を鳴らしてきた福岡秀興さんに聞いた。

2500㌘未満で生まれる赤ちゃんの割合が増え続け、2013年には10人に一人となり、先進国の中で日本が最も高く特異な状況になっているという。「低出生体重児」は糖尿病や高血圧など生活習慣病に将来かかる可能性が高くなるとの研究が欧米で数多く出され、世界では対策が進んでいるそうだ。たとえばフランスでは社会問題になっている拒食症を予防するため、やせ過ぎモデルを規制する法律が2016年1月、公布された(モデルの活動に、健康な体重、体格であることを示す医師の診断書の提出を義務付け)。日本では対策が遅れており、福岡君が参加している世界産婦人科機構では、日本の将来を危ぶむ声が上がっていると言う。

彼とは先月も会って話をしたが、多忙な日々を送る中、日本の将来を危惧して、低体重児問題への取り組みを真剣にかつ精力的に推進している。日本政府もこの問題を受け止め諸外国と同様早く対策を練って欲しいと切に思う。