”人材戦略”の開示を投資家が要求し始めた!(日経)


6月25日の日経朝刊の社説「投資家に支持される人材戦略を競え」に目が留まった。先先週末、ある企業から講演を依頼され、まさにこれからの時代の急激な変化に対応するには、イノベーション力をいかにつけるか、エンゲージメント度(仕事に対する熱意)をいかに上げるかが大きな課題であり、人材育成がより重要だとの話をしてきたところだった。特に生産性、デジタル化で後れを取っている日本では、AI人材、DS人材の育成が急がれている中で、今回の日経記事で、投資家も「従業員の力を引きだす工夫、それがどのように業績につながるかと言った”人材戦略“の具体的な開示を求め始めている」との情報提供だ。

社説では、「女性管理職比率や、教育訓練費用、人事処遇制度などの情報を単に並べるだけではなく、経営戦略に照らして、どんな人材を確保する必要があるのか、成果主義制度がどのように収益に結びつくのかなど、人材活用の工夫と企業の成長力の向上と連動させて説明することが大事」と指摘する。
海外企業は人材をめぐる情報開示で先行する。例えば、独SAPでは、社員のワークライフバランスを調査し、仕事への熱意や組織に貢献する意欲を“エンゲージメント指数”として算出し、指数と業績を関連付けて開示しているそうだ。

同じ日の日経6面「Deep Insight」“Y・Z世代は知っている”で、やがて働き手の多数派となるミレニアル(Y)世代(今年28~38歳)と、それに続くZ世代(9~22歳)が、ITリテラシーが高く、新しい発想とSNSなどを通じたネットワーク力で今まで誰も想像しなかったビジネスを生み出すとの評価が高まりつつあるという。既に来年の米国大統領選でY世代候補が初めて現れ、日本では、“ESG投資に積極的”とされるY,Z世代の投資家の動きが関心を呼んでいると言う。そのような中で事例として挙げられているのが、社員のエンゲージメントを即座に測定するサービスで、働き方改革の追い風もあり、2年間で1000社近い顧客を獲得したという転職求人メディア「アトラエ」(18年に東証1部上場)だ。これを開発したのがY世代の4人の社員だそうだ。同社の社員(約50人)の5分の3がY世代、5分の1がZ世代だ。同社の新居CEOは「ニーズに敏感で、ITを使いこなせる人材だからこそできる技術革新。こういう人材を年功序列で埋もらせる経営であってはいけない」と話し、組織運営も社員の間に上司と部下の上下関係のない”ホラクラシー組織“を導入している(https://jasipa.jp/okinaka/archives/8774)。

生産性やエンゲージメント度で世界に後れを取る日本は、特にイノベーション力を高めるため、社員のやる気を如何に高めるかが喫緊の課題だ。何か不都合なことがあると部下のせいにする某大臣は官僚のエンゲージメント度を下げ、官僚の仕事のレベルも下げていると思われる。これを反面教師の一つの事例として、企業には、人材育成にもっと力を入れ、やる気をイノベーション力につなげる施策が日本の発展のためにも求められている。