「小さな会社だからこそ、お客さまや社員を幸せに出来る」。1月29日開催の第49回JASIPA定期交流会で講演していただいた倉貫義人さま(ソニックガーデン代表取締役)の言葉だ。講演の内容はJASIPA交流委員長の玉村元氏(チャーリーソフト)のブログ(http://tamamura.jasipa.jp/)を参考にしてほしい。「“納品”をなくせばうまくいく ソフトウェア業界の“常識”を変えるビジネスモデル」(日本実業出版社、2014.6)の本も出版されているが、これからも「ノルマをなくせばうまくいく」、「管理をなくせばうまくいく」と”なくす“シリーズを出版したいとも言われているが、常識にとらわれない発想と、それを実行に移す勇気(志)と行動力には驚かされ、また感心させられた。
倉貫氏は、TISで2009年に自らの提案で社内ベンチャーを起こし、2011年に社長を説得してMBOで独立し、ソニックガーデンを創業した。現在社員数は11人だが、全員がコンサルティング・プログラマー。納品があるから、納期に追われこき使われ、見積もりを行うから要件定義に振り回され、お客様の価値よりも見積もり内に押し込めることに徹し、あげくのはてはお客さんからの信頼を得られないという、SI’erの実のない過酷な仕事に疑問を持ち、起業。下請けも、人月見積もりも、派遣もせず、月額固定でお客様の顧問としてすべての工程を担当し、仕事はいつでも、どこでも成果を提供すれば良しとする、プログラム大好き人間の集団だ。まさにお客様の真のパートナーとして価値を提供し続ける集団でもあり、お客様の信頼は抜群だ。こんなプロフェッショナルな集団で有る故に、規模を大きくすることは考えていないと言う。しかも弟子→一人前→師匠のキャリアパスを経て、同じような小さなプロフェッショナル企業を増やすために「のれん分け」をしていくつもりだそうだ。
倉貫氏は言う。
「大企業では、こんな会社は作れない。」
たしかに、お客様の問題解決をするコンサルティング・プログラマー、そして納品もなく、ノルマもなく、管理もなく、いつでも、どこでも働いて良い、義務と責任はお客さまに与える価値という働き方(年俸制)を徹底するには、会社の理念を文化・風土に昇華し、自立できる集団でなければならない。そのような集団は階層社会を形成して管理しなければ成り立たない大企業では作れないのは事実だろう。逆に中小企業は、採用にも、育成にも全てに目が届くことから、自立人材の集団にし易いメリットはあると思える。JASIPA会員企業には大いなるヒントとなることを期待したい。
1月31日の朝日新聞15面オピニオンに群馬県の「中里スプリング製作所社長中里良一氏」が「卑屈にならない覚悟を決めた」とのタイトルでどん底から立ち上がった経緯を述べている(航空機、船、医療などのバネ製造会社、)従業員21人)。以前、当ブログで「「日本一楽しい会社」を目指す群馬県の会社(http://okinaka.jasipa.jp/archives/405)」として紹介した。群馬県内だけだった取引先を全国47都道府県に拡大された。その中里氏が言う。
取引先は増えましたが、会社の規模は大きくしません。小さいからこそ自由に動き回って、特徴のある経営が出来るのです。図体が大きく成り過ぎると、経営者は社員の能力や資質の違いを正確に把握できなくなる。会社の危機に対し、社員の当事者意識が弱くなるという欠点もあります。小さくても、気心の知れた社員と楽しく仕事をして、プライドと幸せをつかみ取る道がある。
以前浜松市の都田建設を紹介したことがある(http://okinaka.jasipa.jp/archives/135)。50人程度の会社だが、蓬台浩明社長の経営スタイルが面白い。その蓬台社長が嬉しい事としてあげるのは
- 経営者としての自分が描くビジョンに共感してくれる仲間がいて一緒に行動してくれること。
- お客さまに感動して頂けたという報告をしている時の社員の幸せな表情を見ること。
- 会社が有言実行し、その成功を分かち合える事。
小さい会社だからこそ出来ること、それが差別化とも言える。モチベーション高く、お客さまと共に幸せに働く社員。こんな小さな会社が増えている。