「日本の課題」カテゴリーアーカイブ

世界的な異常気象への対応は?

9月になってからも、全国的なゲリラ豪雨と連日の竜巻被害に見舞われている。今年の夏は特に暑かった。8月12日に高知県四万十市江川崎で日最高気温が41.0度になったのをはじめ、最高気温の記録を更新した地点は143地点もあった。気象庁は、長期的な気温の上昇や猛暑日の増加は二酸化炭素などの温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化の影響が現れていると指摘している。

日経ビジネスのインターネット記事で「猛暑、渇水、豪雨でも忘れ去られた温暖化対策(大西孝弘8.29)http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130826/252591/?mle」というのがあった。京都で行われた第3回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP3)で2012年までの温室効果ガス削減目標が設定されたが、アメリカが離脱し、中国も参加せず、実効性のある目標にはなり得なかった(京都議定書)。2009年12月に2013年以降の目標設定の会議(COP15)がデンマークで開催されたが、各国の思惑が入り混じり、結局目標設定が出来ていない。欧米でも、中国でも、異常気象に伴う被害は増えつつあり、子供や孫の時代、あるいはその先の時代まで考えると、各国もいがみ合っている余裕もないと思われるが、各国首脳は何を考えて行動しているのだろうか?自国の都合だけを考えず、地球的視点でどうして考えないのだろうか? しかし、国内でも新政権になって、経済に関する成長戦略は言っても、温室効果ガス削減問題に関しては、全くと言っていいほど話題になっていない。安倍政権になって、民主党時代の国際公約25%削減は撤回したが、福島原発問題があり、10年かけて原発含めたエネルギー構成を考えるとし、温室効果ガス削減目標はいまだに設定されていない。目標数値の検討は11月のCOPに向けて始まったばかりだとか。日本は京都議定書に則って、各企業では相応の努力をし、その成果は出ていると言う。その意味では、日本の技術力を掲げて、世界をリードするくらいの気概を持ってCOPに臨むことを期待したい。

安倍政権は、民主党政権時代があまりにひどかったこともあり、支持率は高いが、安倍政権は「脱デフレ」の成長戦略一辺倒(これも大事なことだが)で、中長期的な視点での課題に関してはあまり興味がないように見受けられる。次世代につけを廻さない、そのための財政再建&社会保障制度改革、地球温暖化対策にももっと注力すべきだと思うが・・・。今、福島原発の汚染水問題が世界的に注目を浴びているが、自民党幹部から「民主党時代に東京電力に任せっきりだったためこうなった」との発言が出ているが、安倍政権になってから8カ月たつまで放置していた責任はどうなるのだろうか?「政府が前面に立ってやる」と決めれば、「責任はとれるのか」との懸念が党内に渦巻く。「如何に責任を逃れて、長期政権でいられるか」と保身のための発言とも思えるが、国民の為、地球人の為の視点で、何をするかを先に考えるのが政治家ではないだろうか?「政治不信」で投票率がどんどん低下する現象を自分達の責任と考えている議員はどれほどいるのだろうか?

それにしても、ゲリラ豪雨や竜巻被害に突然遭われた方の無念さを思うと、この被害を拡大させないための地球規模での温室効果ガス削減活動は待ったなしの状況だ。世界をリードするのは省エネ技術が最も進んでいる日本しかないのではなかろうか。孫の時代も、平穏な日々が送れる地球であるために。

テレビ断食で日本再建!?

「テレビ断食の会」というのがあってその会長である田中暖人氏が、「致知2013.7」‘致知随想’に寄稿されている。毎日報じられる学校現場での問題の根源は「家庭の崩壊」であり、その原因の根っこは「家族同士の会話のなさ」にあると考え、このほど「テレビ断食の会」を立ち上げ、日々の生活から電子メディアに浸る時間を減らし、有意義な時間を取り戻す運動を推進されている。

ある調査では、今の子どもはテレビやゲーム、インターネットなどの電子メディアに週平均で約30時間、多い子は60時間以上も浸っているという。電子メディアの子どもに与える影響として、長時間のテレビ、ゲームにより、子供の脳は休むことが出来ず学習に集中できなかったり、主体的に時間を工夫して使う事を考えなくなってしまうことを指摘している。電子メディアがなければ、外で遊んだり、本を読んだり、絵を描いたりして、時間の過ごし方を工夫する。その過程で創造力や人間とのかかわり方を学ぶ。電子メディアは、「楽に楽しめる時間」をあたえてしまう、言い方を変えれば、「時間の使い方を工夫すること」をやめ、「電子メディアに逃げ込んでいる」とも言える。

