25日のNHK番組「クローズアップ現代」のテーマが「共感力」。興味を持って見た。SNSの“いいね!”に代表される「共感」の力を、購買力強化や、企業内の組織改革、はては警察の警備力強化に活かす動きが広がりつつあるとのことだ。
日本ハムの“ハム係長”がソーシャルメディア(Face Book?)上で人気を博している。2年で6万人近いファンを獲得している。つぶやいて共感を得るのは、社長や部長ではなく、中間管理職の係長位が親近感を持ってもらえるのかな、と言うことでハム係長。「昨夜は調子にのって飲み過ぎました」、「今日は給料前でとても厳しいです」などとつぶやく。特に女性のファンが多いとか。
富士フィルムは、エンゲージメント率に注目した宣伝戦略をとる。商品説明に関心を持った消費者が、ソーシャルメディアの中で共感を示す、““いいね!””などのボタンを、どれだけ押してくれたかを示す割合だ。この値が高くなるほど、商品を購入する頻度が高くなる傾向があると言う。宣伝臭さが漂い出すと、とたんに消費者はサイトから遠ざかり、共感が失われてしまうため、発信内容には季節の話題をいれるなど工夫しているそうだ。
パナソニックは「食洗機」の販売戦略に活用している。伸び悩んでいる小型食洗機の販売戦略のため、夫婦を対象に、家事に関する意識調査を行った。“家事代行を頼むとしたら、どの家事か?”、“苦痛を感じる家事は何か?”など、質問は多岐に渡る。その中で、食器洗いが1位になった質問に、目をつける。「夫婦で押しつけ合いになっている家事」、という質問だ。この結果を、マスコミやインターネットで発信すると、食器洗いが夫婦で押しつけ合いになっているという情報は、自然に数多くの共感を獲得し、ネットを通じて広がっていった。いつのまにか、食器洗い機が夫婦間の問題解決に最適という考えを、若い夫婦世帯を中心に作り上げました。販売台数は、前の年に比べ、22%も増加したそうだ。
先日、サッカーW杯決定の際の渋谷駅前の警備で有名になった「DJポリス」が、中止になった葛飾の花火大会でも、中止になってがっかりする観衆の誘導で大きな役割を果たしそうだ。「折角の晴れ着が雨にぬれてしまいましたが、家に帰ったら温かい風呂に入って風邪をひかないように!」の言葉に、観衆から「頑張って」との声が返ってきた。まさに今までの力の警備から、「共感力」を重視した警備に変更した成果だろう。サッカーでも「ほんとうは警察官も喜んでいます」に共感を覚えた人も多かった。昨夜の隅田川花火大会(30分ほどで突然の雷雨で中止)でも活躍したことだろう。
企業の文化を変えた実例も紹介された。関東圏で展開するスーパーマーケット「カスミ」。社員満足度調査で、「この職場を知人や友人に勧めるか」の問いに、「薦めない」が「薦める」の2.5倍と言う結果に社長は、風通しのいい組織にするためにソーシャルメディアによる「共感」の活用を進めた。パートの従業員、社長や会長、誰でも、売り場の改善策などを書き込むことができ、そのアイデアを応援するコメントや賛同を表明する“いいね!”によって共感している人が社内にいることを一目で分かるようにした。すると社員のやる気が一変し、パートで働く主婦たちも、売り場の改善を自発的に検討、主婦の目線を生かしたアイデアが、次々と出るようになった。
静岡県牧の原市での防災計画討議の際、参加者の間で意見の対立があり、なかなかまとまらなかったが、ファシリテーターに頼んで、会議の進め方を変えたところ、参加者がお互いの意見を聞くようになり、「対立から歩み寄りの姿勢」への変化があったそうだ。会の初めに「『実は私は』ということで、ちょっと秘密を暴露する自己紹介をしていただきたいんですね。」とのファシリテータの誘いで、「1年前まで、私は体重86キロありました。この1年かけて、ダイエットに成功して、今は69キロ。」との参加者の発言に「すばらしいですよね、すごいです。」と返ってくる。共感が生まれると、自然と相手の意見を聞くようになり、自分の考えを一方的に押しつけなくなる。こうして、建設的な議論を積み重ね、住民の合意を作り上げてきたと言う。
“共感力”、会社を「燃え上る集団にする」ヒントが隠されているかもしれない。期せずして、今朝(28日)の日経9面に世界的なマーケティング学者コトラーの「マーケティングは日本を救うか?」の記事がある。その中で、「2030年には、企業の広告費の5割がSNSで占めることになる」と予測している。