“社会的インパクト投資”が世界に広がる???


2月29日の日経朝刊1面「新産業創世記~難題に挑む2」の記事の中の一文に「“社会的インパクト投資”が世界に広がる」とあった。2013年のG8(主要8か国首脳会議)で英キャメロン首相が普及を呼びかけ脚光を浴びた言葉らしい。インターネットで調べると定義は

教育や福祉などの社会的な課題の解決を図ると共に、経済的な利益を追求する投資行動

とある。記事では、塩釜市の「愛さんさん宅食」を紹介している。東日本大震災で身寄りを亡くしたり、家族が県外に働きに出たりして残された高齢者を支えるために食事を宅配する2013年に立ち上げた会社だ。50人の従業員はシングルマザーや障害者。従業員の訓練や、調理や配送の効率化を行い、採算ラインに乗ってきたと言う。同社を支えるのがビジネススクール大手グロービスの堀義人代表が立ち上げたファンドだ。「社会に与える前向きなインパクトと事業収益の両方を考えた。」と言う。

利益成長のみを追うベンチャー投資とも、見返りを求めない寄付とも違う。前稿で紹介したインドの「ナラヤナ・ヘルス病院グループ」のビジネスモデル(http://okinaka.jasipa.jp/archives/4478)も「インパクト投資」になるのだろう。昨秋、英ロンドン市場に上場したザ・ジムグループ。英国内の低所得地域に約70のフィットネスジムを運営する。一般的なジムの4分の1と言う格安料金と、定休日なしの24時間営業という利便性で低所得者に健康維持の手段を提供している。会員数37万人超、時価総額約410億円の企業に育った。インドで、農業や教育など貧困層向けビジネスに投資するアビシュカール(ムンバイ)も躍進している。CEOビニート・トライ氏が100ドルで始めた会社が今ではシスコシステムズなど役50社から200億円強を調達する企業となった。世界でのインパクト投資の規模は約7兆円弱、平均収益率は年6.9%、2019年には57兆円の規模に拡大するとの予測もあると言う。

このようなインパクト投資が広がる背景は、前稿ハーバードの事例研究テーマでも述べたが、リーマンショック後の投資家の意識変化で、「20~30代の投資家は資金の使い道に社会的意義を求めるようになった」とJPモルガンでインパクト投資を率いるトミー・ぺル氏は言う。さらに英有力投資家は「世界ではこれまでになく貧富の格差が広がっている。だが政府にはこの問題を解決するリソースがない」と。英国では、逼迫する財政のもとで、貧困層支援などの社会福祉事業をいかに効率的かつ効果的に実施するか、という問いへの答えとして政府が積極的にインパクト投資を推進しているそうだ。

インターネットで調べると、日本においても「G8インパクト投資タスクフォース日本国内諮問委員会」が2014年に設立されている。複雑化する社会課題への対応や財政改革は喫緊の課題であり、インパクト投資の手法を活用した、より効果が高く効率の良い公共サービスを推進するための活動を目論んでいる。

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