福岡市“禁酒令”は妥当か?


5月21日福岡市長が市職員に対し、1か月間の外での飲酒禁止令を発令した。市職員による飲酒関連の事件多発に伴う処置だ。この処置に対して、いろんな意見が出ている。昨日の朝日新聞15面「オピニオン耕論」で、当の福岡市高島市長と弁護士平田氏、漫画「島耕作」で有名な弘兼氏の3人が「禁酒令は妥当か」のテーマに対して意見を述べている。平田氏は「自由を縛るのは人権侵害」、弘兼氏は「一律に職員を叱るのは疑問」とある。

私が入社後配属されたのが地方の製鉄所。どこの製鉄所も同じだったと思うが、「社員の交通三悪は厳罰、交通違反も処罰」と厳しく、飲酒運転、速度超過、無免許運転の三悪は、部単位の共同責任として、部長以下管理職が共同責任を負い通勤時門立ち(たしか1週間ほど)を強制させられた。この趣旨は、「製鉄所は地域との共生を謳い、地域に迷惑を与える行為を厳に慎む」とするものであった。「交通違反も、重大事故の芽」と、近隣の警察署に定期的にヒアリングし、社員の交通違反に目を光らせていた。交通違反を起こせば、構内への車乗り入れ禁止となる(何キロにもなる構内の移動に車が使えないのは仕事の効率にも大きな影響あり)。

構内で、自部門以外でも死亡災害が発生すると、製鉄所全体が喪に服し、1カ月外部での飲酒は禁止となる。

大きな組織で、絶対起こしてはいけない事故に対して、何らかの牽制を働かせるのは当たり前と思う。事実、上記のような対策を講じても、交通違反はなくならないが、明らかに減ることは確かである。死亡災害も、発生時徹底的に原因分析を行い、その結果を多くの前で発表することにより、絶対起こさない決意を行う。これも昔に比べると格段に減っている。私も実は、新人時代に3悪ではないがスピード違反を起こした。その時、部長はじめ周囲の人に多大な迷惑をかけ(「新人のくせに何だ。やめさせろ!」との声も聞こえた)、今後は絶対違反をしないと決意し、実際その後交通違反はしていない。

福岡市の場合、2006年に職員の飲酒事故で3児が死亡すると言う悲惨な事故の記憶が真新しい中で、連続して発生した飲酒に伴う傷害事件などが発生し、今回の禁酒令に至ったと思う。平田氏は勤務時間外も縛るのは人権侵害と言うが、時間内は「市民に対して思いやりの心で接し」、時間外は「何をやっても自由」ということは現実的ではないと思う。人間、そんなに器用ではないし、交通違反でも、「自分はつかまらないから速度を少々出してもいいのだ」と自分のリスクに対して希望的観測で動くのが常である。組織が規律を守ることに緩んでいる場合、多少勤務時間外においても規制をかけるのは仕方がないことと思う。高島市長の今回の禁酒令を平田氏は「人気取り」と言うが、一般企業でこのような事故が立て続けに起こった場合、地域住民に対する申し訳なさでもっと厳しい措置をとるのが一般的と思う。トップが「なぜこんな対策を打たねばならないか」メッセージを丁寧に発信しながら、1カ月を職員みんなが共同責任と考え、みんなで反省をする期間とすることは、市民サービスを仕事とする市職員にとって大いに意義あるものと考える。

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