白黒写真をカラー化すれば・・・(戦争体験を引き出す)


8月15日の終戦記念日を中心に、戦争に関する報道が盛んだ。戦争(被爆)体験者が高齢化するにつれ、後世に悲惨な体験を継承する機会が減ることが懸念されている。そのような中で、戦争体験者に詳しく体験を語ってもらうためのある活動がテレビで報道されていた。
東京大学大学院教授渡邉英徳氏で、情報デザインとデジタルアーカイブによる記憶の継承のあり方について研究されている方の話だ。
以下、渡邉氏と、地元の広島において、戦前に撮影された写真をカラー化し、戦争体験者との直接の対話の場をつくりだすことで、実空間における“フロー”を生成する活動に力を入れている若干19歳の庭田さんのインターネット記事(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66484)から抜粋して報告する。

戦前・戦中の写真はもっぱらモノクロフィルムで撮影されている。カラー写真が当たり前の日常となっている今、白黒写真を見てもあたかも時代が止まっている感じを受け、記憶が凍結してしまうのではとの問題認識があった。そこで、筑波大学の飯塚里志氏らが開発したAI技術を応用し、白黒写真のカラー化を2016年から始めた。これは、約230万組の白黒・カラー写真から学習したAIによって写真を着彩するというもので、ウェブサービスとして誰でもかんたんに利用できるとの事だ。
原爆投下の写真、空爆で炎上する呉の街、焼きただれた広島の市街地を眺めるカップルの姿、また戦前の桜見に行った家族の写真など、白黒とカラー化されたものを比べると、確かに現実味を帯び、記憶が蘇る契機になると思える。上記記事に掲載の写真の一部を紹介する。

渡邉教授は現在も、主にパブリックドメインの写真をカラー化し、Twitterに投稿することで“記憶を引き出す”活動を続けている。ユーザからは大きな反響を得ており、多数のリプライをいただいているそうだ。
庭田さんは、広島平和記念公園が所在する中島地区中心に、元住民の協力を得て、 戦前に撮影された白黒写真をカラー化し、所有者との直接の対話を続けている。高齢となった元住民たちを何度も訪ねて、じっくりと対話を重ねながら、今まで思い出せなかった「記憶」を蘇らせてもらい、その記憶を「記録」し、次世代へと継承していく活動を継続している。

戦後74年、当時20歳の人が今は94歳。もう10年もすれば戦争体験を語れる人はいなくなる。二度と悲惨な戦争をしないためにも、また核廃絶のためにも、上記のような活動は、次世代の子供たちのためにも非常に意義ある活動である。応援したい。