田中氏は「日本がいまよりも、もっと良い国になるには家庭の力の再生にある。テレビ断食の運動はまだ緒に就いたばかりだが、この活動を通じて日本の家庭に会話を取り戻し、家庭が本来あるべき姿に戻ってほしいと願っている」と言う。

元NHKアナウンサーで名を馳せた鈴木健二氏(今は84歳)も近著「心づかいの技術(新潮新書、2013.6.20刊)」で、「家族は常にお互いの目を見合わせて暮らしていかなくてはなりません。しかしいま、日本人の目は家族に向けられず、テレビ向けられています。家族が比較的揃うのは夕食の時間ですが、どうしてその中にテレビに映る他人を入れて、家族全員が他人を見つめたり、話を聞いたりしているのでしょうか」と疑問を呈している。続けて「このままでいくと、日本の家族は対話を失って、無言のままバラバラになって崩壊してしまいます。お願いです。せめて食事の時間だけはテレビを消して頂けないでしょうか。あなたにとって最も大切な家族を守るために」と。いま、日本の小・中・高生のテレビ視聴時間は、欧米諸国の同年代の子達の2倍、その一方読書時間は欧米の子の半分だとのこと。鈴木氏は、子供たちに「テレビや、ゲームの時間を半分にして、その分だけ本を読みなさい。テレビだけ見ているとバカになるよ。日本でテレビが始まる前から放送局で働いていて、テレビの中だけでも、36年も番組を作ってきた私が言うんだから間違いないよ」とボランティアでやっておられる子供たちへの授業の終わりに必ず言うことにしているそうだ。

私もついつい食事をしながらテレビを見ていて、家内に注意される(怒られる)ことがある。孫を含む家族で食事する時は、テレビをつけず話に花を咲かせることに努力したい。家内と二人だけの時は勘弁してもらって。

ハチドリのひとしずく

新日鉄の大先輩で、いつもご指導いただいている方から、お知り合いの方の講演録を送って頂いた。元外務省の医務官でスーダンでご活躍の方(K氏)の話だ。その講演録の最後に「ハチドリのひとしずく」が紹介されていた。早速インターネットで調べると、南米のアンデス地方に昔から伝えられてきた話だとの事で、それを辻信一氏が翻訳して絵本として出版された。その全文を下記する(出典:「ハチドリのひとしずく」辻信一監修,光文社刊,2005)。

森が燃えていました
森の生きものたちは われ先にと 逃げて いきました
でもクリキンディという名の
ハチドリだけは いったりきたり
口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは
火の上に落としていきます
動物たちがそれを見て
「そんなことをして いったい何になるんだ」
といって笑います
クリキンディはこう答えました
「私は、私にできることをしているだけ」

この話に共感した坂本龍一さん、中島朋子さん、C.W.ニコルさんといった著名人からの「私にできること」のメッセージや、地球環境のために誰でもできるアイディアも盛り込まれた構成の本だそうだ。辻さんからこの話を聞いたケニアのワンガリ・マータイさんも“ハチドリ”となって、各地でその話を伝え、ひとしずくを広められたとか(マータイさんは2011年亡くなられた。日本語の「もったいない」を世界語にされたかたで、当ブログでも紹介http://jasipa.jp/blog-entry/6826))。私たち一人一人はちいさなハチドリの力に過ぎないかもしれませんが、この無力感やあきらめを吹き払い、しっかりと目を開き問題と向き合い、「わたしにできること」について考え、行動し、それらを積み重ねてゆくことができるとしたら燃えている森の「火」を消す力にだってなれるかもしれません。

2006年頃この話がブームになって、若者の心を動かし、その閉塞感を打ち破り、ボランティアや、環境問題へと行動を駆り立てたとインターネットにある。講演されたK氏は、スーダンで医療活動に携わられているが、たまたま帰国していた時に東日本大震災が起こり、すぐさま救急車で東北現地に入り、医療活動を展開されたそうだ。K氏は言う。『「ハチドリのしずく」の話は、自分の出来ることをやることの大切さを教えている。しずくの大きさに違いはあるかもしれないが、やろうとする気持ち、志、ハートに差はない。私は東北とスーダンで自分なりに出来る一滴を垂らそうとしている。皆さんもそれぞれのステージで一滴を垂らしていただき、互いに手を携えていけば日本の今の大変な状況も乗り越えられると信じている』。

高年齢化問題が叫ばれている中、元気なうちに「自分のできることをやる」を実行に移し、社会のお役にたつことが出来れば、それぞれが一滴でも、大きな力になること必定。さて何からやっていこうか?真剣に考えたい。