社会派「B企業」の逆襲(日経)


当ブログでも、リーマンショック後、企業の利益一辺倒の経営から、社会的責任を全うする企業への変革が起こりつつある事象を紹介してきた(CSV経http://okinaka.jasipa.jp/archives/4857社会的インパクト投資http://okinaka.jasipa.jp/archives/4496)。6月27日日経朝刊7面記事「核心」にも同じ趣旨の「社会派“B企業”の逆襲~渋沢栄一に学ぶ新興国~」が掲載された。翌28日にも日経6面の「GLOVAL EYE」に「”慈善“組み込む新経営モデル~米セールスフォースが主導~」との記事があった。

“B企業”のBとは“benefit(恩恵)の意味だ。リーマンショックを契機に、株式市場の求めに応じて短期的な利益を極大化する企業に対し、米国でも社会を良くする企業(B企業)が評価され始めたと言う。株主から「研究費を配当に回せ」と迫られても「うちはB企業だ」と一蹴できるようになった。2010年以降米国の30以上の州がB企業の法的な枠組みを整え、2000社以上がその地位を得た。民間でも米国NPOがB企業の認証を進めており、米国含め世界で2000社近くを認証したそうだ。ウォール街でも、当時の金融機関に対する規制強化が収益を圧迫し、社会を敵に回した代償を払っており、存在感を増しているのはかって「理想先行」と軽んじられ、文字通りB級扱いされていた社会企業派の方と言う。筆者(論説委員梶原誠氏)は、「社会に役立つ経営が主流になれば、社会的な問題が多く企業が活躍する余地の大きい新興国から世界的な企業が出てくる」と予測する。そして、インドのバンガロールで糖尿病の治療機器を開発する「ジャイナケア」を紹介する。インドの糖尿病患者は世界2位の6900万人に達し、半数は所得の低さから受診すらしていない。該社は自宅で手軽に治療できる機器を開発し、1回の検査費用を1㌦以下に抑えた。インドで成功すれば、インドに次ぐ糖尿病大国米国に逆上陸することも視野に入れている。そんな企業に米国とカナダの投資家は昨年400万㌦出資した。投資は「業績」ではなく、「社会」の看板だった。

そんな新興国が日本の企業風土に学ぼうとしていると言う。5月トルコと日本の経営学者が東京に集い、渋沢栄一の理念をトルコ企業にどう応用できるか討論した。8月には世界の経営史学者を集めてノルウェーで開く会合でも渋沢経営の新興国への応用を取り上げるそうだ。「社会あっての会社」との渋沢の発想がB企業と重なるのだ。筆者は、英国のEU離脱で世界経済が一気に不透明になった今、戦略の練り直しを迫られる企業の経営者は「社会」を軸に据えなければならないと主張する。

セールスフォースの”慈善“経営モデルは有名だ。マークペニオフCEOは「”慈善“を経営戦略に組み込んだ企業文化が最高の人材を獲得し、離職を防ぐことに繋がっている」と言う。該社は、CRMをNPOに無料か、割引価格で2万8千以上のNPOに提供し、また社員には年7日有給で慈善活動に当たらせている。現在シリコンバレーを中心に700社以上が同様の取り組みを採用しているそうだ。

経済成長(GDP)、利益を第一義の目的とする経営戦略は見直しを迫られている。

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